新型コロナウイルスの感染拡大により、メジャーリーグは3月26日(日本時間3月27日)の開幕予定を最短2週間ほど延期した…
新型コロナウイルスの感染拡大により、メジャーリーグは3月26日(日本時間3月27日)の開幕予定を最短2週間ほど延期したあと、米疾病対策センター(CDC)の自粛要請により開幕をさらに伸ばすと発表しました。これにより、今季のメジャー開幕は早くとも5月中旬以降と予想されています。

二刀流復活に向けてトレーニングに励む大谷翔平
それは、日本人選手にどのような影響を及ぼすのでしょうか? まず、開幕延期によって一番気になるのは、先発投手陣のコンディション調整です。
メジャーの監督やコーチの話によると、休ませたリリーフ投手の球速を上げるためにピーキングを再調整するのは、さほど時間がかからないと語っています。また、試合から離れていたバッターも少しの調整期間があれば、すぐにバッティング感覚を取り戻せると言います。
ただ、それに比べて先発投手は、肩を作り直すのに数週間かかります。オープン戦で何試合か登板し、徐々に球数を増やして60球ほど投げ込んだあと、ようやく本来のピッチングができるようになるのです。
ニューヨーク・ヤンキースの田中将大投手は「今ある状況のなかで、しっかりと準備していくことが大事」とベテランらしい対応を見せていますが、ミネソタ・ツインズの前田健太投手は「もう1回、キャンプ前みたいな感じ」と語り、再び仕上げるための調整の難しさを言い表しています。
メジャーの開幕時期はコロナ次第なので、ピッチャーの調整期間も自ずと短くなりそうです。よって開幕当初は、先発投手の球数はかなり制限されるのではないでしょうか。
1994年からの長期ストライキで1995年シーズンの開幕が1カ月近く遅れた時、当時ボルチモア・オリオールズで開幕投手を務めたマイク・ムシーナは5回3安打無失点と好投しながら、わずか49球で降板しています。その後、ムシーナは登板間隔を空けながら、徐々に球数を増やしていきました。
先発を任される日本人投手たちも、今年のシーズン初めは球数が抑えられて、5回未満で降板することもあり得るでしょう。そうなると、なかなか勝ち星に恵まれないかも知れません。
また、労使協定で定められている最大20連戦という規定も、今年は特例としてそれ以上の日程が認められるのではないでしょうか。そうなると、中4日での先発登板も多くなると思われます。
かつてメジャーに行った日本人投手は、中4日の登板に苦しんだ時代がありました。日本では中5日での登板がスタンダードだったからです。
しかし、今では状況が変わりつつあります。シカゴ・カブスのダルビッシュ有投手は中5日の通算防御率4.01に対し、中4日だと3.37。田中投手は中5日でも中4日でも、通算防御率は同じ3.78です。
また昨年、前田投手はロサンゼルス・ドジャースで中5日の防御率4.19に対し、中4日では2.32。シアトル・マリナーズの菊池雄星投手も、中5日より中4日のほうが好成績でした。
それら投手のなかでも開幕延期で最も恩恵を受けそうなのは、ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手ではないでしょうか。
当初は3月26日の開幕を指名打者として迎え、5月中旬に投手復帰が見込まれていました。それが5月中旬以降に開幕がずれ込むことにより、シーズンの最初から二刀流が可能となるからです。
キャンプ時から、大谷選手は投手陣のなかでも調子がいいと聞いています。今回の延期によって「開幕投手に浮上?」と言う声も聞こえるくらいで、ジョー・マドン監督は「投手としての登板試合が多くなると思う」と期待を寄せています。
もちろん、右ひじの手術明けだけに、ほかの投手以上に投球回数や球数は制限されるでしょう。それでも、シーズンを通して二刀流で活躍する姿が見られるのはうれしいです。
そして、今年トロント・ブルージェイズに入団した山口俊投手にとっても、開幕延期は追い風となるのではないでしょうか。過密日程で連戦やダブルヘッダーが増えれば、ローテーションを5人でなく6人で回すチームも多くなるからです。そうなれば、先発5番手を争う山口投手のチャンスも広がります。
ただし現在、カナダは自国民や永住者以外の入国を原則禁止という処置を採っています。本人も「トロントにはいつ行けるんでしょうか」と不安を漏らしているのが気がかりです。
また、リリーフ投手も開幕延期によるメリットはあると思います。先発投手の早めの交代が予想されるので、アリゾナ・ダイヤモンドバックスからマリナーズに移籍した平野佳寿投手のようなリリーフ投手の出番は増えるのではないでしょうか。
一方、野手陣はどうでしょうか。今年からメジャーに挑戦するシンシナティ・レッズの秋山翔吾選手と、タンパベイ・レイズの筒香嘉智選手は、少し大変なシーズンになるかもしれません。
今年はいつもよりも短い期間で可能なかぎり多くの試合を行なうため、過去に例を見ないような過密日程となることが予想されます。そうなると、ふたりの体力がシーズン最後まで持つのかどうか、まだ環境に慣れていないメジャー1年目なだけに心配です。
また、今季から適用される新しいルールも、彼らに影響を及ぼす可能性があります。それは、各チーム25人から26人となる「ロースターの拡大」です。さらに、開幕当初はキャンプ期間短縮による選手の調整不足を補うため、特例としてさらなるロースター拡大(29人か30人)も噂されています。
開幕が1カ月ほど遅れた1995年は、ロースターが25人から28人に拡大されました。その結果、各チームは代打の切り札や代走、守備のスペシャリストを重要視するようになったのです。今回も同じような流れになると、秋山選手や筒香選手のライバルが増えることになるでしょう。
また、ベンチ内に野手が多くなるので、勝ちゲームでの守備固めやツープラトンシステムを多用するチームも増えます。これも、状況によっては出場機会が奪われることにつながります。
秋山選手は1番センターとして期待されていますが、試合に勝っていれば終盤でレフトに回されるか、ベンチに下げられる可能性も出てくるでしょう。なぜならば、レッズにはトラビス・ジャンコウスキーという守備の名手がベンチにいるからです。秋山選手も西武ライオンズ時代にゴールデングラブ賞を6度も受賞していますが、それよりも高い守備力を持つ選手だけに油断はできません。
一方、左打ちの筒香選手もツープラトンで起用される可能性があります。レイズのケビン・キャッシュ監督は昨年162試合のうち、実に149通りのラインアップを組み、57人もの選手を起用しました。ベンチ入りの選手全員で戦うことを好むタイプです。
なかでも、筒香選手が守るサードやレフトは打力重視のポジションであるため、左投手に対して結果を残さないと、右打ちの選手と併用されかねません。それゆえ、オープン戦12試合で打率.179、とくに左投手に対して11打数1安打という成績は少々気がかりです。
逆に、ロースター拡大でチャンスが広がるかもしれないのは、マイアミ・マーリンズの加藤豪将選手です。
2013年のドラフト2巡目指名でヤンキース入り後はずっとマイナー暮らしでしたが、昨年12月にマーリンズとマイナー契約して今春キャンプに招待選手として参加しました。オープン戦は14試合すべて途中出場でしたが、一塁、二塁、三塁を守り、打率.250ながら高い出塁率.438をマーク。プロ入り8年目で、ようやくメジャー初昇格のチャンスが巡ってきています。
そして最後に余談ですが、ロースター拡大が昨年だったなら、イチロー氏の現役生活がもう少し続いたような気もします。なぜならば、2017年にはメジャー記録の109打席もピンチヒッターで登場するなど、イチロー氏は代打の切り札として実績を残したからです。
今季の初めに特例としてロースターが29人か30人になっていたら、キャンプで現役時代と変わらぬ姿を見せたイチロー氏は密かに復帰を目指したのでは……。そんな夢まで思い浮かべました。