2020年女子ツアー「期待の新星」吉田優利インタビュー(後編) 昨年の全英女子オープンを制して、一躍女子ゴルフ界のニューヒロインとなった渋野日向子ら「黄金世代」に続く有望な世代として、大きな注目を集めているのが、今季から多くの選手がツアーデ…

2020年女子ツアー「期待の新星」
吉田優利インタビュー(後編)

 昨年の全英女子オープンを制して、一躍女子ゴルフ界のニューヒロインとなった渋野日向子ら「黄金世代」に続く有望な世代として、大きな注目を集めているのが、今季から多くの選手がツアーデビューを飾る「プラチナ世代」である。

 アマチュア時代にはナショナルチームで活躍し、将来はアメリカツアー参戦を夢見る吉田優利(19歳)も、そのひとりだ。ゴルフに対して真摯に向き合い、取材に対しても明朗快活に受け答えする彼女の、素顔とプライベートな一面に迫る--。

--昨年のワールドレディスチャンピオンシップ・サロンパスカップで優勝を争った渋野選手がその後、全英女子オープンで優勝。吉田選手にとっても、大きな刺激になったのではないですか。

「勇気あるショットに感動しました。(最終日の3番で)ダボを打ってしまうシーンもあったんですけど、日向子さんは、そういう怒りを原動力に変えられるんだと思いましたね。最後のウイニングパットも、強気で。

 日向子さんのふたつ前の組で、優勝を争っていたリゼット・サラスさん(アメリカ)が(最終18番で)短い距離のバーディーパットを外して、一歩抜け出すことができませんでしたよね。そうした”ツキ”も、日向子さんからあふれ出ているような気がしました」

--「運も実力の内」という言葉もあります。

「私は人生において、”徳を積む”ことが大事だと思っていて。たとえば、まるで車が走っていない道路の信号でも、赤信号なら青信号になるまでしっかり待ちます。赤信号で渡ってしまって事故が起こらなかったとしても、それは車が来なかったという”運”を使っているだけのような気がするんです。

 信号は必ず守るとか、ゴミが落ちていたら拾うとか、当たり前のことではあるけれど、日頃から”徳”を積んでいれば、大事な場面で、あるいは失敗したくない場面で、何かしら生きてくるんじゃないか、というようなことを私は信じているんです。

 そうした心がけが、勝負時に”運”を呼び込めるかどうかはわからないし、”徳”を積んだからといって、ゴルフで勝てるかどうかはわかりません。だけど、人間として大事だと思います。

 私は、今社会に放り出されても、(普通に)生活できるような人でいたい。『ゴルフはすごいけど、銀行には行けないよね?』とか言われるような人間にはなりたくないです(笑)」

--ところで、10歳でゴルフを始めたきっかけは、ゴルフ好きなお父さんの影響だったと聞いています。英才教育だったのですか。

「まったく違います。父は、私に干渉してこないし、ゴルフの指導もプロのコーチに任せっきりでした」

--プロゴルファーというと、幼いうちからゴルフを始めている印象が強い分、10歳で始めたというのは、かなりレアな感じがします。それでいて、ゴルフを始めて2年後の小学校6年生の時には、関東小学生大会で優勝しました。

「たしかに、10歳でゴルフを始めるのは遅いですよね。ただ、最初からプロのコーチに教わって、いわゆる”遊び”でゴルフをやった時期がないんです。

 関東小学生大会で優勝したのは、自分でもびっくりで。その経験によって、より『ゴルフをきちんとやろう』と思いましたね。それで、ゴルフ部のある中学校に行って、高校2年生か3年生ぐらいから『プロになりたい』という気持ちが強くなっていきました」

--その間、ゴルフが嫌になったことはありませんか。

「ないですね。私はゴルフが大好きで、ゴルフに携わっている時間が好き。いつしか、生活の一部になっていたことにも気づかないぐらい、夢中になっていました」

--さて、プロ1年目のシーズンの目標をうかがう前に、少しプライベートな話を聞かせてください。好きな食べ物は何でしょう。

「リンゴ飴です。(縁日の)屋台とか売っているのではなく、専門店の。リンゴ飴のためだけに、新宿の専門店まで買いに行きます。嫌いな食べ物は、パクチーかな。タイとかに行くと、すべて抜いてもらいますね」

--ご自身で、料理はされますか。

「しますけど、得意なのはスイーツ作りですね。自分ではあまり食べずに、友だちとかにあげることが多いです」

--”勝負メシ”はありますか。

「”勝負メシ”って、大事な試合前に必ず食べるような料理とかですか? それなら、ないです。ジンクスとか、ゲン担ぎとか、私は信じないんです。それができない環境にあった時に、自分が不安になるのが嫌なので」

--”徳”は積むけど、”ゲン担ぎ”はしないんですね。

「私って、性格の振り幅がすごくて。ドライなところと、ものすごくこだわる部分が両極端なんです」

--今、ハマっているものはありますか、

「You Tubeですね。大食いのチャンネルを見ます。自分が食事制限で食べられない分、ユーチューバーに食べてもらっています(笑)」

--オフの日はどう過ごしていますか。

「アウトドア派なので、買い物に行ったり、ご飯を食べに行ったり。洋服、化粧品……欲しいと思ったものは、すぐに買ってしまうタイプかな。迷いはしません」

--趣味はありますか。

「細かい作業が得意で、写真立てをデコレーションしてキラキラにしたり、箱を作ったり。6時間ぶっ通しで作業したりしますね。作る、工作という作業が好きなんだと思います。超女子系のDIYが趣味ですね」

--好きな音楽、よく聞くアーティストはいますか。

「Ed Sheeran(エド・シーラン)。毎日、聴いています。外国人のアーティストです」

--好きなタレント、俳優さんはいますか。

「坂口健太郎さん」

--では、好きな男性のタイプは。

「超清楚系、ですかね。爽やかな人が好きですね。それこそ、坂口健太郎さんみたいな。チャライとか、イケイケな人は、苦手です。きちんと挨拶することが格好悪いと思っているような人も、ちょっと……。好みではありません」

--好きな言葉、座右の銘などはありますか。

「『聡明』ですかね。まず自分が聡明でありたいし、物事をきちんと理解できる聡明さというのは大事だし、人はそれぞれ考え方が違うんだ、ということを納得するのも、その人の聡明さだと思うので」

--将来の夢は。

「引退後は、新しい仕事につけたらいいなと思います。ゴルフ関係かもしれないですけど、何かしら新しいことを見つけたい」

--アメリカ女子ツアーへの参戦ではないのですか。

「それは、目標ですかね。ゴルファーとしての最終地点というか、みんなが目標にするところだと思います。それに、ナショナルチームに入っていた選手というのは、世界各国の大会に出場して、海外の選手からたくさんの刺激を受けて、ゴルフをやってきているので、なおさら(その思いが強い)かもしれません。行けるかどうかはわからないですけど、『行ける実力がある』と思った時に行きたいです」

--では、最後に今季の目標を教えてください。

「シード権の獲得が、一番の目標です。この大きな目標を達成するために、そこから逆算して、リランキング突破だったり、上位争いだったり、小さな目標や目の前の目標を達成していきたいです。それができれば、自ずとそこ(シード獲得)につながるんじゃないかなと思っています」

--威勢のいい”勝利宣言”はできませんか。

「やっぱり、まだ自分が(プロで)どれだけできるかわからないし、自分に優勝できる実力があるとは、まだ思わないですから。(現在指導を受ける)辻村(明志)コーチからも『甘い世界ではない』と言われています。

 私も、それは重々承知していて、毎週、毎週、優勝を狙いにいくのではなく、シーズンを戦うなかで、もしチャンスが目の前に訪れたら、優勝を狙いにいく。そういうスタンスで臨みたいです。

 全試合に出場するつもりもなくて、3~4試合に1試合は休むことになると思います。アマチュアは、毎週のように試合はありませんよね? それなのに急に、プロになった1年目から、毎週ゴルフの試合に出場していたら、疲れてしまって、パフォーマンスが下がると思うんです。

『休まなければ、賞金を稼げる』と指摘されたら、そのとおりなんですけど、しっかり休みをとって、気持ちと身体を整えて、筋肉も維持して、(試合に休んだ時間は)トレーニングに充てたいです」

--賞金の使い道などは考えていますか。

「大好きなゴルフで、好成績を残した結果がお金に換わる。そういう考え方でいたい。正直、お金を稼いだことがないから、わからないんですけど、お金をいかに自分に有効活用できるか。そのために、税金の勉強もしました(笑)」

(おわり)

吉田優利(よしだ・ゆうり)
2000年4月17日生まれ。千葉県出身。身長158cm。血液型O型。2018年に日本ジュニアと日本女子アマを制して脚光を浴びる。ナショナルチームでも活躍し、各大会で好成績を残してきた。昨年、プロテストに合格し、QTでも20位という成績を残して、今季からツアー本格参戦を果たす。