東京オリンピックまで、あと5カ月あまり——。「メダル獲得」という大きな目標に向けて強化合宿と遠征を重ねているのが、「サクラセブンズ」こと女子7人制ラグビー日本代表だ。



高校3年生の松田凛日(左)と香川レメ優愛ハヴィリ(右)

 現在、オリンピックに向けたスコッド(日本代表候補選手)は22名ほど。リオ五輪出場経験のある社会人選手や大学生たちのなかで、ふたりの女子高生が切磋琢磨しながら夢の舞台に挑んでいる。

 そのふたりとは、BK(バックス)の松田凜日(りんか/國學院栃木高3年)と、FW(フォワード)の香川メレ優愛ハヴィリ(熊谷女子高3年)。昨年4月に北九州で行なわれた、各国を転戦する国際的な大会「ワールドシリーズ」において、ともに17歳で「世界デビュー」を果たした逸材である。

 中学3年生で日本代表候補合宿に呼ばれ、そのポテンシャルから「日本の宝」「将来のエース」と期待されてきたのが、周囲から「りんか」の愛称で呼ばれている松田だ。父は日本代表キャップ43を誇り、ワールドカップにも3度選ばれた松田努氏。まさに、ラグビー界のサラブレットである。

 身長168cm、体重61kg。50メートルを6.7秒で駆け抜けるアスリート。17歳で出場した北九州セブンズのロシア代表戦では、豪快なランやステップで2トライを挙げた。

「アタックで裏に出るプレーは通用しましたが、ディフェンスで仕留め切る部分は伴っていませんでした。主にディフェンスとフィットネスが課題。まだまだレベルの差を感じました」

 父の影響で、東芝ラグビー部のグラウンドを練習拠点としている府中ジュニアラグビーで競技を始めた。そしていざボールを持ってみると、「走り方が父親とそっくり」という評判が広まった。

 ラグビー界で父は偉大な存在。しかし松田は、父と比較されることを「気にならない」と言う。

「お父さんは自分の残した実績を自慢することもない。人間的に尊敬しています」

 40歳を超えても東芝でプレーした父の姿は、記憶にあるという。今の松田にとって、父はコーチのひとり。困った時に相談すると、「もっとステップを切ったほうがいい」などアドバイスをしてくれる。

 中学卒業後は、親元を離れて國學院栃木高に進学。強豪ラグビー部として知られる同高の男子選手と一緒に練習に励み、研鑽を積んだ。しかし昨年夏、松田は右足首の捻挫がクセになり、全力で走れなくなっていたという。

 松田はオリンピックのスコッドに最年少で選出されていた。だが、「東京五輪でいいプレーができるように」と、昨年11月に手術を決断。走れない時期はウェイトトレーニングを重ねて、ベンチプレスではチームトップの85kgを上げられるまでになった。

「焦りや不安はありますが、自分のやることは変わらないので、あまり考えないようにしています。オリンピックまで一日一日、無駄にしないように過ごしたい」

 3月末の完全復帰を目標に、現在は別メニューでの調整が続いている。

 15歳で代表候補に選ばれてから3年——。初選出された当初の松田は「漠然とオリンピックに出たいな」くらいにしか思っていなかった。しかし、今では「絶対に東京五輪に出たい」という強い思いに変わった。

 そして今は、同じ学年の選手がスコッドにいることも大きな刺激になっている。松田が「絶対に負けたくない相手」が、もうひとりの女子高生、香川メレ優愛ハヴィリだ。

 身長168cm、体重71kg。フィジカルの強さを武器に、香川はオリンピックスコッドへの昇格を果たした。そして今シーズン、ワールドシリーズでは早くも存在感を示している。

 父はトンガ人で、母は日本人。東京・立川で生まれ、3歳頃からは埼玉・浦和に住む。「メレ優愛」が名前、「ハヴィリ」がミドルネームだ。

 ラグビーをやっていた父親は、交換留学生として日本の高校にやってきた。その後、社会人ラグビーチームの大塚刷毛でプレーした経歴を持つ。

 そんな父親の影響もあり、レメは8歳から浦和ラグビースクールで競技を始めた。ただ、同時に水泳もやっており、小学校4年生から6年生は水泳に専念した時期もあったという。専門は自由形で、ジュニアオリンピックに出場するほどの実力があった。

 セブンズがオリンピック競技になることは、その頃には決定していた。そんなタイミングもあり、香川は中学入学と同時に「オリンピックを目指すなら、水泳よりもラグビーのほうがいい」と決意を固め、ラグビースクールに戻ることを決めた。

 ラグビーのために、中学では陸上部に入ってスピードを培った。100メートル走では12.9秒を記録し、リレーでは県大会で優勝するなどの活躍を見せる。同時に、女子ラグビーの強豪「アルカス熊谷」のアカデミーにも所属。中学2年時には日本協会のユースアカデミーにも選出された。

 そして、高校進学後は「東京五輪出場」に向けて本格的にラグビーに専念。放課後にアルカス熊谷で練習ができるように、自宅から1時間半の距離の熊谷女子高に進学した。

 アルカス熊谷には、多くの日本代表選手が所属している。「本当に全員に憧れていました。日本代表になるという意識を高めることができた」。

 ワールドシリーズには、すでに4大会に出場した。2月のシドニー大会では主力のPR(プロップ)としてプレーし、9位に貢献している。

「ボールキャリーが私の強みなので、(世界の強豪相手にも)通用する部分が出てきたなと感じています。課題はディフェンス。どのポジションに立つかなど、質を高めていきたい」

 東京オリンピックには、現在の候補選手の約半数の12名しか出場できない。香川は「自分の強みはまだ完璧ではないので、強みにこだわっていく。弱みと向き合って、毎日毎日、成長していきたい」と先を見据えた。

 ふたりに、東京オリンピックにかける想いを聞いてみた。

「すごくワクワクしています! 目標は金メダルを獲ること。トライを獲って、誰かに影響を与えられるような選手になりたい」(松田)

「オリンピックはすごく大きな大会だし、私たちが結果を出すことで、女子ラグビーを変えることができるきっかけになる。絶対に出場したい」(香川)

 今年の春から、松田は日体大、香川は早稲田大に進学する予定だ。ふたりは「サクラセブンズ」の一員として東京オリンピックに出場し、メダル獲得という大きな花を咲かすことができるか。