強いチームに 「恩返しがしたい」。最後の試合が終わった心境として答えたのは、後悔や達成感ではなく仲間と家族への感謝だった。日本拳法部を主将として率いた小坂怜亜(教=大阪・関西福祉科学大高)は4年間を振り返った。『全国優勝』という高い目標のた…

強いチームに

 「恩返しがしたい」。最後の試合が終わった心境として答えたのは、後悔や達成感ではなく仲間と家族への感謝だった。日本拳法部を主将として率いた小坂怜亜(教=大阪・関西福祉科学大高)は4年間を振り返った。『全国優勝』という高い目標のために小坂が注力したのはチームとして強くなることだった。

 小坂が日本拳法を始めたのは約18年前。早大に入学当初は趣味程度の気持ちで日本金峰部に入部したが、『全国優勝』という高い目標を掲げるチームに惹かれ次第に本気になっていく。早大日本拳法部はスポーツ推薦を取れず、例年経験者がほとんどいない。そんな中でも全国一を狙い、本気で取り組む姿が小坂には嬉しかったという。そして4年生では主将に就任。主将として目指したのは個としての強さではなく、チームとしての強さだった。全国制覇という高い目標を成し遂げるためにはチームとしての強さが不可欠ということを小坂は感じていたのだろう。練習では仕切り役を3年の森川晋平(スポ3=奈良・青翔)に任せ、自分は練習を盛り上げるなど良いチームを作ることに専念した。


試合前に仲間を鼓舞する小坂

  小坂が4年間で最も嬉しかったこととして挙げたのは、後輩が新人戦で優勝したことだ。成長を支え続けた後輩の勝利、それが自分の勝った試合よりも嬉しかった。部としても「自分が部を率いるというより、1年生から4年生まで全員で部を動かしていた」とチームとしての成長も感じさせた。そんな仲間思いの小坂をいつも支えたのは家族だ。両親は試合があるときには大阪から、兄は最後の試合では有給を取って応援に駆けつけてくれたという。今一番感謝を伝えたい人は、という質問には「なかなかこんな家族はいないのかな」と、家族と即答した。

 12月の全日本学生選手権。この最後の大会を小坂は一番印象に残った試合として挙げた。この大会、早大はベスト16に終わり、全国優勝を達成する事はできなかった。しかし、印象に残っている理由は負けた悔しさではなく、本気で勝とうと力を合わせる仲間の姿だった。大将の自分まで試合を繋げてくれたことが嬉しかった。それまでの大会では小坂に試合が回ってくる前に負けてしまうことが多かったが、最後の試合では仲間が力を合わせて自分まで繋げてくれた。支えてくれた家族、本気で同じ目標を目指してくれた仲間の姿。それを見たからこそ、最後の試合が終わった時の心境は悔しさではなく、恩返しがしたいという感謝の気持ちで溢れていたのだろう。

 今後も日本拳法は続け、OBとして練習に参加するなど部に恩返しをしたいという小坂。後輩には「日本拳法を楽しんでほしい」とメッセージを残した。小坂の思いは新体制でも受け継がれていく。

(記事 末次拓斗、写真 鈴木隆太郎)