2020年シーズン開幕で見つけた今季要注目のJリーガー(7)江坂任(柏レイソル/MF) 思わず記者席で立ち上がってしまう…
2020年シーズン開幕で見つけた
今季要注目のJリーガー(7)
江坂任(柏レイソル/MF)
思わず記者席で立ち上がってしまうほど、鮮やかな先制ゴールだった。
13分、右サイドのオルンガからのグラウンダーパスをエリア手前で受け取ると、寄せてきたDFを巧みなステップで抜き去り、左足を一閃。対角線上に放たれた鋭い一撃は相手GKの指先をかすめ、瞬く間にネットへと吸い込まれた。

2018年から柏の背番号10を託された江坂任
2年ぶりにJ1の舞台に戻ってきた柏レイソルは、この一撃で勢いに乗ると、怒涛のゴールラッシュを展開。北海道コンサドーレ札幌相手に4ゴールを奪い、4−2とJ1復帰戦をド派手に飾っている。
「いい位置で受けられましたし、受けてからも落ちついてDFを見られたのがよかった」
江坂任は、自身の先制ゴールを冷静に振り返った。
この先制点だけではない。20分には絶妙なフィードを背後のスペースに落とし、オルンガのゴールをアシスト。さらに58分には、カウンターの流れからチームの3点目も奪っている。2得点1アシストと文句なしの活躍で、勝利の立役者となったのだ。
J1に復帰した柏において、最も注目を集めているのがオルンガだろう。
ケニア出身の長身ストライカーは、昨季のJ2でまさに規格外のパフォーマンスを披露。高さ、スピード、パワーといずれもケタ外れで、J2においては”反則級”の存在だった。シーズン通算27ゴールを奪い、1試合で8ゴールという漫画のような記録も残している。
この札幌戦でも、オルンガは圧巻のパフォーマンスを披露した。追いつかなそうなボールにも余裕をもってたどり着き、カウンターからふたつのゴールを決めている。ひとつひとつのプレーで観衆の度肝を抜き、完全にこの日の主役となっていた。
しかし、インパクトではオルンガに及ばないものの、気の利いたプレーで攻撃の流れを生み出していたのは、トップ下でプレーした背番号10だった。貢献度で上回った江坂こそが、この日のマン・オブ・ザ・マッチにふさわしい。
宇佐美貴史、柴崎岳らと同じ「プラチナ世代」と呼ばれる1992年生まれ。だが、そのキャリアを振り返れば、決してスポットライトを浴びてきたわけではない。
2015年に流通経済大からザスパクサツ群馬に加入した江坂は、その年、ルーキーながら13ゴールと活躍。翌年には大宮アルディージャへとステップアップを果たし、2シーズンにわたって主軸を務めた。柏に移籍したのは2018年のこと。背番号10を託され、攻撃の中心選手としてプレーしている。
これまでコンスタントに結果を残してきた一方で、大宮、柏では2年連続で降格の憂き目にあうなど、貢献度としては物足りなさが残った。それが江坂の評価を難しくしている要因かもしれない。
能力的には申し分ない。力強いドリブルでボールを運び、鋭いラストパスで決定機を生み出していく。シュートセンスも高く、身長175cmながらヘディングの強さも備える。そのオールラウンドな攻撃能力は、リーグでも屈指だろう。
札幌戦で目を引いたのは、ボールを引き出す能力だ。相手を背負った状態でも当たり負けせず、しっかりとボールをキープし、次の展開へとつなげていく。あるいはカウンターの場面では誰よりも先に動き出してボールを受け、そのまま持ち運んで何度も決定機を作っている。
「ボールを多く受けられましたし、チームとしていい攻撃もできた。去年からやって来た積み上げが成果として表われたので、自信につながります」
去年からの積み上げは、力強さの部分に見出せる。ネルシーニョ監督のもとで1年間鍛えられ、当たり負けしない強さを身に付けた。
ボールを失わないから、プレーの安定感が高まる。2年前と比較して格段にたくましさを増した印象を与え、その力強さは攻撃面だけでなく、ピンチの場面で相手からボールを奪い取った守備でも発揮されていた。
「クリスティアーノにしても、江坂にしても、すばらしいパサーがいる。彼らのおかげで得点機を作ることができている」
そう賛辞を贈るのは、オルンガだ。
オルンガ、クリスティアーノ、そして江坂と、柏の前線トリオが繰り出す攻撃は、リーグ屈指の破壊力を秘めている。実際にこの日も、この3人ですべてのゴールを生み出している(江坂=2得点1アシスト/オルンガ=2得点1アシスト/クリスティアーノ=2アシスト)。
もっとも、オルンガやクリスティアーノといった強烈なタレントを生かすも殺すも、江坂次第だろう。出し手としての質の高さを備え、受け手としても機能する。そのマルチな能力は”モンスター級”の助っ人たちの力を、より引き出すことになるはずだ。
「まだまだ改善点はあるけど、複数得点を実現できた攻撃には手応えを感じています」
覚醒の予感を漂わせるナンバー10に導かれ、今季の柏がJリーグを席巻するかもしれない。