福田正博 フットボール原論■欧州王者のリバプール入りした南野拓実。1月にザルツブルクから移籍後、少しずつ出場機会を得て、…

福田正博 フットボール原論

■欧州王者のリバプール入りした南野拓実。1月にザルツブルクから移籍後、少しずつ出場機会を得て、徐々に出場時間を伸ばしつつある。そんな南野の現状について、元日本代表の福田正博氏はどのように考えているのか。



リバプールでベンチスタートが続く南野拓実

 2月29日のプレミアリーグで首位リバプールが18位のワトフォードに0-3で完敗。今季リーグ28試合目で初黒星を喫して連勝は18でストップしたが、後半途中から出場した南野拓実にとっては久しぶりに出番を得る試合になった。また、FAカップ5回戦のチェルシー戦では先発し、リバプールは敗れたが南野はフル出場を果たした。

 1月にリバプールに加入した南野は、1月5日のFAカップ、エバートン戦でデビュー。リーグ戦は第24節ウォルバーハンプトン戦で途中出場し、2月1日のリーグ第25節サウサンプトン戦も途中出場したが、その後はFAカップ、チャンピオンズリーグ、リーグ戦と4試合連続で出番のない状況が続いていた。

 それだけにワトフォード戦とチェルシー戦では結果を残してアピールしたかったが、持ち味を存分に発揮できないまま終わった。

 移籍が決まった時に比べると、いまの南野のパフォーマンスにパッとしない印象を受ける人もいるかもしれない。しかし、彼の現状については、さほど心配していない。

 それはユルゲン・クロップ監督が、獲得した新戦力をチームにフィットさせていくマネジメントに長けているからだ。現在主力になっているナビ・ケイタをはじめ、多くの選手は少しずつ試合に出場しながら、チームの戦力になった実績がある。

 南野の場合、前所属のザルツブルクの戦い方がリバプールの戦術と共通点が多いとはいえ、リーグのレベルやチームメイトのクオリティーに差があるのも事実。これまでリバプールで南野が起用された試合では、ボールを受けたいタイミングでパスが出てこなかったり、南野がスペースに走り込んでも使われないケースもあった。

 クロップ監督にすれば、こうした多少のズレが生じることは獲得前から想定していたはずだ。リバプールは完成度の高いチームだけに、南野にベンチから試合を見させて学習させようとしている面もあるのだと思う。

 リーグ戦でベンチスタートが続く南野だが、彼のメンタル面についても心配はいらないだろう。ザルツブルク時代も、途中出場から結果を残しながらスタメンの座をつかんだ経験値があるからだ。

 ベンチ経験の乏しい選手だと、メンタルが崩れるケースもある。代表クラスの選手は幼少期からずっとチームの主力で、スタメンを外れることはほとんどないため、スタメンを勝ち取るためのアピールの仕方がわからないこともあるからだ。

 もちろん、南野は与えられた出場機会のなかで、少ないチャンスを確実にモノにしなければならない。リバプールのような世界有数のクラブは、常に”期待の新星”が加入してくる。新戦力が台頭すれば、競争はさらに激しくなっていくだろう。

「チーム内競争」とよく言われるが、たとえば中堅クラブの場合、選手層に限りがあるため、能力の高い選手はミスが続いても起用せざるを得ないケースが現実にはある。しかし、世界中から優秀な選手が集まる欧州のビッグクラブでは、チャンスで確実に結果を残せなければ、代わりの選手はいくらでもいる。

 また、すでに結果を残している信頼度の高い選手のチャンスは増えるが、結果を出していない加入直後の選手には好機でパスが回ってくる回数は少ない。これはどのチームにも言えることだが、リバプールなら、ロベルト・フィルミーノ、サディオ・マネ、モハメド・サラーの3選手がゴール前にいたら、南野よりも彼らにボールが渡るということだ。

 南野に訪れるシュート機会は少なく、訪れる場合は予期せぬ形になる可能性も高い。それでもしっかりと決める準備をして、チームメイトからの信頼を高めていってもらいたい。

 こうしたことは南野に限ったことではない。欧州にいる日本人選手の何人かは、年が明けてから出場機会に恵まれないでいるが、とくに攻撃的なポジションの選手は、ゴールという結果を出して苦境を打開してほしい。

 そうしたなか、久保建英(マジョルカ)は、チャンスをモノにしてスタメンの座を取り戻した。

 久保は昨年末まで先発出場が続いていたが、久保がスタメンから外れた年明けの試合でチームが勝利。貴重な勝ち点を手にすると、その後久保はベンチスタートになり、4戦連続して途中出場だった。それでも、しっかりと存在感を発揮して攻撃でチャンスをつくり、マジョルカに決定力のあるFWがいればゴールが決まっていてもおかしくないプレーを見せていた。

 それが評価されてベティス戦でスタメンに復帰した久保は、1ゴール1アシストをマーク。アウェーで勝ち点1を手にする原動力になった。続くヘタフェ戦でもスタメンに起用されたが、チームはホームで敗戦。ここからさらに結果を残して力を証明しなければいけない。降格圏に沈むチームの救世主になる活躍ができれば、彼自身の評価はさらに高まるはずだ。

 欧州各国のリーグはこれから佳境を迎える。彼らのほかに、日本人選手がひとりでも多くスタメンとして活躍してくれることを期待している。