チャンピオンズリーグ(CL)の決勝トーナメント1回戦は3月11日、パリ・サンジェルマン(PSG)対ドルトムント、リバプ…
チャンピオンズリーグ(CL)の決勝トーナメント1回戦は3月11日、パリ・サンジェルマン(PSG)対ドルトムント、リバプール対アトレティコ・マドリードの第2戦が行なわれた。
第1戦のスコアは、ドルトムント対PSGが2-1で、アトレティコ対リバプールが1-0。いずれも、前評判の高い側が第1戦を1点差で落とす、番狂わせの可能性を匂わせながら迎えた第2戦だった。
波乱なく順当な結果に終わったのは、PSG対ドルトムント。PSGがドルトムントを2-0下し、合計スコア3-2でベスト8進出を決めた。
一方、昨季の覇者リバプールがアンフィールドにアトレティコを迎えた1試合は、二転三転、もつれた激戦となった。

CLベスト8進出を決めて喜ぶディエゴ・シメオネ監督(アトレティコ・マドリード)
前半43分、ジョルジニオ・ワイナルドゥムのヘディングシュートで合計スコア1-1とした瞬間、流れはリバプールに大きく傾いたかに見えた。後半もリバプールのペースで推移したが、ディエゴ・シメオネ監督率いるアトレティコも本領を発揮。合計スコア1-1のまま30分間の延長戦に突入した。
延長前半4分。リバプールはロベルト・フィルミーノのゴールで合計スコア2-1と勝ち越す。勝利を手元に大きくたぐり寄せたかに見えた。アトレティコにその後、連続3ゴールを許し、リバプールが合計スコア2-4で敗れることになる劇的な急展開を予想した人はこの時、どれほどいただろうか。
前季の覇者が敗れることになったこの衝撃度の高い一戦。番狂わせの原因を探ろうとしたとき、あらためて触れたくなるのが、CLで連覇を達成することの難しさだ。
CLで連覇を果たしたのは、2015-16シーズンから3連覇を達成したレアル・マドリードが初めてだった。CLの前身であるチャンピオンズカップを含めても、2連覇は1988-89、89-90シーズンのミラン以来、27シーズンぶり。3連覇となると、1973-74シーズンからのバイエルンまで遡らなければならない。
原因はいろいろ考えられるが、一番に挙げられるのは「標的」になりやすいことだ。前季の覇者は例外なく優勝候補だ(今季のリバプールがそうであったように)。対戦チームには、チャレンジャー精神を最大限かき立てられるモチベーションの高い試合になる。決勝トーナメントに入ればなおさらだ。敗れてもともとと、思い切ってぶつかってくる。今回のアトレティコのように、そこで勝利を収めれば、ニュースは大きな事件として全世界に報じられる。
交代出場で2ゴールを挙げたマルコス・ジョレンテ、その1点目のゴールをアシストしたジョアン・フェリックス、3点目のゴールを決めたアルバロ・モラタ、さらには再三好セーブを披露したヤン・オブラク等々の知名度も、その瞬間、飛躍的に上昇する。
監督はそれ以上だ。「さすが、シメオネ」と、ずる賢いサッカーを讃えるファンは、いまこの世界に溢れ返っていることだろう。
一方、リバプールのユルゲン・クロップ監督は、アトレティコを下してもそこまで評価は上がらない。順当勝ちと見なされる。前評判の高い優勝候補は、受けて立つ設定になっているのだ。
昨季のリバプールはそうではなかった。チャレンジャーとして臨むことができた。バルセロナに第1戦で0-3と敗れながら、第2戦で4-0とし、合計スコア4-3で大逆転勝ちした準決勝は、その典型的な試合だった。受けて立つ格好になったのはバルサ。立ち位置の違いに、勝負の綾が潜んでいた。
CLで2連覇を狙うリバプールは、国内リーグでも断トツの首位を走っている。「リバプール強し」は、鮮明に描かれた状態にあった。つまり、アトレティコに対して、受けて立つ条件が整っていた。
サッカーの中身の話をすれば、ボールを持たされてしまった点を挙げたくなる。延長戦を含む120分のボール支配率は、64%対36%で、リバプールに軍配が挙がった。0-1で敗れたアトレティコホームでの初戦もしかり(67%対33%)、だった。
リバプールは、ボールを保持することを売りにするチームではない。4-3-3を布くチームは、ボールを奪われにくい場所とされるサイドに、拠点を作ろうとするものだ。しかし、リバプール型4-3-3は、両サイドにサディオ・マネとモハメド・サラーという強力FWを擁すこともあって、サイドにタメを作らず、縦に速く進もうとする。両ウイングと両SBがコンビネーションを発揮しながらサイドを丹念に突く4-3-3とは、一線を画している。
いわば速攻型の4-3-3だが、こうしたチームが64%ボールを保持すれば、得意とする本来の形を披露する時間は逆に減る。ちなみに、先述した昨季の準決勝バルサ戦のリバプールの支配率は、0-3で敗れた第1戦が53%で、4-0で勝利した第2戦が43%だった。リバプールの特徴を示す、これはいい例になる。
高いボール支配率は、リバプールにとって居心地の悪い状態にあたるのだ。相手が力の落ちる格下ならハンディにはならないが、実力が相応に接近した相手となると、不本意な戦いを強いられる。
シメオネはそのギャップを突いてきた。リバプールにあえてボールを長く持たせ、リズムを狂わせようとした。アトレティコも、布陣は違えどもリバプールと同じタイプだ。ボール支配率が低いことを苦にしない。支配率で勝るのは、力が弱い相手に限られる。
終始、精神面で優位に立っていたのは、押されているかに見えたアトレティコだった。また、ボールを持っても、基本的にうまいので、リバプールの選手を慌てさせることができる。うまさをあえて隠しながらプレーしている印象で、リバプールは、そこに薄気味悪さを感じながらプレーしている様子だった。
延長前半4分、フィルミーノが2点目のゴールを決めたところまではよかったが、以降はアトレティコが瞬間的にみせる技巧に、たて続けに翻弄されることになった。
3連続ゴールを奪われ、敗れ去る姿を見ていると、サッカー界でよく言われる、「うまい選手はうまい選手に弱い」との台詞を想起せずにはいられなかった。うまいつもりでいる側が、それ以上の技巧を相手に発揮されたとき、沈黙してしまう状態を指すが、延長戦のリバプールはまさにそんな感じだった。
クロップの対応も不十分に見えた。中盤の核として効いていたワイナルドゥムをクロップは90分でベンチに下げているが、ケガが理由でなかったとすれば、采配ミスとは言えまいか。
さらに、延長前半7分、アトレティコのジョレンテに合計スコア2-2とされる事実上の逆転(アウェー)弾を許した直後の采配だ。そこからアトレティコのジョレンテに再び、ダメ押しとなるゴールを奪われるまで9分間あった。だが、メンバー交代(ファビーニョ、ディボック・オリギ、南野拓実の投入)が行なわれたのはその後。勝負がほぼ決したあとだった。遅きに失した感のある交代であり、リバプールのサッカーそのものも、メンバーを代える度にバラバラになっていった。
シメオネの土俵で戦ってしまったクロップ。だが、もしアトレティコに勝利することができたとしても、残る3試合をディフェンディングチャンピオンとして、勝ち切ることができたかどうかは疑問である。CLで2連覇を飾ることの難しさを、あらためて痛感させられた一戦だった。