J1第1節、柏レイソルがホームに北海道コンサドーレ札幌を迎えた試合は、4-2で柏が勝利を収めた。 立ち上がりから互いが激しくボールを奪い合い、積極的に相手ゴールへ向かう試合は、いくらか大味な部分はあったにせよ、両者が90分間休まずパン…

 J1第1節、柏レイソルがホームに北海道コンサドーレ札幌を迎えた試合は、4-2で柏が勝利を収めた。

 立ち上がりから互いが激しくボールを奪い合い、積極的に相手ゴールへ向かう試合は、いくらか大味な部分はあったにせよ、両者が90分間休まずパンチを繰り出し、なかなか見応えのある打ち合いとなった。

 スコアの推移だけを見れば、前半13分に先制点を奪った柏が、その後も順調に追加点を重ね、後半20分までに4点のリードを奪うという一方的な展開で試合は進んだ。札幌の2ゴールはその後に生まれたものであり、すでに勝負が決したあとの”焼石に水”だったようにも映る。

 しかし、スコアからだけでは、試合の本質は見えてこない。

 その証拠に、公式記録によれば、この試合のシュート数は柏の24本に対し、札幌も20本。両チームともに、驚異の20本に到達している。しかも、ただ本数を稼いでいただけではなく、札幌は柏に見劣らないだけの決定機も作り出した。

 柏の攻撃が、DFラインの背後へ抜け出すFWオルンガのスピードを生かしたシンプルなものだった一方で、札幌はピッチの幅を広く使ってボールを動かし、サイドを崩してからのクロスを中心に決定機を作っていた。優れた個人能力に頼らず、チームとして攻撃の形を作るという意味では、敗れた札幌が勝利した柏を上回っていたと言ってもいい。

「負けはしたが、試合を振り返ると、決して悪い試合ではなかったと思っている」

 試合後、札幌を率いるミハイロ・ペトロヴィッチ監督が口にした言葉も、決して強がりには聞こえなかった。



4失点を喫して敗れるも

「悪い試合ではなかった」と語る、札幌のペトロヴィッチ監督

 とりわけ効果的に機能していたのが、左サイドの攻撃。中央、あるいは右サイド寄りでパスをつなぎ、そこから左アウトサイドに開いて待つMF菅大輝へと展開し、縦に仕掛ける。そんな攻撃で、とくに前半は何度も決定機を作り出した。

 MF鈴木武蔵も、「菅から来たボールに対して、僕と(FWの)ジェイとの関係のなかで、クロスに入るタイミングや入る場所が取れていた」と振り返る。

 前半20分までに0-2とされたあと、前半のうちに3、4度訪れたチャンスを、札幌がひとつでも決めていれば、その後の展開はまったく異なるものになっていた可能性が十分にある。鈴木も、「いい攻撃をしているだけじゃなくて、最後にしっかり決め切るところでは、前線の選手として責任がある」と語るのも無理はない。

 とはいえ、札幌にとって少々不運だったのは、この日の気象条件である。

 試合会場となった三協フロンテア柏スタジアムは、バックスタンド左からメインスタンド右方向へ、ピッチを斜めに横切るように強い風が吹いていた。高く上がったボールであれば、肉眼でも風にボールが流されているのがわかるほどだった。

 その結果、絶妙なクロスがゴール前に入っても、ヘディングのタイミングが合わず、クロスに合わせられないシーンが続けざまに起きたのである。

 もちろん、条件は両チームにとって同じである。札幌が攻めているときにだけ、突然風が吹いたわけではない。

 それでも、ペトロヴィッチ監督も、「我々のように、相手の背後へのボールやサイドチェンジを多用するチームにとっては、今日のような風がプレーに影響が出るのは間違いない」と嘆いたように、比較的手数をかけずに相手ゴールへ向かう柏の攻撃のほうが、強風の影響を受けにくかったのは確かだろう。

 ただし、勝負ということを考えれば、札幌はいい攻撃でリズムをつかみかける時間が何度もあっただけに、あまりに簡単に失点を重ねたことは反省しなければならない。

「前半に0-2でリードされる展開にはなったが、得点は十分に取れるという思いはあったし、同点、逆転まで持っていける自信はあった」

 そう振り返るペトロヴィッチ監督が悔やむのは、後半の展開である。

「0-2で後半に入り、選手はチャンスを作ってくれていたと思うが、また先に3点目を取られてしまった。自分たちも決定機を迎えるが、それを決め切れないなかで、相手に追加点を許してしまう展開だった」

 互角以上の内容で打ち合っているにもかかわらず、気がつけば4点のビハインド。これでは、試合が難しくなるのも当然だ。GKとDFラインのちょっとした連係で防げる失点もあっただけに、修正は必要だ。

 しかし、だからといって、カウンターを恐れて腰が引けてしまったのでは、札幌の持ち味は薄れてしまう。鈴木もまた、「カウンターやロングボール1本だったり、簡単な失点が続いてしまった」と悔やみつつも、こう語る。

「今日の試合をネガティブに考えるんじゃなくて、『自分たちはやれる』って自信を持ってやらないと。ミシャさんもいつも言っているとおり、『恐れることが一番の敵』。これを続けていくことが大事だし、続けていくなかで攻撃のクオリティーが上がれば、得点が増えてカウンターを食らうこともなくなってくると思う。そこは、自分たちを信じてやっていきたい」

 スコアだけを見れば、拙守が足を引っ張った試合である。こんなに簡単に、しかも試合序盤で失点したのでは、勝利することなどおぼつかない。まずは失点を減らすべき。そんな見方は一理ある。

 しかしその一方で、札幌は自分たちのサッカーの魅力を十分に示してもいた。失点が減るに越したことはないが、「3、4点取れるチャンスがあったのに、2点で終わってしまったのが悔しい。(チャンスで)決めちゃえば、カウンター(で失点すること)は絶対にないし」(鈴木)という発想は、決して失ってはいけないものだ。

 J1でもそうは見られない激しい打ち合い、点の取り合いは、いかに柏の攻撃陣が強力だとしても、それだけでは成立しない。これまで、Jリーグで数々の実績を残してきた名将に率いられ、札幌は今季も、面白いサッカーを見せてくれそうである。