1月末にサンプドリアにサプライズ移籍してきて以来、1カ月と8日。ついに吉田麻也がセリエAデビューを果たした。ヴェローナ…
1月末にサンプドリアにサプライズ移籍してきて以来、1カ月と8日。ついに吉田麻也がセリエAデビューを果たした。

ヴェローナ戦でセリエAデビューを飾った吉田麻也(サンプドリア)
ここまでたどり着くにはかなりの紆余曲折があった。移籍後すぐにプレーするのではと言われていたが、最初のナポリ戦(2月4日)はベンチ外。続くトリノ戦(2月9日)、フィオレンティーナ戦(2月16日)はベンチには入ったものの出番なし。そしていよいよインテル戦(2月23日)で、サンシーロという大舞台でデビューとなるはずだったが、試合は新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期された。さらにヴェローナ戦(3月1日)ではスタメンに名前を連ねていたものの、1週間の延期となってしまった。
3月8日、待ちに待ったデビューは延期されたヴェローナ戦だった。実はこの試合も、最後の最後まで開催が危ぶまれていた。選手や監督たちは、同じ日の12時30分(サンプドリア戦は3時開始)に予定されていたパルマ対SPAL戦のキックオフの知らせを聞いて、初めてこの日のプレーを確信したという。
この日、吉田はスタメンとしてピッチに立ったが、その風景はいつもの試合とは違っていた。イタリアでは北部を中心に新型コロナウイルスの感染者が急増し、現在は7000人を超えている(3月9日現在)。そのため、すべてのサッカーの試合は無観客で行なわれることになったのだ。せっかくのホームデビューであったにもかかわらず、ピッチに響くのは選手の声とボールを蹴る音だけだった。
しかし、こうした数々のアクシデントも、吉田はポジティブにとらえている。
「この1カ月は僕にとってはプレシーズンのようだった」
試合後、サンプドリアがアップしたインタビュー動画で、吉田はそう語っている。
「おかげで今日の試合を十分に準備して迎えることができたし、ほかの選手のこともよく知ることができた」
たしかにこの日の吉田は、とてもセリエAが初めてとは思えない落ち着いたプレーを見せていた。CBでコンビを組むロレンツォ・トネッリともよく息が合っていた。練習もみっちりできたのか、昨年11月から公式戦に出ていなかったようには見えなかった。
サンプドリアは現在20チーム中16位。これ以上順位が下がると、セリエA残留が怪しくなる。一方、対戦相手のヴェローナは、「今シーズン一番のサプライズ」とも言われているチーム。現在はミラン、ナポリを追う7位で、ヨーロッパリーグも狙える位置にあり、彼らにとっても一歩も引けない試合だった。
試合はキックオフからしばらくは均衡状態が続いたが、ヴェローナは32分、左サイドから大きく上がったボールにマッティア・ザッカーニが飛び込んで決め(記録ではGKエミル・アウデロのオウンゴール)、先制する。
試合は0-1で後半に突入。サンプドリアはなかなか点を取れないものの、時間の経過とともに動きがよくなっていった。吉田も落ち着いた守備のほかに、ボレーシュートでゴールを狙うシーンもあった。77分には、ファビオ・クアリアレッラがシュートを決め、サンプドリアは同点に追いつく。これに勢いを得て、終了間近にはVAR判定でPKを獲得。クアリアレッラが再びこれを決めて、サンプドリアは貴重な勝ち点3を手にして、吉田のデビュー戦を白星で飾った。
吉田に対するイタリアメディアの評価は次のようなものだった。
イタリア最大のスポーツ紙『ガゼッタ・デロ・スポルト』は、「非常に堅実にプレーし、少ないミスで及第点のデビュー。クオリティーの高い選手であることを披露した」と、6点(満点は10点)をつけた。そのほかのメディアの表現も「信頼できる」「プレーがクリーン」「ポジショニングにセンスがある」「タイミングが絶妙」「うまくチームに溶け込んでいる」など、ほとんどがポジティブだった。
これまでトネッリとコンビを組んでいたオマール・コリーが調子を落としているため、このまま吉田がレギュラーの座に定着する可能性は大いにある。WEBサイト『サンプドリアニュース』は、トネッリと吉田の2人の活躍が、サンプドリアのA残留のカギを握るのではないかと見ている。
また、ドリアーノ(サンプドリアサポーター)からの評判も上々で、SNSに投稿された「吉田のデビューに何点つける?」には、ほとんどの人が6.5以上の点をつけていた。もし観客が入っていたならば、きっと温かい拍手が贈られていたことだろう。
チームがアップしたインタビュー動画の最後で、吉田は「これから少しずつ成長していき、カルチョを楽しめるようになりたい」と述べた。インタビューにはすべて英語で語っていたが、この「少しずつ」の部分だけを「チャニン、チャニン(標準イタリア語ではポコ・ア・ポコ)」とジェノヴァ弁を使って表現し、ドリアーノを喜ばせた。
こうしたちょっとした心遣いも、サポーターの心をつかんだ一因だろう。