「今のシューズはすごくいい」とキプチョゲ。まずはロンドンでベストを尽くす

 現マラソン世界記録保持者(2時間01分39秒)で、非公式ながら2時間台を切る記録(1時間59分40秒)も持つエリウド・キプチョゲ(ケニア)。テンポよく軽やかに、そして笑顔すら浮かべて走るその姿は、まさに異次元の存在だ。ナイキ厚底シューズ騒動や、東京オリンピックのマラソンの開催地変更など話題に事欠かないマラソン界。彼はこの状況をどう見ているのか――。そして記録更新はなるのか――。「ローレウス・ワールド・スポーツ・アワード2020」の授賞式に訪れたドイツ・ベルリンで、人類史上最速の男を直撃した。

――今回は「ローレウス・ワールド・スポーツ・アワード2020」にノミネート(※)されましたが、ローレウスの活動についてはどう思っていますか。

「ローレウスは20年の活動を通して世界を一つにまとめる力があると思っています。スポーツには世界を変える力があるので、人類に与える影響は計り知れないと思います。私が賞をもらう、もらわないに関わらず、そのような影響が世界に及べばいいなと思います」
※ローレウス年間最優秀男子選手部門にノミネートも惜しくも受賞を逃す

――あなたがこれまでマラソンで優勝できなかったのは1回だけです。今年はロンドンマラソンと東京オリンピックがありますが、これまでどおり優勝できますか。

「私はとにかく一つ一つの大会に向けてトレーニングをしていますし、なによりも楽しむことを大切にしています。スポーツ選手は負けることももちろんあります。ただそれも受け入れる必要があります。とはいえ負けないように一生懸命努力することを常に心がけています」

――東京オリンピックのマラソンは8月ですが、それに向けてどう調整していきますか。

「今は東京オリンピックよりもロンドンマラソン(4月26日)のことで頭がいっぱいです。まずはロンドンマラソンに向けて一生懸命トレーニングするだけです」

――東京オリンピックのマラソン会場が札幌に変わりましたが、何か影響はありますか。

「何も変わりません。これはIOC(国際オリンピック委員会)が決めることです。私は東京オリンピックに参加できることをすごく光栄に思っていて、文句は一切言いません。とにかく一つ一つ力を出し切ることに専念していますので、会場がどこになろうと変わりません。またトレーニング内容も変えるつもりはありません。与えられた環境のなかでベストを尽くすことが大切だと思っています」

――あなたが2時間を切ったのは、40人以上のペースメーカーとスピードを設定する先導車のある特別な環境下で実施された非公式の大会でした。今後、公式大会でも2時間を切れると思いますか。

「あれはちゃんとフルマラソンを走っていましたよね。あれはバーチャルな大会ではないですよね。今までは絶対に2時間を切るのは無理だと言われてきましたが、それが無理ではないことを私は証明できました。今後もそういうことは起こりうると思います。

 今はロンドンマラソンに注力していますし、結果はどうなるかわかりませんが、2時間を切ろうという意識ではなく、ベストを尽くす、ただそれだけです」



穏やかで紳士的に対応するキプチョゲ。質問に対して常に真摯に答えてくれた

――ナイキの厚底シューズが議論を呼びました。さまざまな意見が出るなか、規定はあるものの、厚底シューズを履くことが許されました。ナイキのシューズについてはどう思いますか。

「ナイキの今のシューズはすごくいいですよね。それは結果を見ればわかることです。これからもいろいろなテクノロジーが登場してくるでしょうから、さらに結果がよくなっていくと思います。それを今は楽しみにしています」

――あなたは走ることを心の底から楽しんでいるように見えます。最後まで笑顔を絶やさないように見えますが、なぜでしょうか。

「走ることは自由を得ることだと思っています。その自由を感じたときに私は興奮するんです」

――あなたはとてもメンタルが整っていますが、常に最高のメンタルを保つためにはどうすればいいのでしょうか。

「人間はいい状態のメンタルがあれば物事を進めることができます。また、健康な体であることもとても大事です。だからメンタルと体、両方を保つことが大切だと思っています」

――ケニアのマラソン選手たちは、一体感があるように感じますが、それがケニアの選手の強みなのでしょうか。

「ケニアは一つのチームなんです。みんなが一丸となって練習をして大会に臨んでいます。それが力となって自分はベストを出し切れると思っています」