2014年から4年間チアドラを務めた25歳の荒井なつりさん 色鮮やかな南国らしいデザインが目を引く。中日の春季キャンプが…
2014年から4年間チアドラを務めた25歳の荒井なつりさん
色鮮やかな南国らしいデザインが目を引く。中日の春季キャンプが行われた沖縄・北谷球場のグッズ売り場は、常にファンで賑わっていた。2月の1か月間で、売り上げは2年連続の1億円超え。フィーバーを巻き起こした松坂大輔投手が去った今季もなお好調を維持できたのは、ひとりの女性職員の奮闘も大きかった。
商品を手に取る客に、柔和な笑顔で対応する。「どうぞ見ていってくださーい!」。北谷球場の一角にあるグッズ売り場。キャンプ最終盤、売り上げが2年連続で1億円を超えると「本当、ひと安心です」と胸をなでおろした。中日の球団職員で、グッズ担当を担う25歳の荒井なつりさんは時折、ファンからサインを求められることもある。コアなドラゴンズファンにとっては、よく知られた存在。球団の公式パフォーマンスチーム「チアドラゴンズ」の元リーダーだ。
名古屋市出身で、3歳からダンスに没頭。中日ファンの父の影響もあって、ドラゴンズは身近な存在だった。大学在学中にチアドラのオーディションを受けて合格。2014年から4年間務め、最後の1年はリーダーの大役も担った。踊りを通して貢献したかったのは、ファン層の拡大。「私の友達なんかも、野球っておじさんのイメージを持っている子が多い。だから、もっと女性や子どもたちにも来てほしくて。ダンスがひとつのきっかけにならないかと思ってやっていました」
17年限りでチアドラを卒業。ダンスへの思いは強く、各方面のオーディションを受けたがなかなか吉報は届かなかった。そんな中、球団職員から声を掛けてもらったのがきっかけで心機一転、新たな挑戦を決意。球団職員となり、グッズ担当を任された。売り上げや在庫の管理をしたり、売り手と製造者の仲介役をしたりと、想像以上に地味な仕事に当初は戸惑うことも。「数字を扱うことが多くて……。ずっとパソコン打ってる感じです」と苦笑する。
昨春で体感した松坂フィーバー、ネームバリューではなく、グッズ自体に魅力を
昨春、初めて沖縄キャンプのグッズ販売を現場で体感。背番号18になった「平成の怪物」が巻き起こすフィーバーを目の当たりにして、危機感もあった。「スター選手のおかげで売れているなって」。選手のネームバリューばかりに頼るのではなく、グッズ自体に魅力を出せないか――。20年のキャンプに向け、半年以上前から準備に取り掛かった。
デザインを決定する役割を一手に担い、製造業者と話し合いを重ねた。何かにつけ地味なイメージがつきまとってきた中日球団。「グッズではハジけちゃっていいのかなと。デザイン勝負で、大胆に攻めてみました」。中でもハイビスカス柄を全体にあしらったユニホームは、色や柄の配置など何度も試行錯誤。完成直前になって「ちょっと色の出方が違う」と突き返すこだわりぶりだった。
「2020年」にちなんで2020枚限定で販売し、期間中に完売。同じハイビスカス柄を使ったクッションやキーホルダーも作り、目玉商品になった。購入者からは「いい意味でドラゴンズらしくない。名古屋に帰ってから自慢できる」と好評。一方で「ドラゴンズなんだから、青を基調とした色合いじゃないと」という声もあったが、賛否あったのはそれだけ存在感を示せた証。「いろんな声を来年に生かしたいです」と荒井さんは意気込む。
流行に敏感でいようと、SNSは小まめにチェック。他球団のグッズも参考にしながら、常にアンテナを立てている。ダンスからグッズへ、携わるものは変わっても、根底にある思いは今も変わらないという。「とにかく球場に野球を見に来てほしい。可愛いグッズがあれば、それを身につけて出かけようと思ってくれるかもしれませんから」。ドラゴンズとファンをつなぐ、架け橋でありたい。(小西亮 / Ryo Konishi)