3月7日に行なわれたプレミアリーグ第29節リバプール対ボーンマス戦で、英BBC放送がマン・オブ・ザ・マッチ(MOM)に…

 3月7日に行なわれたプレミアリーグ第29節リバプール対ボーンマス戦で、英BBC放送がマン・オブ・ザ・マッチ(MOM)に選出したのは、リバプールのFWサディオ・マネだった。



南野拓実はリバプールでどこまで成長していけるのか

 27歳のアタッカーは1ゴール1アシストの活躍で、2-1の逆転勝利に大きく貢献。前半にはポスト強襲の強烈なミドルシュートを打つなど、MOMにふさわしい存在感を示した。英BBC放送は「違いを作った」と褒めていた。

 セネガル代表FWのマネは、2016年6月にサウサンプトンからリバプールに籍を移した。前年度にはルイス・ファン・ハール監督率いるマンチェスター・ユナイテッドが獲得に動いていたが、マネは彼らの申し出に断りを入れ、その翌年にリバプールへの移籍を決めた。

 後日、マネは「ユルゲン・クロップ監督の存在が決め手になった。自分のことを正しく評価してくれて、自分のことを強く求めていると感じた。ここなら成長できると思った」と、リバプールへの移籍を決めた理由について明かした。

 リバプールに移籍する前、マネはサウサンプトンに在籍し、英国南部の港町で2014年から2シーズンを過ごした。

 ちょうどこの頃、筆者は吉田麻也の取材でサウサンプトンの試合を追いかけることが多く、レギュラーとして活躍していたマネのプレーを間近で見ることができた。その頃に比べると、今のマネは選手として、ひと回りもふたり回りも成長している印象だ。

 サウサンプトン時代のマネは、まだまだ荒削りで、好不調の波も大きかった。当時、プレミアリーグ公式サイトで分析記事を担当するエイドリアン・クラーク氏と、マネについて意見交換したことがあった。2015年当時、同氏は次のように話していた。

「アフリカ人選手特有のしなやかな身のこなしと、伸びのあるスプリントが持ち味だが、パフォーマンスに波がある。ポテンシャルは大きいが、シュートとクロスボールの精度をもう少し高めないと、ビッグクラブではプレーできないだろう。ただ、繰り返すが、ポテンシャルは相当大きい」

 半年後、リバプールに移籍したマネはひと皮むけた。クロップ体制の選手に共通して言えることだが、フィットネスレベルが極限まで上がり、球際では強く、最後まで走り切れる選手に進化した。

 マネの場合は、クラーク氏が指摘するシュートとクロスボールの精度も向上。とくに、リバプールが欧州王者に輝いた昨シーズンの活躍は目覚ましく、年間50試合に出場して26ゴールを奪った。サウサンプトン時代に目立った自己中心的なプレーも、リバプールではほとんど見られなくなった。

 しかも、2019年度のFIFA最優秀選手賞を受賞したリオネル・メッシが、マネに一票を投じていたことが話題になった。フランス・フットボール誌が選ぶバロンドールでも、マネは4位につけた。マネがトップ3に入らなかったことに、メッシが「とても残念」と落胆していたとのエピソードは、セネガル代表のアタッカーがリバプールで大きく成長した何よりの証拠だろう。

 振り返れば、2015-16シーズンの1年をニューカッスル・ユナイテッドでプレーしたMFジョルジニオ・ワイナルドゥムや、2014年からの3シーズンをハル・シティでプレーしたDFアンドリュー・ロバートソンも、リバプールへの移籍を機に世界的名手に成長した。クロップ監督の指導のおかげで、主将のMFジョーダン・ヘンダーソンにいたっては、英メディアに「今季プレミアの最優秀選手の有力候補」とまで讃えられるようになった。

 リバプールは、練習時から徹底してディテイルにこだわる。セットプレー時も「けっこう指示が細かい」(南野拓実)という。スローイン専門コーチや心理カウンセラーを採用している点も、すべて「チームの勝利」と「選手の成長」につなげるためだ。

 今冬の移籍市場で加入した南野は出場機会が限られており、世界王者リバプールの壁に直面している。ベンチスタートとなったボーンマス戦では最後まで出番がなかったが、約1カ月ぶりに先発したFAカップ5回戦のチェルシー戦(3月3日)では、リバプールとプレミアリーグのプレースタイルにフィットし始めているところを見せた。

 クロップ監督の指導を受けながら、ここからどこまで成長していけるか。以前、南野は次のように話していた。

「今の自分の高いモチベーションと、この成長できる環境があれば、よくなっていくんじゃないかなと思います」

 多くの選手を成長させてきたリバプールの環境で切磋琢磨していけば、選手として大きく進化していくに違いない。実際、日本代表主将の吉田麻也(サンプドリア)も「(拓実は)毎日必死だと思います。選手として、こういう時が一番伸びる」と、南野にエールを送っていた。

 出場機会の少ない今は、我慢の時。南野も、リバプールへの移籍を機に大きく羽ばたいた先輩たちのあとに続きたい。