3月16日、ドイツ・ブンデスリーガ1部と2部の各クラブ代表者と、リーグ運営を担当するDFL(ドイツサッカーリーグ機構)…

 3月16日、ドイツ・ブンデスリーガ1部と2部の各クラブ代表者と、リーグ運営を担当するDFL(ドイツサッカーリーグ機構)の代表者たちが会議を開いた。話し合いの内容は、ドイツ国内の各メディアがリアルタイムで報じたが、結果、ブンデスリーガ1部、2部の中断は続き、再開は、早くとも4月3日以降となった。



無観客試合となった、ブンデスリーガのボルシアMG対ケルン

 同時に、DFLの代表を務めるクリスティアン・ザイフェルトは「無観客試合でリーグを続行できなければ、(現在の規模の)ブンデスリーガのプロクラブは18クラブも存在できないだろう」と説明。1部と2部を合わせて、1節ごとに約8000万ユーロ(約96億円)の収入が見込まれており、メディアではリーグが中止された場合には、約7億5000万ユーロ(約900億円)の損失を被ると予測されている。

 各クラブやリーグの社員のみならず、メディアや飲食サービスのスタッフなども含めれば、ブンデスリーガ全体に関わる雇用者数は、およそ5万6000人にも上る。これらの雇用を守るためにも、遅かれ早かれリーグを再開させる点で、各クラブの代表者たちも意見が一致している。ドイツ国内で最も経済的な基盤がしっかりしているバイエルンのヘルベルト・ハイナー会長ですら、「各クラブの存続がかかっている」と危機感を募らせる。

 主にテレビ放映権料、スポンサー料、そして入場料の3つから成り立つ収入のうち、テレビ放映権料とスポンサー料を最低限確保しなければならない。会議では、各ステークホルダーがこの認識で一致した。

 実際に感染者が最初に出たクラブは、2部のハノーファーだ。原口元気が所属し、昨季1部からの降格クラブだが現在下位に苦しむチームに、さらなる苦難が訪れた。3月11日に若手のティモ・ヒューバースが、新型コロナウイルスの検査で陽性反応が出たのだ。

 幸いにも、ヒューバースは軽い症状で済み、3月14日にはオンライン上でインタビューを受けている。自宅隔離中のヒューバースは、「調子はだいぶよくなった。今日も、少し風邪みたいな症状があるけれど、今までの人生で体験した風邪と違ったところはないよ」と自身の体調について説明。むしろ、家から一歩も出られないことによる退屈に苦しんでいると話す。

 さらに、検査結果でショックを受けた時のことも打ち明けた。

「最初は、本当に非現実的な感じがした。メディアを通じて、ウイルスについて聞いてはいたけれど、とても遠い世界のような感じがしていたし、ドイツに新型コロナウイルスが入ってきているような実感もなかったんだ。そうして、突然、自分が当事者になるなんてね」

 現在は、他人との身体的な接触も禁じられており、必要な日用品などの買い物は、知人やスタッフに頼んで、窓際に置いてもらう生活だという。また、ヒューバースの陽性反応を受けて、安全を期すためにチーム内で検査をしたところ、さらにDFのヤネス・ホルンとフィジオのひとりから陽性反応が出た。

 原口を含む、テストで陰性の結果が出たほかの選手たちも自宅隔離(待機)の対象となり、来週の木曜日まで外出が許されない。現在は、コーチングスタッフがつくったトレーニングメニューを自宅で行なう生活だ。運営面では、オフィスは通常営業を続けるという。

 大迫勇也が所属するブレーメンは、3月16日からトレーニングを再開。とはいえ、ピッチ上での全体トレーニングではなく、クラブの敷地内にあるトレーニングルームで個別の室内トレーニングを行なう。ケガ人が多いブレーメンは、この中断期間をうまく使って選手たちのコンディションを万全にすることを目指しているようだ。

 経営が苦しいブレーメンにとって、この中断は経済的に大きな打撃だ。メディアでは、ほかのいくつかのクラブと同様に、選手や社員の給与を払うために融資を受ける準備を進める必要があると報じられている。180人を超えるスタッフを抱えるブレーメンも、スタジアム見学やミュージアムを除いて、当面はリモートワークも活用しながら通常どおり運営している。

 長谷部誠と鎌田大地が所属するフランクフルトは、チーム全体練習は3月24日以降に予定している。それまでは、各選手がそれぞれ与えられた個人トレーニングが中心となる。フランクフルトのトレーニングルームは選手に開放されていて、予約をして使用できる。室内は、専門家の意見に合わせて消毒が行なわれ、機材間の距離なども確保されている。

 選手、コーチ陣はフランクフルトに残ることを義務付けられており、3月17日には全選手の乳酸値のテストを行なった。自炊ができない選手には、テイクアウトの食事が用意されている。チーム内には感染者がおらず、チームドクターも「規則を守れば、感染の可能性は少ない」と見ている。とはいえ、症状が出た場合に備えて、いつでも検査する準備はできている。

 宮市亮が所属のザンクトパウリは、3月17日から再始動する予定だった。だがハンブルク州が、前日にすべての運動施設を閉鎖し、使用不可にしてしまったため、予定を変更せざるを得なくなった。担当者は、「来週までの5日間、室内で個別トレーニングを行ない、その後の経過を見る予定だ」と言うが、クラブは州議会から特別許可が降りるのを待っている状況だ。クラブはすでに申請書を提出しているものの、答えは出ていない。

 遠藤航がプレーしているシュツットガルトは、現在は感染リスクが大きな国として国境が封鎖されているフランスやスイスまで、車でわずか2時間の距離にある。そのため、シュツットガルトも同様に、すべての運動施設が閉鎖されている。

 地元メディアによれば、シュツットガルト市は練習人数や練習時間、感染対策の内容など厳格な情報提示を求めており、これらの書類を揃えるのに時間がかかっている状態だ。市からの許可が降りない限り、選手たちは、自宅で個別トレーニングをしながら情報を待つ。

 このように地域や州によって対応も異なっており、各クラブも頭を痛めているところだ。

 懸念されていた欧州選手権の開催時期も、2021年の6月に延期が決定。国内リーグも7月まで引き伸ばせる算段がついた。一部には、UEFAが約3億ユーロ(約360億円)の補填を、欧州各国のサッカー連盟とクラブに要請したという報道もあったが、UEFAはこれを否定。

 この結果を受けて、DFLのザイフェルト代表は、「リーグを再開させるには、ほど遠い状況だ」と前置きしたうえで、「理論上では、新たに時間的な余裕ができた。不慣れな日程間隔で試合が組まれるかもしれないが」と、これから日程を詰めていく考えを示した。

 さらにザイフェルト代表は、「クラブのなかには、選手とクラブ間で減棒を話し合っているところもある。さらに、すでに実行に移したクラブもあることを理解している」と各クラブの現状を説明。経費のなかでも大きな割合を占める選手たちが歩み寄るのも、欠かせない要素となりそうだ。

 さらには、来季のブンデスリーガ1部と2部に参加できる、ライセンス交付の条件緩和を検討するなど、柔軟に対応する姿勢も示している。存続の危機を前に、ドイツサッカー界は生き残りを懸けた総力戦に挑む。