--どのような気持ちでサンチャゴ・ベルナベウを去るのか? クラシコに2-0で敗れた試合後、バルセロナのDFジェラール・ピケはその質問にこう答えている。「失望だ。(レアル・マドリードからは)うまくいっていない、という感じが伝わってきていたから…

--どのような気持ちでサンチャゴ・ベルナベウを去るのか?

 クラシコに2-0で敗れた試合後、バルセロナのDFジェラール・ピケはその質問にこう答えている。

「失望だ。(レアル・マドリードからは)うまくいっていない、という感じが伝わってきていたから、いい結果を生み出せると思っていた。ベルナベウで対戦してきたなかで、前半の彼らは最低の出来だった。しかし、自分たちがコントロールを失ってしまって、裏に簡単にボールを出され、いつ失点しても不思議でない状況を作られてしまった」

 このコメントが、今回のクラシコを端的に表している。レアル・マドリードはなぜ勝利し、バルサはなぜ敗北したのか--。



クラシコで先制ゴールを決めたヴィニシウス・ジュニオール(レアル・マドリード)

 キケ・セティエン監督が率いるバルサは、ひとつの対策を講じて敵地に乗り込んでいる。モデルは、先週のチャンピオンズリーグでレアル・マドリードを下したマンチェスター・シティだ。布陣は4-3-3ではなく4-4-2。右にアルトゥーロ・ビダル、左にフレンキー・デ・ヨングを配置し、敵の攻め手となるサイドバックの蓋をした。中盤もダブルボランチでリスクマネジメント。敵のカウンターを避け、味方のカウンター成功させるための布陣だ。

 一方、ジネディーヌ・ジダン監督が指揮するレアル・マドリードは、シティ戦の教訓からか、前から激しい守備はせず、じっくり守って攻める戦い方を選択していた。同じく変則的な4-4-2で、カウンターが主体となる。右のフェデリコ・バルベルデがインサイドにポジションを取りながら、右サイドバックのダニエル・カルバハルの攻め上がりを引き出した。

「ボールをあと追いする戦い方だと、選手は消耗してしまう」

 ジダンはそう説明しているが、我慢強く守る戦いを選び、体力を温存した。

 その結果、前半はバルサがペースを握った。レアル・マドリードが自陣まで引いたことで、センターバックの2人がボールを持って、狙ったパスを打ち込むことができた。カウンターを発動しようとする相手を素早く潰し、そこを攻撃の起点に。サムエル・ウムティティの長いパスをリオネル・メッシが受けてシュートしたシーンなど、3度は決定機を作り出した。

 レアル・マドリードは完全に守勢に回りながら、スコアレスで前半を折り返せた。その点、あらゆるシュートを封じたGKティボー・クルトワが前半のマン・オブ・ザ・マッチと言える。そのセービングが潮目になった。

 後半、レアル・マドリードは2トップがバルサのセンターバックに圧力をかけ、攻撃を分断。これで次第に流れを取り戻した。55分、イスコがエリア外から打った一撃はGKマルク・アンドレ・テア・シュテーゲンに防がれたが、反撃の狼煙になった。なかでもカルバハルが躍動し、イスコのヘディングシュートをお膳立てし、カリム・ベンゼマの絶好機も作り出した。白い波が押し寄せる迫力があった。

「マドリードのボールを奪い返す力は承知していて、それを上回れるはずだった。しかし、ボールを失うたびに自信をなくして……。試合ではよくあることだが、我々がナーバスになり、相手に勢いを与えてしまった。一番残念なのは、作り出した多くのチャンスを決めきれなかったことだ」

 セティエン監督はそう振り返った。勝利の算段はあっただろう。69分、守備で貢献していたビダルに代え、スピードのある新加入のFWマルティン・ブライスワイトを投入する。シティが後半、ラヒーム・スターリングを投入し、レアル・マドリードを奈落の底に突き落とした戦いを模したのか。

 交代直後、ブライスワイトは右サイドを鮮やかに抜け出し、決定機を得た。しかし、クルトワとの1対1を決められない。スターリングにはなれなかった。その1分後、ブライスワイトの守備の脆さが出る。ヴィニシウス・ジュニオールに完全に抜け出されてしまい、最後はシュートがピケに当たって、ニアに打ち込まれた。

 試合を決めたのは、ヴィニシウスだろう。ボールを持った時のテクニックは入団当初から評価されていたが、オフザボールの動きの質と決定力の低さで、一時は同じブラジル代表で年下のロドリゴ・ゴエスより序列が下がった。それがこの日は、老獪に裏を取り、決勝点をたたき出した。

「ヴィニシウスは今日のような重要な試合でゴールするのに値するプレーだった。とてもうれしく思っている」

 ジダンはそう言って、抜擢したヴィニシウスのプレーを称賛した。

 フランス人指揮官は策士ではない。しかし、選手マネジメントは神がかったものがあり、選手の成長を促し、勝利を呼び込む。アディショナルタイムに2点目を決めたマリアーノ・ディアスには、これまでほとんど出場機会を与えていなかったが、戦う準備ができたと判断したら起用し、結果を出させた--。その循環がジダンの求心力を自然と高めるのだ。

2-0で勝利したレアル・マドリードは、バルサと逆転で首位に立った。勝ち点差は1で、現時点ではそこまで順位に意味はない。それでも、クラシコの勝敗には順位を超えた重みがあるのも事実だ。