2月14~16日の3日間にわたって、丸善インテックアリーナ大阪では「国際親善女子車いすバスケットボール大阪大会」が行なわれた。今大会には女子日本代表のほか、世界選手権2位のイギリス、同5位のカナダの3カ国が参加し、総当たりで2試合ずつを行…

 2月14~16日の3日間にわたって、丸善インテックアリーナ大阪では「国際親善女子車いすバスケットボール大阪大会」が行なわれた。今大会には女子日本代表のほか、世界選手権2位のイギリス、同5位のカナダの3カ国が参加し、総当たりで2試合ずつを行なった。



キャプテンとしてチームをけん引した藤井郁美

 結果は4戦全勝のカナダが優勝し、2勝2敗のイギリスが準優勝。日本は4戦全敗で3位となった。今大会で明確となった日本の課題、強豪相手に得られた手応えは何だったのか。半年後の東京パラリンピックでメダル獲得を目指すチームの現状を追った。

「勝てた試合だっただけに、悔しいというか、やりきれない感じ。なぜ勝てないんだろう、という思いで、いっぱいです」

 最終戦を終えたあとのインタビューで、チーム最年少の柳本あまねが語った言葉が、チームの気持ちを代表しているようだった。

 イギリスは、1996年アトランタから6大会連続でパラリンピックに出場し、前回のリオでは4位と初のメダルまであと一歩に迫った。2018年世界選手権、2019年ヨーロッパ選手権では女王オランダに次ぐ2位と、近年は目覚ましい躍進を遂げている。

 カナダは、92年バルセロナから2000年シドニーと3大会連続でパラリンピック金メダルを獲得したこともある古豪。04年アテネでの銅メダルを最後に、表彰台には上がっていないが、昨年のアメリカ選手権で優勝し、練習試合とはいえオランダを破るなど、急速に力をつけてきている。

 日本は、08年北京を最後に2大会連続でパラリンピック出場を逃し、2018年世界選手権にもアジアオセアニア予選で敗れ、本戦には出場していない。2014年世界選手権以来、”世界一決定戦”のステージに上がることさえできていない日本にとって、イギリスとカナダはまさに格上の相手と言っていい。

 チームとしての経験値に違いはあるものの、今大会、日本は相手に”胸を借りる”つもりだったわけではない。狙っていたのは、善戦ではなく、ただ一つ勝利のみ。岩佐義明HCも「どちらかに勝たないと、東京パラリンピックでのメダルはない」と語っていた。しかし、結果は全敗。本番を半年後に控えたチームにとって、厳しい現実を突き付けられたかたちとなった。

 決して、日本が停滞や後退をしているわけではない。むしろ、いくつもの成長の跡が見てとれた。戦略の”引き出し”は確実に増えている。

 今大会の数日前、日本はイギリスと練習試合を行なっている。お互いに選手も戦略もいろいろとトライした試合で、一概に結果だけで判断することはできない。だが、その試合でイギリスのエース、エイミー・コンロイにペイントエリア内から大量得点を奪われたことは、同じように高さで日本を上回る海外チームに対しても課題となることは明らかだった。

 しかし、大会初戦で再び行なわれたイギリス戦で、日本はしっかりとその対策を練っていた。イギリスがほとんどの主力を温存した第1Q、日本はマークする相手を瞬時に替えたり、お互いにヘルプにいく連係の取れた好守備で相手をインサイドから締め出した。

 さらに、エースのコンロイを徹底マーク。そのため、コンロイは10分間無得点に終わり、イギリスは思うように得点を伸ばすことができなかった。

 すると第2Q、イギリスは主力をそろえてきた。それでも日本は流れを引き渡さなかった。たとえミスマッチの状況でも、簡単にはインサイドを割らせない。しっかりと相手の動きを止め、さらに相手の車いすをアウトサイドに押し出し、よりタフな状況に追い込んだ。結局、前半でコンロイを3得点に抑えたことで、日本はイギリスとしっかりと競り合った。結果は44-49。負けはしたものの、しっかりと修正してみせた。

 一方オフェンス面では大会を通してシュート成功率が上がらず、苦戦を強いられたものの、それでも随所に日本らしいプレーもあった。たとえば、カナダとの第2戦、日本は第1Qで13-10とリードしたが、13点中、藤井郁美のフリースロー1本を除いて12点はローポインターである萩野真世と北間優衣が挙げた得点だった。藤井、網本麻里のハイポインター陣のアウトサイドからのミドルシュートを警戒し、カナダの守備は3Pラインまで広く張り出してきていた。そのために広く空いたインサイドをローポインター2人がスクリーンプレーで果敢に攻めたのだ。

 これに対して岩佐HCはこう語った。

「相手が郁美や麻里を警戒してジャンプアップして出てくるのはわかっていました。そういう時にこそ、ローポインターの選手がピック&ロールで得点するというのは日本の強み。しっかりとシュートを決めてくれたローポインターはもちろんですが、相手を引き付けて、いいパスを供給したハイポインターが仕事をしてくれたなと」

 さらに第2Qに入ると、インサイドをケアしようとする相手に対し、今度は藤井、網本が競い合うかのようにミドルシュートを高確率で決めて、得点を重ね、イギリスに連勝して勢いに乗るカナダをリードして試合を折り返した。

 そのほか、イギリスとの第2戦では第4Q序盤に1点差に迫るなど、世界トップクラスの2カ国相手に、日本は勝負するステージにまで来ていることを示した。しかし、善戦止まりや逆転負けで、最も欲している勝利には一度も届かなかった。

 たしかに日本は着実に成長している。だが、海外勢もまた強化を図ってきている。その中で、近年は世界のステージにさえ上がっていない日本が、追いつくことはそう簡単なことではない。それでも、世界との距離は確実に縮まってきている。

 では、残り半年で世界と勝負するステージから、勝利を挙げるステージへとチームを引き上げるためには、どうすればいいのか。答えは明確だ。シュート力の向上に尽きる。4試合のフィールドゴール成功率を見れば、それは一目瞭然だ。

<イギリス第1戦> 日本32.3% イギリス34.4%
<カナダ第1戦> 日本32.1% カナダ50%
<イギリス第2戦> 日本41.7% イギリス51.5%
<カナダ第2戦> 日本39.1% カナダ46.6%

 岩佐HCも、全4試合を通して「シュートの精度」を課題に掲げた。

「シュートまでもっていくことはできている。あとは、フィニッシュの精度を高めていくこと。ハードなゲーム展開の中、勝負どころで決め切る選手になっていかないといけない。そういう力は持っているが、波があるので、そこをもう一度精度を高めていきたい」

 本番まで残り半年。「半年しかない」と捉えるのか。「半年ある」と捉えるのか。いずれにしても時間は待ってはくれない。残された時間をどう過ごすか。東京パラリンピックでのメダルは、その先にある。