写真:中国香港の真剣なベンチワークの様子/提供:ittfworld中国香港は、世界卓球2018ハルムスタッド大会で、団体戦3位に入った、アジアの卓球強豪国の一つ。東京五輪で金メダル獲得を目指す日本女子チームにとっても、中国や韓国と同じく、手…

写真:中国香港の真剣なベンチワークの様子/提供:ittfworld

中国香港は、世界卓球2018ハルムスタッド大会で、団体戦3位に入った、アジアの卓球強豪国の一つ。東京五輪で金メダル獲得を目指す日本女子チームにとっても、中国や韓国と同じく、手強いライバルになることは間違いない。

今回はそんな中国香港女子チームの成績や名選手たちを紹介し、さらにその強さの理由に迫る。

アジアの強豪・中国香港

まずは中国香港女子の戦績を振り返る。世界卓球団体では、2004年ドーハ大会から2018年ハルムスタッド大会までの8大会で、2枚の銀メダルと4枚の銅メダルを獲得しており、表彰台の常連国として存在感を放っている。五輪団体戦でのメダル獲得はないものの、2020年は初のメダルを狙い、東京の地に降り立つに違いない。

中国香港の戦士たち

ここでは中国香港女子チームを牽引してきた選手たちを紹介する。

帖雅娜(ティエヤナ)




写真:帖雅娜/提供:ittfworld

まずは、主に2000年代〜2010年代前半に大活躍した中国香港の元エース、帖雅娜(ティエヤナ)。キャリア前半の2004年のアジアカップで優勝、アテネ五輪でも女子シングルスでベスト8に入った実力者だ。また、2006年のアジア競技大会女子シングルスで銀メダル、2011年の世界卓球ロッテルダム大会女子ダブルスで銅メダルを獲得するなど、長きに渡り、中国香港を引っ張ってきた。

また、卓球ファンの中には、2009年の世界卓球横浜大会シングルス2回戦での、石川佳純(当時世界ランキング99位)との激戦を思い出した方もいるだろう。

試合は、当時世界ランキング10位の帖雅娜がゲームカウント0-3の3-9とリードし、圧巻の実力を見せつけたものの、なんとそこから石川が逆転勝ちを収めた。この、石川の名が一気に世界に広まった熱戦は、卓球界屈指の逆転劇として、後世に語り継がれている。

杜凱琹(ドゥホイカン)




写真:杜凱琹/提供:ittfworld

続いては、中国香港の現エース、杜凱琹(ドゥホイカン)だ。現在、Tリーグの木下アビエル神奈川でプレーし、2020年1月の世界ランキングでは15位。2018年1月には自身最高の9位に輝くなど、世界トップレベルの実力を誇っている。女子選手には珍しくYGサーブを使用し、またボールの緩急、長さを絶妙に調節するクレイバーなプレーが持ち味の選手だ。

シングルスでは、2016年4月のリオ五輪アジア予選で、現世界女王の劉詩雯(リュウスーウェン・中国)をゲームカウント4-2で撃破した実績を持つ。

また、黄鎮廷(ウォンチュンティン・中国香港)と組む混合ダブルスでも実績豊富で、世界卓球では、2015年、2017年と2大会連続で銅メダルを獲得し、2019年のグランドファイナルでは第1シードとして出場し3位に輝いた。東京五輪でも、中国香港のエースとして、日本勢の前に立ちはだかってくるだろう。

李皓晴(リホチン)




写真:李皓晴/提供:ittfworld

続いては、現在Tリーグの日本ペイントマレッツでプレーする李皓晴(リホチン)だ。2018年の世界卓球団体戦の銅メダル獲得メンバーで、前中陣からのパワフルな両ハンドドライブを得意とする。

2018-2019シーズンのTリーグでは、石川佳純に勝利するなどシングルスで8勝(ヴィクトリーマッチ含む)をあげ、チームを支えた。

2020年1月の世界ランキングは40位とやや振るわないものの、2018年1月には世界ランキングを自己最高の12位まで上げており、日本にとっても要注意なプレイヤーの一人だ。

蘇慧音(スーワイヤムミニー)

 




写真:蘇慧音/提供:ittfworld

最後は、近年になってメキメキと実力をつけている中国香港の新星、蘇慧音(スーワイヤムミニー)だ。2020年1月の世界ランキングは28位と、中国香港の2番手につけている。

2018年の世界卓球団体戦ハルムスタッド大会では、準決勝で、なんとリオ五輪女王の丁寧(ディンニン・中国)にストレート勝ちを収めた。2019年の世界卓球ブダペスト大会では、女子シングルス4回戦で平野美宇との激戦の末に敗れたものの、日本の卓球ファンにも大きなインパクトを残した。2019年6月には、日本ペイントマレッツに加入することが発表され、そのハイレベルな両ハンドを日本で見ることができるようになった。

強さの秘密 積極的なTリーグ参戦

中国香港の強さの秘密は、卓球帝国・中国の存在抜きには語れない。中国では、トップで活躍するプロ選手が1000人前後存在し、その中から、代表を勝ち取るあまりにもシビアな争いが行われる。その中には、中国国内で厳しい代表争いを勝ち抜くよりも、中国香港やシンガポールに帰化し国籍を得て、その国の代表として活躍するという戦略をとる選手も多い。

ただし、香港に行く場合は、中国卓球協会の許可を必要としており、加えて中国卓球協会が指名した人物が香港の監督になるという事情もある。このことから、中国香港はしばしば中国の2軍チームとも呼ばれることもあった。

しかし、中国から帰化した選手ではなく、ジュニア時代から香港代表としてプレーしてきた杜凱琹や、蘇慧音の台頭などで、今や中国香港は、中国2軍とは到底言えぬ、アジアの強豪国となった。

2018年世界卓球団体戦ハルムスタッド大会の準決勝で、中国と対戦した際には、選手たちが気迫を前面に出して戦い、トップで蘇慧音が丁寧をストレートで破り、続く杜凱琹も朱雨玲(ジュユリン・中国)から2ゲームを奪い、卓球帝国をぐらつかせた。




写真:ガッツポーズをする杜凱琹/提供:ittfworld

また、その時の銅メダル獲得メンバーである、杜凱琹、李皓晴、蘇慧音の三人は、相次いでTリーグに参戦し、活躍を見せている。この世界的に見てもレベルの高いTリーグの中で、日々強豪に揉まれ、中国香港の三選手はさらに研鑽を重ね強くなろうとしているのだ。

東京五輪でも虎視眈々とメダル獲得を狙ってくるだろう。金メダル獲得を目指す日本チームにとっても、避けては通れない壁になりそうだ。

中国香港対日本 主な対戦成績

団体戦編

団体戦では、意外にも数年間対戦がなく、2014年の、世界卓球団体戦東京大会、準決勝まで遡る。

2014年 世界卓球団体戦 東京大会準決勝

○日本3-1 中国香港

石垣優香 0-3 ○李皓晴
13-15/10-12/2-11

○石川佳純 3-2 姜華君
8-11/11-8/6-11/11-9/11-6

○平野早矢香 3-2 呉穎嵐 
8-11/10-12/12-10/11-3/12-10 

○石川佳純 3-2 李皓晴
 11-4/8-11/10-12/11-9/11-7

この時の団体戦メンバーと東京五輪の団体戦メンバーは、日本もそして中国香港も大きく入れ替わっているため、東京五輪での参考にはなりづらい。

個人戦編

2019年 世界卓球個人戦 女子シングルス4回戦

石川佳純3-4 ○杜凱琹
6-11/6-11/11-7/9-11/11-4/11-6/9-11

2019年 ITTFワールドツアー スウェーデンオープン 女子ダブルス準決勝

○石川佳純/平野美宇 3-0 杜凱琹/李皓晴
11-6/11-7/11-8

2019年 世界卓球個人戦 女子シングルス4回戦

○平野美宇 4-2 蘇慧音
11-8/11-6/8-11/7-11/11-4/11-7

2019年ITTF ワールドツアー カタールオープン 女子シングルス ラウンド16

○伊藤美誠 4-0 杜凱琹
11-9/12-10/11-9/11-8

2019年度は主に日本代表が中国香港代表に勝利しているが決して油断は禁物だ。特に、エース杜凱琹は2019年の世界卓球個人戦で石川佳純を破っており、この選手にきっちり勝利することが対中国香港戦の一つの鍵になるだろう。

文:ラリーズ編集部