~第25回目~ 加藤夕貴(かとう・ゆき)さん バスケットボール選手→カフェ経営志望 取材・文/斎藤寿子 ※スポーツ庁委託事業「スポーツキャリアサポート戦略における{アスリートと企業等とのマッチング支援}」の取材にご協力いただきました。…

~第25回目~
加藤夕貴(かとう・ゆき)さん
バスケットボール選手→カフェ経営志望

取材・文/斎藤寿子

※スポーツ庁委託事業「スポーツキャリアサポート戦略における{アスリートと企業等とのマッチング支援}」の取材にご協力いただきました。

大学卒業後、富士通レッドウェーブのメンバーとして3シーズン戦った加藤夕貴さん。2017年に“バスケットボール人生”を終え、そのまま富士通の社員として働く選択肢も用意されていた。だが加藤さんは退職し、自身で考えた道を歩んでいく。

「当初は引退したら、富士通の社員になるという気持ちでした。でも、考えてみると3年間バスケ漬けの生活をさせてもらい“会社に残って何ができるか?”と。だったら自分の好きな道を一からスタートさせたかったんです」

2017年3月富士通を退職。その3カ月後、英語力向上のためカナダへ。半年間、語学学校に通い、その後ワーキングホリデーのビザに切り替え、1年間、現地で語学学校の事務やカフェの店員など、アルバイト生活をした。

「当時はまだはっきりと“何をやりたいか”は決まっていませんでした。ただ、選手時代から英語を使えるようになりたいとは思っていたので、まずは海外に行こうと。海外生活をすれば、必ず価値観も変わって、何か新しい発見があるという狙いがありました」

実際、1年半の海外生活で得られたものは大きかった。

「日本に住んでいる時は、受け身のことが多かったのが、海外ではすべて自分から動かなければなりませんでした。そんな新しい生活は意外にも不安はなく、とても楽しむことができました」

加えて、カナダの生活で芽生えたのが”コーヒーへの関心”。そこで、加藤さんが次のステップとして白羽の矢を立てたのが、オーストラリア。英語圏であり、世界有数のコーヒー文化があるからだ。 2019年1月にカナダから帰国した加藤さんは、約1年間日本のゲストハウスでアルバイトをし、英語を使いながら貯蓄。そして11月にオーストラリアへと向かった。現在は、地元のカフェで働きながら、英語のスキルを磨き、コーヒーの専門知識を高めている 。

加藤さんが抱いている将来の目標は、帰国後に自分自身でカフェを経営すること。2020年中に帰国を予定しており、その後宮崎県日南市に住居を構える予定で、そこで開業を目指す。というのも、彼女は日南市の総合型スポーツクラブ設立の準備委員会のメンバーに名を連ねており、オーストラリアに旅立つ前に日南市を訪れ、帰国後のプランを話し合ったという。

現役引退後、様々なことに挑戦をしながら、見つけた目標に向かって突き進んでいる加藤さんは、自らの体験を通してこう現役時代を振り返る。

「選手生命は限られているので、本気で打ち込むことはとても大事です。ただ、現役生活を終えてからの方が人生は長い。ぼんやりとでもいいので、現役の時から『自分は何が好きなのか?』『どんなことに興味を持っているのか?』ということを考えておくことも必要です。そうすれば、何がしたいか具体的に決まっていなくても、行動に移しやすいんじゃないかなと思うんです」

まだ安住の地を見つけられたわけではない。安定した収入もない。

それでも、加藤さんは好きなことを仕事にしようとアクティブに動いている日々に充実感を覚えている。そして、行動に移してきたからこそ得られた“多くの縁”に感謝の気持ちを抱いている。

(プロフィール)
加藤夕貴(かとう・ゆき)
1992年2月生まれ、東京都出身。国立第一中学校から明星学園高等学校を経て、専修大学に進学。4年生時には、ユニバーシアードに出場するなど活躍を見せる。卒業後、富士通に入社し富士通レッドウェーブのメンバーに。3シーズン戦い、2017年に引退。現在はカフェの経営を目指し、オーストラリアのカフェ店で働きながら勉強をしている。

※データは2020年3月3日時点