新型コロナウイルスの感染拡大防止のためプロ野球の開幕が延期になっただけでなく、アマチュア球界もセンバツ甲子園の開催中止…
新型コロナウイルスの感染拡大防止のためプロ野球の開幕が延期になっただけでなく、アマチュア球界もセンバツ甲子園の開催中止をはじめ、コロナが大きな影響をもたらしている。
例年ならば、この時期からが熱を帯びていく本番なのだが、観戦ができずにもどかしい思いをしている野球ファンも多いことだろう。また選手にとっても野球が当たり前にできることにありがたみを感じているに違いない。
社会人野球JFE東日本のスラッガーであり今秋のドラフト候補でもある今川優馬もそのひとりだ。

力強いバッティングが持ち味のJFE東日本の今川優馬
事情は違うが、東海大北海道キャンパス4年の春にチームの不祥事により、出場を決めていた全日本大学野球選手権の辞退を余儀なくされた経験を持つ。
「頭が真っ白になりました。とくに4年生は進路が決まっていない選手も多く、人生をかけていた。それだけにすごく悲しかったです」
まだ進路が決まっていない4年生にとって、大学選手権は就職活動と言うべき舞台である。なにより、仲間たちと日本一への挑戦すら奪われてしまった。
それだけに今回のセンバツ中止については「当事者は辛いと思います。一生に一度の大きなイベントですから……」と選手・関係者を慮(おもんぱか)る。
一方で「ここで腐るか腐らないかがターニングポイント。やるべきことをいかにやれるかだとも思います」とも話し、それは選手・関係者らに贈るエールでもあり自身を鼓舞する言葉でもあるように聞こえた。
3月の社会人球界は、年内最初の大きな大会であるJABAスポニチ大会は中止となったものの、ほとんどのチームが活動をできていた。そして、センバツや一部大学の対外試合の自粛の影響もあり、NPB球団のスカウトも多くオープン戦に視察へ訪れ、アピールには持ってこいの環境となった。
ドラフト指名漏れを経て迎えた社会人1年目の昨年は、都市対抗2次予選で打率.429を残し強豪並ぶ南関東予選で第1代表獲得に貢献した。
さらに、都市対抗本戦では「自由に打っていいよ」と今川のスタイルに最大限の理解を示す落合成紀監督のもとで「攻撃的2番打者」を務めて、21打数8安打。準決勝の東芝戦では宮川哲(西武ドラフト1位)から逆方向ライトへ本塁打を放つなど大活躍を遂げてチームの初優勝に貢献し、新人賞にあたる若獅子賞を獲得した。
大卒2年目となる今年からドラフト指名の対象選手ともなるため、より強い決意でシーズンに臨んでいる。
そして「現状維持は退化」と言い切り、都市対抗での活躍に驕(おご)ることは一切ない。都市対抗では一度バットのグリップを真下に落とし、それを戻してから振り出す動作をして活躍していたが、約3カ月後の日本選手権では「よりシンプルに振り出す」というイメージでそれをやめた。
だがそれが「無駄を減らそうとしすぎて出力が減ってしまった。無駄と思っていたものは無駄ではなかった」と感じ修正。「もっと率を残せるように、シンプルに振り出す」というテーマは変えずに試行錯誤を繰り返している。
また動画でも憧れとするミゲル・カブレラ(デトロイト・タイガース)らを参考にするなど研究を怠ることはない。
外野守備もプロで名手として鳴らした山森雅文コーチ(元オリックス)のもとで成長を遂げている。同コーチは取材時のオープン戦で思うように快音が響かなかった打撃についても「今川は自分で自分のことを調整できるので心配していません」と、取り組む姿勢や工夫において厚い信頼を置いているようだった。
中学時代は無名で、東海大四高(北海道)には一般入試で進学。高校ではレギュラーを掴みかけた時期にケガをして甲子園は代打での出場のみ。大学でも3年春の全日本大学野球選手権で本塁打を放つも、野球人生を賭けていた4年は出場辞退。
挫けてしまってもおかしくない経験は山ほどしてきたが、いつもその不屈の精神と明るい笑顔、そしてその力強いスイングで不安や迷いを振り払ってきた。
日本の野球界が再び活気を取り戻した時、今川のひと振りがスタジアムに大きな歓声を呼び起こすことを心待ちにしている。