「よかったですよ! ローテーションに食い込めるところまできていると思います」 2月19日のロッテとの練習試合で実戦初登板…

「よかったですよ! ローテーションに食い込めるところまできていると思います」

 2月19日のロッテとの練習試合で実戦初登板した、DeNAベイスターズドラフト2位のルーキー左腕・坂本裕哉に対する評価を問うと、川村丈夫投手コーチは食い気味にこう答えた。



入団1年目から活躍が期待されるDeNAの坂本

「ルーキーだから、慌てて制球が定まらなくなったりするかなと思っていましたが、そんなこともなかった。むしろ、実際にシーズンの1軍マウンドで投げているイメージが少し見えました。あとは実戦のなかで、プロの打者に対してどこに投げたらまずいのか、打ち取れるのかが分かってくればと思います」

 福岡県西区”横浜”にある玄洋中から福岡大大濠高を経て、昨秋に立命館大からベイスターズに入団した坂本は、ここまでただひとり、ルーキーとして1軍キャンプに残っている。

 キャンプ初日となった2月1日、新戦力について問われたアレックス・ラミレス監督も、最初に坂本の名前を挙げた。

「坂本が印象的だった。初日で最速143kmを出していたし、コントロールも悪くなかった。3月になれば147、148kmくらい出せるだろう」

 ラミレス監督は、もう少し球速が伸びれば得意球のチェンジアップやスライダーといった変化球が生きてくると分析。その期待に応えるように、実戦初登板となった2月19日のロッテ戦では2回無失点で、球速は最速148kmを記録した。

 坂本自身は、「思ったよりも真っ直ぐでも変化球でも空振りが取れたのがよかったです」と手応えを口にした一方で、逆球を簡単にヒットにされたことを反省点として挙げた。打たれた2本のヒットは、いずれも芯で捉えられてはいないものの、捕手・伊藤光の要求とは異なる場所に投じられたものだった。

 加えて、「逆球になっても球威で押し込めるくらいになりたい」とも語っている。坂本は豪速球を投げ込むのではなく、丁寧なコントロールで攻めていくタイプ。それでもプロで長いイニングを投げるためには、投げミスをカバーするための力が必要になるはずだ。

 近年のベイスターズのドラフトを振り返ると、大卒ピッチャーを上位指名する傾向にある。2014年1位・山崎康晃(亜細亜大)、同年2位・石田健大(法政大)、2015年1位・今永昇太(駒澤大)、2016年1位・濱口遥大(神奈川大)、2017年1位・東克樹(立命館大)、2018年1位・上茶谷大河(東洋大)……彼らはルーキーイヤーからしっかりと1軍で結果を残してきた。そのうちの今永、石田、濱口、東、の4人は坂本と同じ左投手だ。

 プロ1年目に山崎と東は新人王を、濱口は10勝(6敗)を挙げて新人特別賞を獲得。ルーキーイヤー8勝(9敗)の今永は、新人王投票で阪神・髙山俊に次ぐ2位の得票を集め、石田は2勝6敗ながら防御率2.89をマークしている。さらに、昨年の上茶谷は先発ローテーションに定着して7勝(6敗)を挙げた。

 川村コーチは、ベイスターズの上位指名の大卒投手が1年目から活躍できるのは、「同じ立場だった先輩がいるから」と話す。コーチから言うよりも選手間で会話をし、勉強したほうが吸収しやすいということだ。

 その言葉を体現するように、坂本は今キャンプで主に今永と行動を共にし、会話する場面を多く見かける。グラウンド上はもちろんのこと、ホテルでは今永が部屋に持ち込んだ古い野球ゲームで対戦して楽しんでいる。同じ福岡出身でもある今永曰く、坂本は「しゃべりやすい性格のいい後輩」だという。

「坂本からは、1年目の時のこと、この時期の体調のことなど、いろいろ聞かれるので自分の経験を伝えています。でも細かく教わるのではなく、自分の好きなようにやったらいいとも言っています。今アドバイスを送っても、それが彼にとって正解かは分かりません。自分の好きなようにやって、失敗もして、いろんな経験をすればいいと思います」

 そんな今永の言葉はドライにも聞こえるが、あくまで今永は、プレーや練習に取り組む姿勢を見せつつ「聞かれれば答える」というスタンス。自分で考えて答えを出させる坂本への接し方は、今永自身のプロでの経験を踏まえた先輩なりの優しさなのだろう。

 坂本にとっては、一昨年に11勝(5敗)を挙げて新人王に輝いた東も立命館大の先輩であり、目標とするひとりだ。東からは今年の新人合同自主トレが始まる際に、「焦らず飛ばしすぎないように」とアドバイスを受けた。

 近年ベイスターズの大卒ルーキー、特に左投手が活躍していることについては、坂本自身も「もちろん意識するところはある」という。

「東さんが新人王を獲ったり、活躍する姿も見ていますし、周りの人からはそういう目で見られると思う。その流れを止めないように、1年目から結果を残せるように頑張りたいです」

 昨季のベイスターズはセ・リーグ2位になったものの、チーム防御率は3.93でリーグ5位に沈んだ。先発陣の勝ち星も、今永の13勝(7敗)が最多で、次点は上茶谷の7勝。濱口は2完封ながら6勝(5敗)、東も7試合に登板して4勝(2敗)に終わっている。

 今年は「筒香の抜けた穴をどう埋めるか」という点に目が行きがちだが、1年間ローテーションを守り、今永に続く勝ち頭が現れるかも、優勝に向けて大きなポイントになるだろう。その一角を担うはずの東は、2月20日に左肘のトミージョン手術を受け、復帰は来季以降になることが決まっており、ますます坂本への期待は高まっている。

 今永、石田、濱口、東と続く、ベイスターズ大卒ルーキー左腕の系譜--。坂本がそれを受け継いだ時、神奈川と福岡の”横浜”の街は歓喜に包まれる。