レアル・マドリード王者の品格8 現在、レアル・マドリードはドルトムントのノルウェー代表FWアーリング・ハーランドの獲…
レアル・マドリード王者の品格8
現在、レアル・マドリードはドルトムントのノルウェー代表FWアーリング・ハーランドの獲得に向け、本腰を入れている。昨年の夏もリストには名前があったが、その時は6000万ユーロ(約72億円)でセルビア代表ルカ・ヨビッチを獲得したことで、見送っていた。その後もハーランドはザルツブルク、ドルトムントで得点を量産し続け、獲得にゴーサインが出た。2021年1月以降、ハーランドの移籍違約金は7500万ユーロ(約90億円)に下がる契約になっており、そこがXデーになりそうだ。規定の変更で、チャンピオンズリーグ(CL)も、同シーズンに別の2チームでプレーすることが可能になっている。
レアル・マドリードは、「Pegada」を求め続ける。「Pegada」とは、スペイン語で「打撃」を意味する。相手をKOできる力だろう。端的には「敵を血祭りにあげるストライカー」とも言い換えられる。

2009年、マンチェスター・ユナイテッドからレアル・マドリードに移籍したクリスティアーノ・ロナウド
過去、レアル・マドリードでリーガ・エスパニョーラ得点王になったのは、アルフレッド・ディ・ステファノが最多の5回。以下、ウーゴ・サンチェス、フェレンツ・プスカシュが4回、クリスティアーノ・ロナウドが3回、アマンシオ・アマーロ、ラウル・ゴンサレスが2回、フアニート、エミリオ・ブトラゲーニョ、イバン・サモラーノ、ロナウドが各1回。それらの年はチームが覇者だった時代と、ほぼ符合している。
「Pegada」は、レアル・マドリードの浮沈を左右するのだ。
2010-11シーズン、ジョゼ・モウリーニョが新監督に就任した。
当時、レアル・マドリードは不振に喘いでいた。CLは6シーズン連続でベスト16止まり。リーガでも、ジョゼップ・グアルディオラ監督のもと最強時代を謳歌するバルセロナの前にひれ伏していた。
「マドリードはずっとCLで勝ち上がっていなかった。驚いたのは、CLラウンド16でリヨンと対戦する前だ。選手たちが明らかに緊張していた。負け続け、重圧を感じていたのだ」
モウリーニョはそう振り返っている。
レアル・マドリードは、勝利の気概を取り戻す必要があった。クラブのエンブレムだったラウルを放出し、クリスティアーノ・ロナウドに背番号7を与えた。それは再建の道標となった。
モウリーニョは、チーム全体も刷新した。ポルトで欧州王者になった時の守りの要、ポルトガル代表リカルド・カルバーリョが守備を統率。パートナーには同じくポルトガル代表のペペを起用した。右にスペイン代表セルヒオ・ラモス、左にブラジル代表マルセロ、さらに守備の切り札にスペイン代表アルバロ・アルベロア、ラウル・アルビオルを揃えた。そして最後尾にイケル・カシージャスと磐石の備えにしたのだ。
中盤の軸には”将軍”シャビ・アロンソを配置。クロード・マケレレを失って以来、久しぶりに攻守の均衡を取れるようになった。また、シャビ・アロンソはロングパスを武器とし、カウンター戦術の起点となることができた。
「モウリーニョは世間でいろいろ言われるが、選手の気持ちとシンクロする能力には驚かされた。彼が伝える言葉を、選手は信頼することができて、それはすばらしいことだった」
シャビ・アロンソはそう言って、モウリーニョ時代の戦いを論理的に説明している。
「自分はセンターハーフとして、攻守どちらにも関与する役目が与えられていた。チームとして機能しているか、自分はそれに逐次、気を配る必要があった。我々マドリードのサッカーは、ティキタカ(ボールがつながる擬音から来たパスサッカーのスタイル)ではない。相手のペナルティエリアへ、一直線に急襲するスタイルだ。そのために、マドリードは優れたストライカーを必要とした。自分は、彼らを生かす長いボールを送った」
モウリーニョはチームを整備し、ロナウドにゴールを託した。
新たな背番号7は、「Pegada」の化身のようだった。2010-11シーズンは、40ゴールで得点王に。彼が攻撃を引っ張ることで得点力は高まり、シーズン最多の102得点を記録した。リーガ、CL(準決勝)はグアルディオラ・バルサの後塵を拝したものの、スペイン国王杯決勝はロナウドのゴールでタイトルを勝ち取った。
2011-12シーズンは、モウリーニョ体制の集大成と言える。リーガでは史上最多の100勝ち点、121得点。グアルディオラ・バルサに土をつけ、破格の強さで優勝した。「Pegada」が炸裂したのだ。
モウリーニョは、守備戦術のイメージが強く残る。会見では横柄、狷介(けんかい)な受け答えをして不評を買ったし、たびたびトラブルも起こした(2011年スペインスーパーカップでは、バルサのコーチの目に指を入れて攻撃した)。しかし、「Pegada」を発動させる手際は見事だった。3年目は3大タイトルすべてを逃し、チームを去ることになったが、レアル・マドリードは勝利の精神を取り戻した。
「Pegada」を象徴するロナウドは、CLでは歴代最多となる7回の得点王(1回はマンチェスター・ユナイテッド時代)に輝いている。同大会の歴代得点数も1位。そしてレアル・マドリードに4度のCL戴冠をもたらすことになる。
(つづく)