チャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント1回戦。レアル・マドリードは第1戦でマンチェスター・シティに1-2で逆転負けを喫している。しかし、ベルギー代表GKティボー・クルトワのビッグセーブがなかったら、大敗もあり得ただろう。レアル・マド…
チャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント1回戦。レアル・マドリードは第1戦でマンチェスター・シティに1-2で逆転負けを喫している。しかし、ベルギー代表GKティボー・クルトワのビッグセーブがなかったら、大敗もあり得ただろう。レアル・マドリードは、「守護神クルトワに救われた」とも言える。
マンチェスター・シティ戦では再三のセーブでレアル・マドリードを救ったティボー・クルトワ
スペイン大手スポーツ紙『マルカ』が、スポーツ分析会社のデータを引用し、「最も旬のゴールキーパーは?」という記事を掲載した。目を引くのは、クルトワのセービング率だろう。今シーズンのリーグ戦、エリア外からの”被弾”はなんとゼロ。ゴールキーピング技術の高さを示している。
「ペナルティエリアの外からは打たせていい」
有名サッカー漫画にそんな台詞を吐くGKがいたが、クルトワは作り話を地で行くということか。エリア内での反応も俊敏で、セービング率は71.1%。単純な数字では、リーガ・エスパニョーラでトップだ。
しかし数字には表われない価値がGKの本質とも言える。
CL決勝トーナメント1回戦。バルセロナは第1戦でナポリと1-1と引き分けている。この試合のベストプレーヤーは、エースのリオネル・メッシでも、得点者のアントワーヌ・グリーズマンでもなかった。ドイツ代表GKマルク・アンドレ・テア・シュテーゲンで決まりだろう。
前半、テア・シュテーゲンはロレンツォ・インシーニェのカットインからのシュートを浴びている。ディフェンダーに隠れ、処理は難しかったが、確実に防いだ。後半には、神がかったセービングを見せる。セルヒオ・ブスケッツが自陣でパスミス、カウンターを浴び、エリア内のホセ・カジェホンがフリーでパスを受けた。するとテア・シュテーゲンは瞬時に距離を縮め、シュートをブロック。ボールに寄せる速度は出色だった。
さらに言えば、テア・シュテーゲンはリベロのようにボールをつないで、攻撃の起点になっていた。縦パスを入れ、一気にマークを外す。そのレベルに達したGKは存在しない。
テア・シュテーゲンは「世界最高GK」のひとりだろう。
ところが、数値では「平凡なGK」となる。エリア外セービング率は83.3%。これは悪い数字ではないが、クルトワには及ばない。そしてエリア内セービング率は54%と、かなり落ちるのだ。
バルサはそもそも攻撃している時間帯が長い。高いラインで攻めることで、どうしてもカウンターを受けやすくなる。フリーで角度もあるシュートに晒される機会が多くなるのだ。これが、テア・シュテーゲンの数字が低いからくりか。
ナポリ戦はその最たる例だった。前半30分の失点シーン。ジュニオール・フィルポが自陣でボールを失い、そのまま裏返しにされる。ゴール正面でボールを受けたドリース・メルテンスは、フリーで狙いすまして蹴り込んでいる。エリアのわずか外からだったが、GKとしてはノーチャンスだった。
数字は、ときに嘘をつく。
今シーズン、不調が伝えられるスペイン代表GKケパ・アリサバラガ(チェルシー)は、数字にも現状が如実に出ている。エリア外からのセービング率は70%、エリア内に関しては50%。トップレベルのGKとしては及第点とは言えない。
しかし失点の多さは、チームとしての守備整備にも理由がある。事実、CL決勝トーナメント1回戦のバイエルン戦では、ホームにもかかわらず大量3失点。ケパに代わって出場したアルゼンチン代表GKウィルフレード・カバジェロは手も足も出なかった。
「シュートを打たせないのが、真に一流のGK」
それが至高のGKが達するべき境地と言われる。ディフェンスと密に連係し、コースを消し、できるだけシュートを打たせない。数字には出ないセービング率だ。
CL決勝トーナメント1回戦でアトレティコ・マドリードのスロベニア代表GKヤン・オブラクは、リバプールに決定的シュートをほとんど打たせず、見事に完封した。華やかなセービングはなかった。カバーに入ったディフェンスの顔面ブロックに「救われた」とも言えるシーンもあった。しかしディフェンスと連係し、正しいポジションを取り、体勢を作って相手をけん制し、どのシュートも”外れさせた”のである。
数字はひとつの目安で、すべてを語るわけではないということだ。
ちなみに、エリア外阻止率が100%のGKは、クルトワのほかに3人いる。ブラジル代表GKアリソン(リバプール)、ポーランド代表ヴォイチェフ・シュチェスニー(ユベントス)、スペイン人GKウナイ・シモン(アスレティック・ビルバオ)だ。そしてアリソンはエリア内阻止率も76.9%で、クルトワをも凌いで欧州の有力トップリーグのナンバー1である。