レアル・マドリードとバルセロナがシーズンに2度、ホームとアウェーそれぞれの舞台で対戦するクラシコ。3月1日にサンティア…
レアル・マドリードとバルセロナがシーズンに2度、ホームとアウェーそれぞれの舞台で対戦するクラシコ。3月1日にサンティアゴ・ベルナベウで行なわれた今季2度目の対戦は、2-0でレアル・マドリードが勝利した。

レアル・マドリード戦は不発に終わったリオネル・メッシ(バルセロナ)
結果より気になるのは、この試合を見た視聴者の数だ。歴代のクラシコに比べて多かったのか、少なかったか。スペイン国内ではそれなりの視聴率を示しただろうが、日本ではどうだっただろうか。この伝統の一戦に、スペイン以外のファンはどれほど目を凝らしただろうか。
クラシコがこれまで世界的な関心を集めてきた理由は、レベルの高さに加え、全世界に向けてよりよいものを発信しようとする、当事者たちの旺盛な精神にあった。ただ勝つだけではダメだ。勝利と娯楽性をクルマの両輪のように追求すべしとは、ヨハン・クライフの言葉だが、試合になれば、その精神はレアル・マドリード側にも乗り移る。お互いにとって”絶対に負けられない戦い”でありながら、クラシコは超一流のエンターテインメントに昇華していった。スペインを代表する一戦というより、欧州サッカーを代表する一戦。サッカーの普及発展に大きく関わる、波及効果の高い試合だった。
キケ・セティエン監督は、そのクライフサッカーの信奉者だと言われる。バルサの監督に招聘された理由もそれと深い関係にあるのだろう。しかし、就任して10試合あまり、現在のバルサのサッカーにはそうした特別な匂いはしない。バルサらしくないとされた前任監督、エルネスト・バルベルデのサッカーから原点回帰を図ったとされるが、目指すべき軌道から逆に離れてしまっている印象だ。バルサはワクワク、ドキドキ感を年々、確実に喪失させている。
3月1日、バルサはレアル・マドリードに4-4-2で臨んだ。2トップはリオネル・メッシとアントワーヌ・グリーズマン。その下の中盤にアルトゥーロ・ビダル、アルトゥール、セルヒオ・ブスケッツ、フレンキー・デ・ヨングの4人が構えたが、この並びは中盤フラット型にしては真ん中に固まりすぎていた。強いて言えばボックス型に近い。その4-4-2はつまり、4-2-2-2と言えた。
その4日前、ナポリと戦ったチャンピオンズリーグ(CL)でも、バルサはこれに限りなく近い布陣で戦っている。かつて、ブラジルサッカー界に広く浸透していた布陣だ。日本では、加茂ジャパンやジーコジャパン時代に採用されていた。
サイドの選手がサイドバック(SB)しかいないので、相手にサイドを突かれると、4人が最終ラインにべったり並びやすい、概念的には守備的と言われる布陣だ。SBをいかに活かすか。SBが活躍した方が勝ちと言われる現代サッカーの流れからは外れた布陣で、プレッシングが浸透したブラジルでも、ほとんど見かけなくなっている。
この前時代的なサッカーで、キケ・セティエン監督はクラシコの大一番に臨んだ。少なくとも、全世界に向けていいサッカーを発信しようとの意気込みは伝わってこなかった。
いいサッカーをしても、勝たなければ何も始まらない--とよく言われるが、それはクライフの思想とは180度異なるものだ。今回のバルサはそのうえ試合にも敗れた。いいサッカーをすることもできなければ、試合に勝つこともできなかった。救いのないサッカーとはこのことである。
“メッシ頼みのサッカー”。ひと言でいえばそうなるが、肝心のリオネル・メッシの力は顕著に低下している。このクラシコでも2、3度あった決定機で、頼りない動きを見せていた。だがその事実を、声を大に指摘する人はいない。言い出しにくい話になっている。
その衰えが目立つメッシをどう活かすか。キケ・セティエンの発想の起点もそこにあるような気がしてならない。前時代的な4-2-2-2もその産物なのかもしれない。
レアル・マドリードは2017-18シーズン、CL3連覇を達成すると、クリスティアーノ・ロナウドをユベントスに放出。袂を分かった。バルサとの違いを見せた。だが、こちらもそこから先が見えてこない。エデン・アザールをケガで欠くこともあるが、これだという新機軸を打ち出せずにいる。
サッカーも決していいとは言えない。ヴィニシウス・ジュニオールが可能性を存分に発揮している左サイドはともかく、右は滞りが目立つ。右のサイドハーフは、イスコなのかフェデリコ・バルベルデなのか。前者が作る穴を後者が埋めているという感じだが、あえてバランスを崩してまでイスコを使う価値はあるのか。うまいけれど古典的。ゲームを決定づける力はないと見る。
このイスコの扱いは、ホームでの第1戦を1-2で落としたCL決勝トーナメント1回戦、マンチェスター・シティとのアウェー戦の見どころでもある。レアルは左のヴィニシウスからしか突破口が見いだせない、まさに片肺飛行の状態が続くようだと逆転は難しい。
レアル・マドリードは過去10シーズンで4回、CLを制している。一方のバルサは2回。つまり、合わせて6回欧州一に輝いている両者だが、その力がいまはない。かつてなら、両者が少しでも不甲斐ない戦いをすれば、アトレティコ・マドリード、バレンシア、デポルティーボ・ラ・コルーニャなど、取って変わるチームがいた。セビージャやビジャレアルも欧州で健闘した。
しかし、いまスペインリーグを見渡すと、レアル・マドリード(1位)、バルセロナ(2位)と、3位(セビージャ)以下との差は大きく(9ポイント)開いている。無風状態にある。リーグそのものに元気を感じないのだ。スペインリーグは欧州リーグランキングで、イングランドのプレミアリーグを抑えて首位の座を維持しているが、今季の成績いかんでは逆転を許す可能性がある。
CL決勝トーナメント1回戦は、そうした意味でも見逃せない戦いになる。先述のマンチェスター・シティ対レアル・マドリードに加え、リバプール対アトレティコもイングランド対スペインの直接対決となる。
番狂わせの主役を演じるか。期待がかかるのは、第1戦のホーム戦を1-0で制したアトレティコだ。スタメンに復帰しそうなジョアン・フェリックス、ジエゴ・コスタが、実力どおりのプレーを発揮すれば、リバプールにとって厳しい試合になるだろう。サッカーのあるべき姿を語ろうとすれば、現在はクラシコよりこちらの方が必見に値する一戦になるのではないか。期待したい。