京都から電車とバスを乗り継ぎ約8時間。かつて、坂本龍馬と共に新時代へ夢をはせた中岡慎太郎の銅像が建つ室戸岬のほど近くで、同じく夢を追う若武者たちが汗を流していた。2018年秋以来、3季ぶりのリーグ制覇を目指す硬式野球部が高知県立室戸広域公園…

京都から電車とバスを乗り継ぎ約8時間。かつて、坂本龍馬と共に新時代へ夢をはせた中岡慎太郎の銅像が建つ室戸岬のほど近くで、同じく夢を追う若武者たちが汗を流していた。2018年秋以来、3季ぶりのリーグ制覇を目指す硬式野球部が高知県立室戸広域公園野球場を拠点に春季キャンプを行っている。筆者らアスレチック野球班は3日間キャンプに同行し、王座奪還に燃える野球部員たちの熱い模様をお届けする。

2月24日(月)
昨日と同じく快晴に見舞われた室戸市。高知工科大学を呼んでの今年初となる練習試合が行われた。キャンプ恒例となっているスピーチを終え、キャンプでの成果をアピールすべく気合の入った面持ちで入念なアップが行われた。

練習前恒例となっているスピーチ
試合に向け入念なアップが行われた

1試合目

高工大 200 200 001 = 5

京産大 100 000 001 = 2

野手成績
守備選手名(出身高校)打数安打打点四死球三振 
(7)黒岩(高知商)42001 
8遠藤秀(滝川第二)00010 
(4)木村(浪速)54000 
(8)7田井中(福知山成美)31121 
(9)川岸(京都成章)51101 
(D)楠田(福知山成美)40011 
(3)小林(愛知)30001 
(6)徳永(紀央館)41001 
(5)梶谷(社)42000 
R毛利(八幡浜)      
2松尾(京都学園)      
(2)久木崎(京都成章)30000 
H5羽田(近江)10000 
投手成績
選手名(出身高校)投球回被安打奪三振与四死球失点
山口(済美)32212
上野(乙訓)13112
保澤(大津商)31310
船槻(北稜)24201

試合展開

今年初練習試合の先発を任されたのは山口。昨年は主に中継ぎとして登板し、今年は投手陣の中心選手としての活躍が期待される新2回生だ。ところが初回、先頭打者の初球を左中間に運ばれ2塁打を許すと、二死1.2塁から左越の2点適時二塁打を許し早々に先制を許してしまう。その後は安定した投球で安打を許さず、3イニングを投げ被安打2、4奪三振と完璧な投球を披露し状態の良さを見せただけに立ち上がりの2失点がもったいない投球となった。

2点を許したものの上々の仕上がりを見せた山口

打線は初回、ケガから復帰し活躍が期待されている黒岩が中前にはじき返しチャンスメイクすると、木村、田井中と打線がつながり早くも1点を返す。さらに川岸の安打で無死満塁と逆転のチャンスを作るもここは後続が続かず、1点にとどまった。

長いリハビリを終え、ここからのレギュラー奪取を狙う黒岩

4回、新4年の上野がマウンドに上がるも3本の安打を浴び2点を奪われる。打線もチャンスこそ作るもののあと一本が出ず得点を奪うことができない。そんな中アピールに成功したのが保澤だ。5回からマウンドに上がるとストレートとスライダーを武器にいきなりの2者連続三振。6回の先頭打者に安打を許すも次打者を併殺に仕留めるなど「落ち着きが出てきた」と勝村監督も称賛した。3イニングを投げ被安打1、3奪三振で無失点に抑え込みリーグ戦に向け頼もしい投手が出てきた。

完璧な投球を見せた保澤

野手で存在感を示したのが木村だ。初回に「一番手ごたえがあった」と本人も語る左前安打を放つと、その後も安打が止まらず4安打の大活躍。2試合目も途中出場で安打を放つなどこの日5安打と大暴れした。どこでも守れる守備力に定評のある木村だがこの日は打撃面でのアピールに成功。彼の
存在により内野手争いはさらに熾烈なものへとなりそうだ。

5安打と存在感を見せつけた木村

試合は2対5で敗戦。11安打を放つなどチャンスは作るもののあと一本が出ず、勝負強さが課題となった。

2試合目

京産大 010 005 000 = 6
高工大 000 000 000 = 0

野手成績
守備選手名(出身高校)打数安打打点四死球三振
(7)山本(鳥取城北)21221
8遠藤秀(滝川第二)10001
(4)宇都宮(宇和島東)31010
(D)材木(綾部)51101
(5)笹原(福知山成美)30020
(9)7桧垣(奈良大附)52000
(3)中村(市和歌山)20011
3徳永(紀央館)10000
(7)佐賀野(高知)21001
9松下(京都成章)10000
(2)大山(関大北陽)11110
H2楠田(福知山成美)10010
(4)森廣(泉)10011
4古川(境)11200
4木村(浪速)11000
投手成績
選手名(出身高校)投球回被安打奪三振与四死球失点
紀本(富岡西)31300
坂恵(舞子)10100
石川(刈谷)31210
藤本(京都学園)20420

試合展開

2試合目の先発は藤本に続く貴重な左腕として活躍が期待されている新4回生の紀本。立ち上がり、先頭打者を遊ゴロに打ち取ると、2番3番を連続三振に抑え最高のスタートを決める。2回以降も威力のある直球を中心に相手打線を圧倒。唯一安打で出塁を許した走者も次打者で併殺に仕留めるなど落ち着きのある投球で3回を打者9人3奪三振に抑える完璧な投球を見せた。

威力ある直球で三振の山を築く紀本

打線は2回に先頭の中村が四球で出塁。佐賀野が犠打で2塁に進めると、8番大山が二遊間を破る中前安打を放ち1点を先制する。さらに6回、一死から中村が振り逃げで出塁すると、左前、四球で満塁とし9番古川の左前安打で二人が生還、さらに続く山本の右前、3番材木の中前でこの回一挙5得点。上級生と下級生で打線がかみ合いビッグイニングを作った。

先制打を放つ大山

投手陣は二番手坂恵、三番手石川共に安定感のある投球で得点を許さず、最上級生の意地を見せつける。そして8回には満を持して左のエース藤本が登板。四死球を与えるなど制球に苦しむ場面も見られたが、直球と変化球の抜群のコンビネーションで相手打線を寄せ付けず2回を投げ無安打4奪三振の圧巻の投球を見せた。

左のエースの風格を見せつけた藤本

試合は6対0で勝利。紀本、大山ら上級生から材木、古川などの下級生までそれぞれの持ち味を発揮した試合となった。

コメント

保澤投手
ー今日の投球をふりかえって
前のピッチャーのリズムが悪い部分があったので、代わった回は自分のペースを崩さずに自分のリズムで投げるということを心がけていた。6回、7回はどんどんストライクをとっていってテンポ良くリズム良く投げることを意識していた。ある程度思っていた場所に投げ込むことができていなので、調子は良かったかなと思う。
ーこの冬に課題にしていたことは
ピッチングでは軸足でしっかり立って体重を乗せていくということをこの冬取り組んできた。その成果としてストレートの威力であったり、スライダーの変化がしっかり安定した精度や球威で投げれたかなと思う。この冬でそこの部分が成長できた。
ー今シーズンの自分の役割や目指すべき部分は
先発は藤本や北山がリーグ戦では投げていくことになると思うので、自分は与えられたポジションでしっかり投げることと、リリーフが多いと思うので、前のピッチャーや後のピッチャーに良い流れでつなげられるようなピッチングをしていきたい。
ー最後の1年どういったものにしていきたいか
1年から3年までは全然試合に出れていなかった。4回生でラストチャンスというところもあるのでなんとかチームとしても個人としても結果が残せれば良いなと思います。

木村内野手
ー2試合で5安打。調子が良さそうだが自分で振り返ってみてどうか
キャンプなんで自然とバットの振る回数が増える。その成果でバットが触れているかなという感じです。
ーバッティングに関してこの冬意識していたことは
低めの変化球を見極めれるように意識して練習していた。今日は状況に適したバッティングができたかなと思う。
ー5安打の中で特に手応えを感じた打席は
1打席目の左前です。打った球は外のストレート。普段だったらバントの状況で打てのサインが出た。走者を進めるのが大前提の中で逆方向に打って進めれたというのが良かったと思う。
ー内野手争いも激しくなるが、自分の役割はどういったところになるか
色んなところを守らせてもらっているので、出たところでしっかり守って仕事をしたいと思っています。
ーまだキャンプは続いていくが、どういった準備をして最後の1年に臨みたいか
去年は最後怪我をしてしまい最後までできなかったので、今年はまず怪我をしないように気をつけたい。まだやったところのないポジションもあるので、そこを形に持っていけるようにしたいです。(シーズンの目標は)全国に出るということだけです。

紀本投手
ー今日の2試合目のピッチングについて
今年最初のオープン戦ということで、少し緊張もあったが少しは自分の冬取りくんで来たことの成果というか、力が出せてよかったかなという印象。まだまだ構えたところに投げれなかったり、ストライクとボールがはっきりしていなかったりする点がよくなかったなと反省している。
ー冬取り組んできたこととは
走り込みだったり、ウェイトをしたりコントロールをよくすることに重点を置いたバランスメニューを行っていた。
ーキャンプ中特に注意していたこと
試合があるということで、そこで結果を出さなければいけないという気持ち
ー4回生ということで、ラストにかける思い
僕自身も大学に入ってから神宮(全国大会)を1回も経験していないので、リーグ優勝して、全国大会に行って、その中で自分もしっかり活躍して、優勝に貢献できるように。4回生としてしっかりピッチャー(全体)を引っ張っていけたらと思う。
ーリーグ戦を通じての気持ち
1回生の頃からワンポイントや中継ぎ、抑えとして投げてきた。今回のリーグ戦でも、もしかしたら先発する機会はないかもしれないが、そういった所でもしっかり自分の与えられた場面で抑えられるようにしたい。3月にも関東遠征があるし、そういう所で少しずつ結果を出していけるように頑張りたいと思う。
ー課題点
構えたところには投げれているが、投げられなかった時は抜け球のような感じ。そこを修正しないと、強いところには通用しない。もっとやれることをどんどんやっていかないと、という思いはある。