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■TBSアナウンサーの高畑百合子さんが、パラスポーツの取材現場や、パラアスリートとの触れ合いを通じて感じたこと、思ったことを伝えていく連載がスタート!

「webスポルティーバ」をご覧の皆様、初めまして。TBSアナウンサーの高畑百合子です。初回は、夫でパラアスリートの堀江航とともにアメリカで見て、体験してきたこと、そこから感じたことをお伝えしたいと思います。

 昨年の8月、年に一度行なわれる車椅子ソフトボールのワールドシリーズがアメリカのカンザスシティで開催されました。夫(パラアスリートの堀江航)が日本代表として参加するその大会に、私も夏休みを使って帯同してきました。



アメリカのスーパーで見つけた車椅子に乗ったバービー人形

 その大会は18チームがエントリーする全米選手権と、3カ国による国際ディビジョンを開き、なんと日本代表が国際ディビジョンで強豪国のアメリカとラテンアメリカを破って優勝しました。日本代表の特徴は、堅い守備力とバントなど小技でつなぐチームプレー。役割がはっきりしていて、「塁に出ている選手を何としても返すぞ!」という気迫を感じました。

 優勝候補のアメリカは「俺が打って、戻ってやるぜ!」と、いい意味で個人プレーが光っていました。パワフルで、ホームにもキャッチャーを完全に弾き飛ばす勢いで戻ってくるんですよ。観ている私は、その迫力に圧倒されてしまったんですが、各チームのカラーが出ていて興味深かったです。

 車椅子ソフトボールのルールは次のようになっています。選手の障がいの程度によるI~IIIの持ち点制度があります。10人の合計は21点以内で、クラスQ(頸椎損傷など、持ち点は0点)の選手を少なくとも1人入れる必要があります。女子選手(1.5点)や健常者(3点)も参加でき、選手をバランスよく配置することで、この上限21点のチームが成り立ちます。



日本らしいプレースタイルで優勝を果たした車椅子ソフトボール日本代表

 この競技のことを知る前は、切断や腹筋が利くなど障がいが軽い選手が活躍するイメージがありました。でも実際はそれだけではなくて、0点や1点の移動するのも大変そうな重度障がいの選手が「ここは俺に任せろよ」とバッターボックスに入って、彼らにしかできない形でチームに貢献するわけです。お客さんもすごく盛り上がっていて、誰もが一緒に楽しんでいる雰囲気が最高でした。

 義足を着けている選手は、競技中は義足を外すため、切断面が見える状態でプレーする選手が多いです。車椅子ソフトボールはパラリンピック競技ではありませんし、正直なところ見慣れない日本人は、その切断している脚を直視しちゃいけないような雰囲気になることもあると思います。でも、アメリカでは会場の近所の子どもたちがどこからともなく集まってきて、とくに障がいを気にすることもなく、「ヘーイ、一緒にキャッチボールしようよ」と声をかけてくるんです。

 そうかと思えば、何の躊躇もなく「なんで脚がないの? なんで僕と違うの?」と聞いてきたりもするし、それに対して選手はサラリと答える。それは、その子の未来の感覚をつくっていく、すごく大事なことだと思いました。

 車椅子ソフトボールは約40年前にアメリカで発祥したとされています。一方、日本で車椅子ソフトボールが始まったのは2012年からと、まだ歴史は浅いのですが、その普及活動に尽力したとして、夫である堀江が殿堂入りすることになり、ホール・オブ・フェイムに名前が刻まれました。彼はそれを本当に喜んでいて、私もうれしくなりました。

 もうひとつ、会場外でも興味深い経験をしました。地元のスーパーマーケットに寄った時に、おもちゃ売り場で車いすに乗ったバービー人形を見つけたんです! これは日本では見かけたことがなかったので、即購入しました。ちなみに、ラインナップの紹介によると義足の女の子もいるようでしたが、この店では売り切れていたのか、買うことができず残念でした。



優勝トロフィーを手にする高畑アナと夫の堀江選手

 また、この店舗の入り口には、誰でも利用できる電動のカートが設置されていました。夫はアスリートですし、義足で歩けるんですが、日本と比べ物にならないくらい広い店内を長時間かけて歩くとさすがに疲れるので、その電動カートを利用して見て回りました。小さな子どもたちともすれ違いましたが、彼らは義足をつけた夫を気にすることもなく、大人にも「何、あの人?」みたいに見られている感じが一切なくて。自然体のまま居られる居心地のよさを感じました。

 今年はいよいよ東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。これを機に、日本においてもこうしたソフト面のバリアがなくなるといいなと思いますし、私も経験を踏まえて、自分の言葉でパラスポーツのことをお伝えしていければと考えています。

■プロフィール 高畑百合子(たかはた・ゆりこ) 1980年8月19日 東京都生まれ

【担当番組】
『報道1930/BS-TBS』月/19:30~ 水(第3・4)/19:30~ 木/19:30~
『スポーツ中継』 『アスリート夢共演/BS-TBS』

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