3月7日、リーガ・エスパニョーラ第27節、エイバル対マジョルカ戦。マジョルカの久保建英は先発出場し、今シーズン3得…
3月7日、リーガ・エスパニョーラ第27節、エイバル対マジョルカ戦。マジョルカの久保建英は先発出場し、今シーズン3得点目を決めている。

エイバル戦で決勝ゴールを決めた久保建英(マジョルカ)
77分、マジョルカはサイドバックがインターセプトに成功し、ドリブルで持ち上がると、ディフェンスラインの前にいた久保がパスを受ける。2人のディフェンダーが目の前に立ち塞がったが、利き足ではない右足を迷わず一閃。ボールは相手の足をかすめ、ポスト内側を叩きながら、ゴールラインを越えた。
カウンターからの得点で、まずは久保が味方の信頼を得ていることが伝わるだろう。次に、左を走る味方を囮に使う豪胆さと知性。そして右足を振り切れる決断に、シューターとしての資質を感じさせた。腰が強く、軸がぶれず、重い球質のボールを飛ばせる技量は、特筆に値する。シュートまでいっても、ふらふらと芯をとらえられない選手は、このレベルでも少なくない。
そしてなにより、”ゴールの前触れ”も久保自身が作っていた。
得点直前、久保は自陣からドリブルで一気にゴール前へ突進している。相手3人を前にしても、少しもひるまなかった。結局、そのうちのひとりにボールをかき出されたが、それが波状攻撃につながっていた。久保が放つ気迫のようなものが、チームに伝播していたのだ。
結局、久保の得点が決勝点になった。アウエーで負け続けてきたチームに、1-2でシーズン初勝利をもたらした。
「Tirar del carro」
それはスペイン語で「荷車を引く」という意味から転じ、「先頭に立って引っ張る」という表現になる。リーダーシップを意味する。言わば、勝利をもたらすエースだ。
久保はマジョルカで、そんな存在になりつつある。
エイバル戦、マジョルカは5-4-1とも、3-4-2-1とも言えるシステムで乗り込んでいる。トップのクロアチア人FWアンテ・ブディミル、シャドーのコロンビア人FWクチョ・エルナンデスと久保。この3人で違いを示し、あとはしぶとく守りつつ、戦局を動かした。
開始早々、マジョルカはクチョが左足できわどいシュートを放っている。しかし乾貴士がベンチ外になったエイバルに、全体のペースは握られる。4-4-2の布陣で、ずんずんと壁が押し出してくるようなエイバルに、ディフェンスラインが下がらざるを得ず、一方的に攻撃を浴びる時間帯もあった。
そのたびに流れを変えたのが、久保だった。前半30分過ぎには、自陣右サイドからドリブルを始め、1人をスピードで外して駆け上がると、2人を引きつけたあと、ゴール正面を横切るパス。ボールを受けた選手はシュートに持ち込むことはできなかったが、味方はひと息つけた。
そして40分過ぎ、やはり久保がボールを持って敵陣に突っ込む。一度倒された後、すぐに立ち上がって勝負を仕掛け、再び倒され、今度は完全なファウルだった。ドリブルのタッチ数が細かく、あえて相手に足を出させて、抜け出す。まるで、居合術のようなドリブルである。鞘に収めた刀を相手次第で抜き放ち、攻撃をいなし、二の太刀で斬り続けるのだ。
このFKを蹴ったダニ・ロドリゲスのキックがゴールネットを揺らし、マジョルカが先制する。
0-1とリードしたことで、後半のマジョルカは守る時間がさらに増えた。失点の予感は漂ったが、顔面ブロックなどでどうにか防ぐ。一丸となって守る中、リズムも生まれ、カウンターから決定機をいくつか作った。
冒頭に記した久保の得点は、その流れから生まれている。守りに入っても、出撃する意思を失わなかった結果だろう。”息の根を止める”という精神が、勝利につながったのだ。
久保は仕事を終え、81分にキ・ソンヨンと交代でベンチに下がった。アディショナルタイム、エイバルにCKから1点を返されるが、勝負は決していた。
スペイン大手スポーツ紙『アス』は、この試合で久保に0~3の4段階評価で、最高の3を与えている。「久保はプレーセンスを示した」と称賛。3は出場全選手中、ひとりだけだった。
敵地でマジョルカは3ポイントを獲得した。順位は降格圏内の18位のままだが、17位のセルタとは1ポイント差に縮めている。16位のエイバルとの差も2で、1試合でひっくり返る状況だ。
次節は本拠地ソン・モイスにバルセロナを迎え、連勝を狙う。
久保は”古巣”を相手に、その真価を見せつけられるか。1部残留に向けて、マジョルカの祈りを背負った戦いになる。