世界中で流行している新型コロナウイルス。すでに日本国内でもさまざまなスポーツイベントが開催中止や延期となっている。 もちろん、国内モータースポーツも例外ではない。3月以降のイベント関係は中止・延期の対応が取られ、全日本スーパーフォーミ…

 世界中で流行している新型コロナウイルス。すでに日本国内でもさまざまなスポーツイベントが開催中止や延期となっている。

 もちろん、国内モータースポーツも例外ではない。3月以降のイベント関係は中止・延期の対応が取られ、全日本スーパーフォーミュラ選手権は鈴鹿サーキットでの公式テスト(3月9日、10日)と、同地で予定されていた開幕戦(4月4日、5日)の延期が決定した。



誰もいないスタンドの前を淡々と走るスーパーGTマシン

 同じく、日本で一番の人気を誇るモータースポーツ「スーパーGT」も打撃を受けている。

 3月14日、15日に全チームが岡山国際サーキットに集まって行なわれた公式テストは、新型コロナウイルス対策により無観客での実施となった。

 例年なら熱気あふれるサーキット内で、今シーズンの行方を占うテストが開催されてきた。だが今回は、静まり返ったサーキットで45台の車両が淡々とテストメニューをこなしていく、という寂しい光景が見られた。

 スーパーGTの公式テストが無観客で実施されるのは、もちろん前代未聞のこと。参加したドライバーたちも口を揃えて「ものすごく違和感があった」「いつも応援してくれるファンのみんなの前で走れないことがとても残念だ」と語っていた。

 無観客でのテストとはいえ、会場には45チーム(台)のドライバー・スタッフに加えて、取材に来たメディア関係者、そして岡山国際サーキットやGTアソシエイションの関係者も含めると、500人以上がサーキットに集結した。そのため、サーキットに入場する関係者全員に問診票の事前提出を義務づけたほか、毎朝の検温を含めた健康チェックも行なわれた。

 さらに、取材するメディア関係者には全員、マスクの着用を義務づけ、サーキット内には各所でアルコール消毒液を設置。徹底したコロナ対策が施された。

 このように厳戒態勢のなかでの実施となったが、今回のテストでは今シーズンの見どころがいくつか垣間見えた。

 トヨタ、日産、ホンダが参戦するGT500クラスは、2020年からドイツツーリングカー選手権(DTM)との共通技術規則「クラス1」に基づいたマシンを導入。3メーカーが新型マシンを製作し、今季参戦する15台が初めて揃った。

 2日間のテストはあいにく雨まじりの天候となり、各車とも思うようにテストメニューをこなせない姿が見られた。さらに、新型コロナウイルス関連で3月上旬に予定していたメーカーのプライベートテストが一部中止を余儀なくされたことも影響し、新車を熟成させるためには「まだまだ時間がほしい」と本音を漏らすチームも少なくなかった。

 そのなかで、初日はホンダNSX-GT勢が上位を独占する速さを見せた。

 クラス1規定では、エンジン搭載位置はコックピット(運転席)の前でなければいけない。つまり、本田はNSXの代名詞でもあったミッドシップ(コックピットの後部にエンジンを配置する)レイアウトを採用せず、規定に準拠したマシンを用意した。

 ただ、タイムでは速さを見せていたが、改善したい点もたくさんある模様だ。

「トップタイムを出せたのはうれしいことだけど、満足はしていない。もっと改善したいポイントはたくさんある。他メーカーとのテストメニューも違うだろうから、僕たちが優位なポジションにいるかどうかは判断できない」

 KEIHIN NSX-GT(ナンバー17)のベルトラン・バケットは初日にトップタイムを記録しても、他陣営を警戒していた。

 これに対して2日目に速さを見せたのが、今季GR スープラをベースにしたGT500車両を開発したトヨタ陣営だ。シーズンオフのテストでは「順調に周回を重ねている」という情報も聞こえていたが、2日目にはその本領が少し見える結果となった。

「(クルマの仕上がりは)順調ですね。セッティングもいろいろ試すことができています。今回はコンディションがあまりよくなかったので(決勝を想定した)ロングランをできていないのは心配ですが……。デビューウィンは狙いたいです」

 昨年のチャンピオンである大嶋和也(WAKO’S 4CR GR Supra/ナンバー14)は控えめに語りつつも、どこか自信が垣間見える表情をしていた。

 そして日産勢は、クラス1規定に合わせたGT-Rを用意。トラブル等もなく、2日間かけて精力的に周回を重ねていたのが印象的だった。

「昨年のGT-Rと比べると確実によくなったと思っているし、ライバルとの差も確実に縮まっていると思う。もっと改善しなければいけないところはあるけど、今のところは進化したGT-Rに乗れていることがハッピーだ。ただ、ライバルも手強いから、もっとがんばらないといけない」

 リアライズコーポレーションADVAN GT-R(ナンバー24)のヤン・マーデンボローは、気を引き締めてこう話した。

 3月18日、岡山国際サーキットとGTアソシエイションは新型コロナウイルスの感染拡大状況を鑑み、開幕戦・岡山(4月11日、12日)の開催延期を発表した。今後の状況次第では、第2戦・富士以降の開催にも何かしらの影響が出てくるかもしれないと噂されている。

 2020年のスーパーGTは例年になく見どころが多いだけに、一刻も早く今の状態が終息し、大勢のファンとともにシーズン開幕の時を迎えられることを、今は願うばかりだ。