2019年ラグビーワールドカップで初のベスト8に進出し、日本列島を盛り上げてくれた「ブレイブ・ブロッサムズ(勇敢な桜の戦士たち)」。その4年前、2015年大会で南アフリカ代表を破る「ブライトンの奇跡」など予選プール3勝を挙げたことが、2019年大会の飛躍につながったことは明白である。



独特なルーティーンで一世を風靡した五郎丸歩のプレースキック

 世紀の大金星を挙げた「エディー・ジャパン」。2015年ラグビーW杯の日本代表メンバー31名は、現在どうしているのだろうか。

 まず、2015年大会に続いて2019年大会のメンバーにも選ばれたのは、下記の10人。

 FL(フランカー)リーチ マイケル(東芝)、HO(フッカー)堀江翔太(パナソニック)、PR(プロップ)稲垣啓太(パナソニック)、LO(ロック)トンプソン ルーク(元近鉄)、FLツイ ヘンドリック(サントリー)、No.8(ナンバーエイト)アマナキ・レレィ・マフィ(NTTコミュニケーションズ)、SH(スクラムハーフ)田中史朗(キヤノン)、SO(スタンドオフ)田村優(キヤノン)、WTB(ウィング)/FB(フルバック)松島幸太朗(サントリー)、WTB福岡堅樹(パナソニック)。

 そのうち、トンプソンは昨シーズン限りで現役を引退し、今はニュージーランドに帰国して農業に専念している。また、15人制日本代表からの引退を表明した福岡は7人制ラグビーで東京五輪への出場を目指し、松島は今夏からフランスの名門クレルモンに移籍することが決まっている。

 31歳のリーチや34歳の堀江も、やる気はまだまだ十分だ。堀江は「(W杯前の最後の1年間で活躍して2019年大会に選ばれた)トンプソン方式がいいかな」と、日本代表活動と少し距離を取りながらも、2023年大会への意欲を見せている。

 2015年大会で真っ先に思い出すのは、やはり、プレースキック前の独特なルーティーンで一世を風靡したFB五郎丸歩(ヤマハ発動機)だろう。2016年からオーストラリアのレッズ、フランスの強豪トゥーロンを経て、2017年から再びヤマハ発動機に戻ってトップリーグでプレーしている。

 海外では思うような結果を残せず、同時に日本代表指揮官の目指すラグビーが変わったこともあり、五郎丸は2015年以降、桜のジャージーから遠ざかった。そして今年3月、34歳となった。

 ヤマハ発動機に戻ってきた時、五郎丸は「(清宮克幸監督に)恩を返したい」と話していた。だが、その清宮監督もチームを去った(2019年6月に日本ラグビー協会の副会長に就任)。

 新型コロナウイルスの影響で、今シーズンのトップリーグは全日程を消化できずに終了。初優勝を目指していたヤマハ発動機は5勝1敗で3位につけていただけに、五郎丸としても悔しいシーズンとなった。いずれにせよ、五郎丸の現役姿が見られるのは、多くてもあと数シーズンとなろう。

 プロ選手として活動する五郎丸は、フランスから日本に戻ってきたあと、ラグビースクールの講師として積極的にラグビーの普及活動を行なっている。2019年のW杯では中継先のNHKのナビゲーターも買って出た。引退後もラグビーの楽しさ、魅力を広める活動を続けていくだろう。

 五郎丸のほか、今シーズンも現役選手としてトップリーグでプレーしていたのは、下記の11人。

 HO木津武士(日野)、PR山下裕史(神戸製鋼)、PR三上正貴(東芝)、LO大野均(東芝)、FLブロードハースト マイケル(リコー)、SH日和佐篤(神戸製鋼)、SO小野晃征(サントリー)、CTBマレ・サウ(トヨタ自動車)、CTB立川理道(クボタ)、WTB山田章仁(NTTコミュニケーションズ)、WTBカーン・ヘスケス(宗像サニックス)。

 現在26歳のWTB/FB藤田慶和(パナソニック)は2019年大会こそ選ばれなかったが、昨年から7人制ラグビー日本代表の中軸として存在感を示し、福岡とともに東京五輪を目指している。PR畠山健介は2019年にサントリーを退団し、今シーズンはアメリカ・メジャーリーグラグビーのニューイングランド・フリージャックスでプレーした。

 そして残りの選手は、すでに現役を引退している。LO/FLアイブス ジャスティン(元クボタ)はニュージーランド、CTBクレイグ・ウィング(元神戸製鋼)はオーストラリアと、それぞれ母国に帰った。

 引退後にコーチとして、新たなキャリアを歩み始めた選手もいる。

 HO湯原祐希(元東芝)とNo.8ホラニ龍コリニアシ(元パナソニック)は引退後もチームに残り、現在はFWコーチを務めている。LO伊藤鐘史(元神戸製鋼)は母校の京都産業大でFWコーチを務めたあと、大西健監督の勇退にともない、今年から監督に就任。将来の日本代表を育ててくれるだろう。

 また、独自のセカンドキャリアをスタートしている元代表選手もいる。

 サラリーマン選手として知られていたLO真壁伸弥は昨年に引退。現在はラグビーの普及だけでなく、サントリーの営業マンとしてウイスキーのセミナー講師「ウイスキーレクチャラー」を取得し、ウイスキーの伝道師として日本全国を駆け回っている。現役時代の120kgより、さらに大きくなっているようだ。

 そしてもうひとりが、2015年大会で「陰のキャプテン」としてチームを支えたSO/WTB廣瀬俊朗(元東芝)だ。昨夏に放送されたTBS系列のドラマ『ノーサイド・ゲーム』でアストロズ不動のエース・浜畑譲を演じた人物、といったほうがわかる方も多いかもしれない。

 北野高校→慶應義塾大学理工学部出身という文武両道の廣瀬は、2016年に現役を引退。その後は東芝でコーチを務めつつ、ビジネス・ブレークスルー大学大学院でMBAを取得した。

 東芝を退社したのち、2019年W杯の前から「スクラム・ユニゾン」というユニットを組む。そこでの活動は、出場国や地域のナショナルアンセム(国歌)を歌ったり、試合を解説したりと、多忙を極めていた。今後はラグビーの普及活動だけでなく、実業家としてもどんな活動をしていくのか楽しみだ。

 そして最後は、指揮官だったエディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)。

 外国人指導者として初めてラグビーの母国イングランド代表のHCとなり、2019年大会では惜しくも決勝で南アフリカ代表に敗れた。しかしその後、イングランド協会と契約を延長し、2023年大会までイングランド代表を指揮することになった。次のW杯では日本代表と対戦することがあるかもしれない。

 2023年W杯が開催されるころ、エディー・ジャパンの31名はどんな道を歩んでいるだろうか。