リーガ2位のレアル・マドリードは3月1日、首位バルセロナとの大一番(クラシコ)を迎えるが、エデン・アザール負傷により、ジネディーヌ・ジダン監督は大幅なプラン変更を余儀なくされている。



得点力不足状態のレアル・マドリード。バルセロナとのクラシコでは、ベンゼマ(写真左)の爆発が必要となる

 約3カ月間負傷離脱していたアザールが、後半戦のビッグゲームとなるチャンピオンズリーグ(CL)の決勝トーナメントやクラシコに照準を合わせて回復してきたのは、マドリディスタにとって朗報だった。

 アザールは、クリスティアーノ・ロナウドに替わる新たなスターとして、昨年夏に1億ユーロ(約120億円)で迎えられたが、開幕戦のセルタ戦前日に左足大腿直筋を負傷し、シーズン最初の3試合を欠場していた。その後は試合出場を重ねて調子を上げていたが、11月26日のCLパリ・サンジェルマン戦で右足首亀裂骨折。約3カ月もの戦線離脱を余儀なくされた。

 そんな状況のなか、シーズン序盤に苦しんだチームは守備の再構築に成功し、徐々に調子を上げていった。今年に入りリーガ最少失点をキープしてバルセロナから首位を奪還すると、スーペルコパではバレンシア、アトレティコ・マドリードを撃破して優勝。国王杯でレアル・ソシエダに敗れるまで公式戦21試合連続無敗をキープした。

 迎えた第24節セルタ戦、アザールは戦列復帰を果たすと、3カ月間のブランクを微塵も感じさせず、セルヒオ・ラモスが決めたPKを誘発して、チームトップのパフォーマンスを披露したのである。

 ところが、つづく復帰2戦目のレバンテ戦で右足腓骨の亀裂骨折のケガを負ってしまった。復帰まで2~3カ月かかると見られており、今季ほぼ絶望。チームはこの試合でリーガ16試合ぶりの敗北を喫してバルセロナに首位の座を譲り、2位でクラシコに臨むことになった。さらに、マンチェスター・シティとのCLラウンド16第1戦でもまさかの逆転負けを喫している。

 これまでの堅固な守備から一転、ここ5試合連続失点はもちろん不安要素だが、それ以上に得点力不足が懸念されている。最近はセルタと引き分け、レバンテ、マンチェスター・シティに敗れ、3試合未勝利だ。

 セルヒオ・ラモスはレバンテ戦後、「シーズンを通じてこれまで、誰も僕たちを得点力不足なんて言っていなかった。ここ数試合の悪い結果でそれを話すのはひどいよ。僕たちはチャンスをつくっている」と苛立ちながら反論。だが、得点力不足は今に始まったことではなく、シーズン開幕当初から指摘されていた。

 原因は、得点をカリム・ベンゼマひとりに頼ってきたことが挙げられるだろう。6000万ユーロ(約72億円)で入団したルカ・ヨビッチがその金額に見合った活躍をできず、ガレス・ベイルはケガもあり安定性を欠き、ロドリゴは一時期の存在感が薄れている。

 その中でベンゼマはゴールを決め続けてきたが、今年に入り急ブレーキ。それを補う選手が今のチームには存在しないのだ。そのためアザール復帰が攻撃陣の立て直しに向けて大きな光となるはずだったが、その願いは脆くも砕け散った。

 アザールを再び失った今、クラシコに向けて攻撃の鍵を握るのは、今現在、攻撃陣で最も好調な選手であるヴィニシウス・ジュニオールとなる。シーズン序盤はアザールとポジションが被ったため右サイドで起用されて調子を落とし、控えや招集外になることが多かった。さらにブラジルの後輩のロドリゴとのポジション争いに敗れた時期もあった。

 完全に自信を失い、これまで数多くの選手が陥ってきたように、レアル・マドリードの重圧に押しつぶされ、このまま終わる気配さえ見せていた。しかしヴィニシウスは完全復活を果たす。決定力の低さは相変わらずだが、左サイドでの突破力は昨シーズン、サンティアゴ・ソラーリ指揮下で大抜擢された時よりも凄みを増している。

 一時期はボールロスト数の多さで、サンティアゴ・ベルナベウのサポーターからもブーイングを受けていたが、途中出場で流れを変えた22節のアトレティコ・マドリード戦、そして敗れはしたもののイスコの先制点をアシストしたCLマンチェスター・シティ戦などでも証明しているように、今やチームで一番のチャンスメーカーとなり、観衆からとくに拍手を受ける選手のひとりとなっている。

 そしてバルセロナに勝つためには、ベンゼマの復活が必要だ。クリスティアーノ・ロナウド退団後、チームのエースであることを自覚し得点を量産してきたが、2020年に入ると、出場した公式戦10試合でわずか2ゴールと不振に陥っている。

 それでも、マドリードダービーで決勝点を記録したような勝負強さもある。さらにCLマンチェスター・シティ戦ではレアル・マドリードでのCL100試合目を戦い(通算52ゴール)、クラブの歴史に名を刻んでいる。

 ベンゼマはマンチェスター・シティ戦前、今季が自己のベストシーズンかと問われ、「キャリアの絶頂期かまったくわからない。なぜなら人は常に完璧を目指すものだからね。僕は非常に高いレベルに到達しているが、もっと上に行くチャンスがあるのはわかっているので、より上を目指している」と自分の力に限界がないことを強調した。

 ジダンはシーズン開幕当初、ベイル、ベンゼマ、アザールという強力な3トップで戦うと予想されていた。しかし度重なるアザールの戦線離脱により、新たなオプションを次々に試してきことが、皮肉にもチームの戦い方の幅を広げるきっかけとなっている。

 ジダンがこれまでに試してきたシステムのうち、クラシコに向けていくつかのオプションがある。

 1つはここ5試合で採用している4-3-3。成績は1勝1分3敗と振るわないが、これまでの流れを見る限り、ジダンが大幅に変えるとは考えにくい。前線ではベンゼマ、ヴィニシウスがスタメン当確で、残り1枠をイスコとベイルが争うことになる。マンチェスター・シティ戦のパフォーマンスを見る限り、右サイドを主戦場としてプレーし先制点を決めたイスコが有利か。

 もう1つはダイヤモンド型の中盤の4-4-2。この場合、イスコがトップ下に入ってゲームメイクに専念できる。一方、ヴィニシウスは2トップの一角として、より中央でのプレーを求められるため、左サイドで発揮している突破力が半減する恐れがある。

 またジダンには、スーペルコパやマドリードダービーで採用したカゼミーロ、フェデリコ・バルベルデ、ルカ・モドリッチ、トニ・クロース、イスコのMF5枚を同時起用しての4-5-1というオプションもある。この場合はヴィニシウスがベンチスタートとなるが、ヴィニシウスをスタメンから外すのは得策ではないだろう。

 果たしてジダンがどのようなスタメンを組んで、今季2度目のクラシコに臨むのか。大きな注目が集まる。