3月1日の東京マラソンでは、東京五輪男子マラソン代表の最後の1枠が争われる。コースはスタートから序盤は下り基調で、その後は平坦と記録が出やすいだけに、世界のトップランナーがタイムを狙うハイレベルな大会になる。そして、日本からの有力選手もこぞってエントリーしている。



MGCでは、中村匠吾(写真右)服部勇馬(左)に敗れ3位だった大迫傑(中央)

 そこで代表権を獲得する条件は、日本記録を上回る2時間05分49秒以内を出すこと。マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)3位で、ファイナルチャレンジで突破者がいなければ代表になる権利を持っている、日本記録(2時間05分50秒)保持者の大迫傑(ナイキ)と、2時間06分11秒の設楽悠太(ホンダ)、2時間06分54秒の井上大仁(MHPS)が出場する、注目のレースだ。

 井上は、MGCで最下位の27位に終わったものの、今年1月1日の全国実業団駅伝では順調な走りを見せていた。

 チームは1区で32位と出遅れ、エース区間の4区を走る井上は25位でタスキを受けとると、序盤は「そんなに落ち着いてはいなくて、なかなかハマりにくいというのはありました。でもそこで焦らず体を動かしていこうという気持ちで走っていた」と言う走り。そこから後半になるにつれて走りはよくなっていき、順位を8位まで上げ、区間記録を22秒更新する1時間03分57秒で走り切った。

「去年と比べて、後半にすごくいい走りができたのが収穫でした。走り込みを一回しっかりできてきて、地力がついたからだと思います。ハイペースにも怖がらずこれだけ走れたのはよかったと思います」

 MGCファイナルチャレンジの3大会では、日本記録を上回らなければならないため、第1戦の福岡国際マラソンでも多くの選手が前半からハイペースな走りに挑戦した。また、厚底シューズの影響もあるだろうが、駅伝などでは区間新記録や大会記録が続出している。そんな状況を井上はこう見ている。

「みんな気持ちの面で(スピードに対する)リミッターが外れてきているというのが大きいのではないかと思う。みんながどんどん記録を出すようになると思うので、怖がらずにやりたいですね。日本記録を目指すにとどまらず、4分台、5分台にチャレンジしようと思います。そのうえで東京マラソンの優勝にも挑戦していこうという気持ちです。これまでも4分台や5分台は絶対にというか、そこに必ず至るという気持ちでやってきているので、そこに挑戦し続けていくことに変わりないです」

 こう話していた井上は、ニュージーランド合宿を経て東京マラソンに狙いを定めている。

 一方、設楽はいつものようにレースをこなしながら調整している。元日の実業団駅伝では井上と同じ4区を走り、1時間04分36秒の区間3位。9位でタスキを受け取り、順位を4位まで上げた。

 その後、宮崎市内で合宿を公開した時には「2時間4分台で走らないと東京五輪を走る資格はないと思う。2時間5分台なら日本記録でも五輪代表は辞退すると思う」と強気な発言が伝えられた。

 それは、早く世界のトップランナーたちに追いつきたいという思いから出た言葉だろう。有言実行となれば、東京マラソンでは2時間4分台を狙って走ってくる。

 設楽は2月2日の丸亀ハーフで、10kmまでを5km14分13秒のハイペースで引っ張って1時間00分49秒で6位になると、2月16日の金栗記念熊日30kmロードレースでは、激しい雨が降るなか序盤から積極的な走りを見せて1時間29分47秒で優勝と、着々と準備を進めている。

 大迫も、東京マラソンへ向けた調整の一環で出場した1月24日のドバイマラソンでは、最初の5kmを14分44秒で入り、ハーフ通過は1時間02分43秒。25kmは1時間14分18秒と、5km14分52秒平均のペースで25kmまで走ったところで棄権した。

 さらに大迫は、東京マラソンに出場することを決めた理由を「今まで出場したマラソンは全部3位なので、どこかで新しい自分を見つけたいと思った。東京マラソンはいいチャンスなるなと。マラソンで初めての勝利を得てみたい」と語っていたように、今回のレースで勝つことへのこだわりを見せている。

 新型コロナウイルスの影響で一般参加はなく、エリートだけの出走となる今回の東京マラソン。大会側が設定するペースメーカーは3段階で、2時間3分切を想定した1km2分55秒、2時間05分53秒想定の1km2分59秒、2時間06分35秒想定の1km3分00秒に分かれている。

 実際のペースメイクは、その時の気象条件やレース展開などによって変わるため絶対とは言えないが、2時間4分台を狙う設楽は、最初は先頭集団の流れに乗る可能性が高い。井上も2時間4分台まで意識していると言うだけに、その流れに乗るだろう。そこで大迫がどういうレースをするかが注目だが、「勝つことにチャレンジしたい」と言う以上、ついていくことが考えられる。

 そうして5km14分40秒台のペースになる集団が形成できれば、2時間4分台も見えてくる。五輪代表を狙うためには、日本人トップという条件もあり、ほかの選手も3人がいる集団につくはずだ。

 状況に合わせてペースを判断して、どう戦うかがポイントになるが、いずれにしてもハイペースのサバイバルレースになる公算が高い東京マラソン。誰が生き残って五輪代表を手にするのか。好記録が出やすいだけに、今回の東京マラソンは例年よりもさらに注目度が高いレースになる。