2月に開催された世界的スポーツアワード「ローレウス・ワールド・スポーツ・アワード2020」。その会場に各スポーツ界のレジェンドたちが集まった。今回はそのなかの一人で、同アワードのアカデミーメンバーである、カフー氏に話を聞いた。



日本に対して親しみを込めて話してくれたカフー

 2002年日韓W杯優勝メンバーで、ブラジル代表キャプテンを長らくつとめたカフー。左のロベルト・カルロスと、右のカフーという超攻撃的なサイドバックは当時、見る者に強烈な印象を与えた。W杯は1994年アメリカ大会から06年ドイツ大会までの計4大会に出場し、優勝2回、準優勝1回。決勝に3度出場している稀有な選手だ。代表キャップ142はブラジル代表としては未だ破られていない記録である。クラブでは、ローマやミランで活躍。ローマでは中田英寿らと共に00-01シーズンにスクデッドを獲得。ミランでは06-07欧州チャンピオンズリーグ優勝も果たしている。

 そんな押しも押されもせぬサッカー界のレジェンドであるカフーは、どのように日本サッカーを見ているのだろうか。Jリーグにはブラジル人選手も、指導者も、関係者も数え切れないほどいて、ブラジルからの影響力の大きさは計り知れない。

「今、日本でプレーしているブラジル人選手についてはそれほど知らないが、鹿島の監督をやっているザーゴ(※)のことはよく知っている。日本ではかつて多くの偉大なブラジル人選手たちがプレーしていた。サンパイオ、ビスマルク、ジーコ、アモローゾ……、彼らが日本でプレーしたこともあって、若い選手たちにはキャリアの初めに日本でプレーしたいと思う選手も多い。それに、日本サッカーの成長にジーコの影響もある。ブラジルのサッカー選手にとって日本はとても大切な国なんだ」
※ローマ時代のチームメート

 多くのブラジル人と同様かそれ以上に、日本に対する親しみを込めて話してくれた。

 この冬、逆に日本人がブラジルリーグへ電撃的に移籍を果たした。ブラジル1部のボタフォゴに加入した本田圭佑だ。リオデジャネイロの空港でボタフォゴファンたちから大歓迎を受け、盛大な記者会見が行なわれたことはもちろんカフーも知っていた。

「彼はチームにとってとても重要な存在だ。それだけではなく、これまでにこういう(日本のトップ)選手がブラジルに来ることはなかったから、彼がブラジルでどうプレーしていくかを日本人が見ることも、ブラジル人が日本人選手を見ることも、いい経験になる。相乗効果があると思う」



「ブラジル代表は五輪で優勝できるタレントがそろっている」とカフー

 とはいえ、本田にはブランクがある。18-19シーズンを終えオーストラリアのメルボルン・ビクドリーを退団。今季前半はオランダのフィテッセに途中加入したが、わずか4試合(フル出場2回)の出場に終わっている。実に半年以上トップレベルで継続してプレーしていないことになる。

「彼はとてもインテリジェンスのある選手だよね。サッカーを愛していて情熱もある。当然成功すると思う。あとは、日本の人たちがカフー(と自身のことを言った)を受け入れてくれたように、ブラジルのファンから彼が受け入れられることを願っている」

 カフーが認めたようにインテリジェンス、情熱を持つ本田だが、ただでさえ目の肥えたブラジル人のファンたちを納得させることは簡単ではないはずだ。しかし、地元から愛されることは外国人選手としてプレーする際には必要不可欠になる。

 2月、ブラジル代表は今年の夏に行なわれる東京五輪行きを決めた。当然、カフーも若きブラジル代表に期待を寄せる。

「もちろん決勝まで行って優勝するだけのタレントがそろっている。でも、ほかのチームにもその力がある。だから、簡単ではないだろうけれど、面白い戦いになると思う」

 4年前のリオ五輪では、自国開催で念願の金メダルを獲得している。決勝の相手はドイツ。延長戦までもつれ込み、PK戦の末ようやく栄冠を手にした。その2年前の14年W杯準決勝で1−7で敗れたドイツを相手に雪辱を果たした。

「リオでの金メダルはものすごく意味のあることだった。僕自身はオリンピックでプレーすることができなかったのは、残念に思っている。でも、自国開催のオリンピックで金メダルを獲ることができたのは本当に大きなことだった。国際大会はどれも大事だが、ワールドカップの次にオリンピックが大切な大会だと思う」

 カフーのように数々の主要な大会で結果を残してきたような人物でさえ、五輪に出られなかったことを未だに残念がっている。クラブが優先で五輪を軽視ぎみの欧州と違い、ブラジルやアルゼンチンの五輪にかける意気込みが強いことをあらためて感じさせられた。

 取材の最後に02年の日本での思い出を聞いてみた。

「忘れられない大会だよ。プレーしたこともそうだけど、キャプテンとしてカップを掲げた瞬間が何よりもうれしかった」

 そう言って、うっとりとした表情を浮かべた。

 Jリーグではプレー経験のないカフー。しかし彼の言葉からサッカー界にとっても日本とブラジルの縁は切っても切れないことが、あらためてわかった。