今年に入ってから、堂安律(PSV)と板倉滉(フローニンゲン)はともに出場機会を減らしている。そのふたりが3月8日、フロ…
今年に入ってから、堂安律(PSV)と板倉滉(フローニンゲン)はともに出場機会を減らしている。そのふたりが3月8日、フローニンゲン対PSV戦で先発に抜擢された。堂安にとっては今年初めて、板倉にとっては2度目のスタメンであった。

ピッチで激しいバトルを演じた堂安律と板倉滉
試合は1−0でPSVが勝ったが、70分過ぎからフローニンゲンが猛攻を仕掛けると、堂安が最終ラインに吸収される一方、板倉が左右のサイドから仕掛けるなど、攻守の役回りが逆転するような白熱の終盤となった。
堂安にとってフローニンゲンは、1年半あまりを過ごした思い出の地だ。試合当日の朝はひとりで散歩して、「懐かしいなあ」と感じていたという。
フローニンゲン時代の堂安は、右サイドでSBのデヨファイシオ・ゼーファイクと息の合ったコンビを見せていた。今回、チーム事情から堂安が左サイドハーフを務めたことにより、ゼーファイクとマッチアップする機会が多かった。
“お前にだけはやらせない”と言わんばかりに身体をぶつけ合いながら、アイコンタクトで”今のはいいプレーだったな”という合図も交わし合う、リスペクトのこもった1対1だった。
「あいつ、削ってきましたよ。今、足首がパンパンです」と言いながらも、「彼はいい選手なので、楽しかったです」と堂安の目は笑っていた。
ただ、この日の堂安がインパクトを残せたかというと、微妙なところだ。右からのカットインという型を持つ彼だけに、左サイドハーフというポジションは「窮屈でした。どういうシュートパターンがあるのか、自分もわからないまま試合に出ていた」と述懐する。
だが堂安は、今の立場もわきまえている。
「自分のやりたいところはあるけれど、今はそういうことを言う立場ではないので、出た時間でしっかりやりたい」
タイムアップの笛が鳴ったあと、板倉はしばらくピッチの上に倒れ込み、立ち上がることができなかった。
「悔しかったですね。いい試合をしていただけに、やっぱり勝ちたかった。何度かチャンスもあったので、それを決めて勝っていれば、ホームゲームなので最高だったなあ、という思いがありました」
オランダに来て板倉が感じているのは、「オランダリーグには、いろんなタイプのストライカーがいる」ということ。たとえば、昨年9月にアウェーでPSVと対戦した時には、スピードとパワーを兼ねたドニエル・マレン(現在ケガで長期離脱中)とステーフェン・ベルフワイン(現トッテナム・ホットスパー)という規格外のふたりがいた。
そして今回、板倉が対峙したのは、昨季ヘーレンフェーンでブレイクし、今季PSVにレンタルバックされた長身の万能型FWサム・ラマースだった。こういった個性的なストライカーとバトルを繰り広げるのは「楽しいですね」と板倉は言う。
「スピードで勝負するFWもいれば、今日みたいに器用でポストプレーもできて、ボールを運べて身長もある選手もいる。いろんな相手と対峙できるのはプラスなこと。ただ、DFはどんな相手であっても抑えられないとダメなので、楽しみつつも勝負にこだわってやっています」
フローニンゲンの元同僚、U−23日本代表のチームメイトである堂安と戦ったことはどうだろうか。
「テオ(ゼーファイク)とマイク(テ・ウィーリク)がガツガツと律にいっていましたが、やっぱり律がボールを持つとチャンスを作られるんじゃないか、という怖さはあります。ただ、そこをやらせないようにするのが僕の仕事なので。
『絶対にカットインからのシュートはやらせちゃダメだ』と思いながらやっていました。だけど、楽しいですね。こうやって律と一緒に試合に出てやれることは。次は絶対に勝てるように、個人としても成長したいなと思いました」
コロナウイルスの影響によって、3月下旬に予定されていたW杯アジア2次予選が延期となった。
「この3月の10日間、チームメイトと『やれることをすべてやろう』と話していたし、みんなやることが山積みだったので、それができないのは森保さんもすごく悲しんでいると思います」(堂安)
「前回のコロンビア戦(0−2の完封負け)やタイ(U−23アジア選手権。日本はグループリーグ敗退)の結果で、今回の3月に対する気持ちはすごく上がっていました。ここで集まって高めていかないといけない場だと思っていたので、なくなってしまったのは残念です」(板倉)
2月に森保一監督がヨーロッパを視察した時、多くの日本人選手の試合を観たのち、彼らと話し合いの場を持ったという。
「楽しく食事しながら、真剣にサッカーの話もしました。オリンピックに向けて、気持ちがどんどん高まっていく話し合いでした。オリンピックでの金メダル獲得は、監督をはじめ全員が思っていること。今回(代表マッチが)なくなってしまいましたけど、次はみんながレベルアップした状態で集まれるようにしたい」(板倉)
一方、堂安は「(森保監督は)PSVでの状況の相談にも乗ってくれました」と言う。
「A代表、オリンピック代表、PSV、3つの話をしました」
もっとPSVで試合に出てほしい——。そんな要求も合ったのだろうか?
「『心配はしていない』と言ってくれました。僕が『ふざけんな』って思いながらやっている性格なのを、たぶんわかっているんだと思います。監督と選手の関係で一番大事なのは信頼なので」
コロナウイルスの影響について、堂安は日本の学生が卒業の時期を迎えていることを気にかけていた。
「大事なイベントが小・中・高であるなか、この時期に学校が休校になっていると聞くと、僕たちが中学生や高校生の時にそれやったら嫌やなと思う。取り戻せない時間なので、すごく同情しますね」
取材を終えてから3日後、状況は時々刻々と変わる。
オランダでも、とくに北ブラバント州を中心にコロナウイルスが広がりつつある。今週末のオランダリーグのうち、北ブラバント州で行なわれる1部リーグ3試合、2部リーグ2試合が中止になった。そのなかには、PSV対エメン、RKC対フローニンゲンが含まれており、堂安も板倉も試合がなくなった。
3月11日の『デ・テレフラーフ』紙では、エース記者のバレンタイン・ドゥリ—センが「今はすべての試合を延期すべき」と論陣を張っている。何よりも大事なのは、人々の健康だ。オランダリーグは今、決断が迫られている。