2019年「全米オープン」決勝で、ダニール・メドベージェフ(ロシア)がラファエル・ナダル(スペイン)相手にフルセットの死闘を演じた際、明らかになったことが1つあった。彼が、2020年の注目選手…

2019年「全米オープン」決勝で、ダニール・メドベージェフ(ロシア)がラファエル・ナダル(スペイン)相手にフルセットの死闘を演じた際、明らかになったことが1つあった。彼が、2020年の注目選手になるということだ。ウェブメディア Essentially Sportsが報じている。

2019年の彼は、6大会連続決勝進出、マスターズ1000大会での優勝2回、「全米オープン」準優勝、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)に対する勝利と大活躍だった。「Nitto ATPファイナルズ」にも初出場し、世界5位でシーズンを終えた。しかし、今シーズンはここまで、期待通りにいっていない。

シーズン初めは素晴らしいスタートを切ったメドベージェフ。「ATPカップ」では4勝1敗、ただ1つの敗戦はジョコビッチが相手だった。「全豪オープン」は4回戦で、絶好調だったスタン・ワウリンカ(スイス)を相手にフルセットの末、敗れた。

だが次に出場した「ATP500 ロッテルダム」では、初戦で当時世界104位だったバセック・ポスピショル(カナダ)にストレート負け。「ATP250 マルセイユ」ではヤニク・シンネル(イタリア)から何とかフルセットで1勝をあげたが、次戦ではジル・シモン(フランス)にベーグルを喰らって、またもストレートで敗れている。

明らかに、メドベージェフは不調である。彼のコーチであるジル・セルバラは、シンネル戦でのメドベージェフの姿勢が気に入らなかった。「第1セットで、ポイントを失うたびに泣き言を言っていた。ああいう態度を見るとイライラするんだ」とセルバラは語った。

メンタル面で、去年の北米ハードコートシーズンの時のような、特に「全米オープン」の時のような強さが見えない。24歳になったばかりのメドベージェフにはこういう時もあるだろうが、集中力を取り戻すことは最重要課題だ。シモン相手に第2セット0-6で落とした試合は、「無気力試合」とも囁かれている。

メドベージェフは優れたベースラインプレーヤーとして知られており、ワウリンカとの試合で見られたように、攻撃的にプレーしてくる選手を苦手とする傾向がある。ラリーの早い段階でウィナーを奪うと言うよりは、長いラリーで対戦相手を根負けさせる方が得意なのだ。

今年後半、いずれ「全米オープン」に向かう前に、ラリーの感覚を取り戻すためにクレーは良いサーフェスになるだろう。またネットプレー、サーブ、ボレーに関しては改善し、弱点を克服する必要がある。そうすれば、大きな試合で1つの戦略がうまくいかなかった時に、他の戦略に切り替えることも可能になる。

メドベージェフが再びメジャー大会、特に「全米オープン」で勝ち残ることができるようになるには、冷静さを取り戻し、第5セットでのメンタルを改善し(メジャー大会での第5セットの戦績は0勝6敗)、そしてより攻撃的なパターンを作り出すことが重要となるだろう。

ベースラインでとことん戦い抜くためには、ジョコビッチ並みの精度が必要であり、メドベージェフにはまだ高すぎる目標だ。

メドベージェフは世界ランキングで今も5位にいるが、「ATP1000 シンシナティ」(アメリカ・シンシナティ/8月16日~23日/ハードコート)「ATP1000 上海」(中国・上海/10月11日~18日/ハードコート)そして「全米オープン」(アメリカ・ニューヨーク/8月31日~9月13日/ハードコート)で防衛しなければならないポイントがほとんどだ。

メドベージェフが自分を立て直す時間は十分にある。2020年が振るわなかったからと言って彼が注目されなくなるわけではないが、良いシーズンを送ることができれば、彼の2019年の成功はまぐれではなかったと言うことができる。

(テニスデイリー編集部)

※写真は2020年「ATP500ロッテルダム」でのメドベージェフ

(Photo by Jan Kok/Soccrates/Getty Images)