チャンピオンズリーグ(CL)が再開した。決勝トーナメント1回戦。この火曜日、水曜日に行なわれた第1戦の4試合(アトレティコ・マドリード×リバプール、ドルトムント×パリ・サンジェルマン、アタランタ×バレンシア、トッテナム・ホットスパー×ライプツィヒ)の中で、客観的に見て、最も競った戦いになると思われたのは、スパーズ対ライプツィヒだった。



下馬評の低かったアタランタはバレンシアを4-1で下した

 スパーズは今季の国内リーグでは目下5位。ソン・フンミン、ハリー・ケインの主力FWが故障でたて続けに戦列を離れる災難にも見舞われている。一方、ライプツィヒは、CLの決勝トーナメントの戦いこそ初めてながら、国内リーグでは王者バイエルンと首位争いを演じている。国内リーグのレベルでプレミアがブンデスに勝る分、スパーズにプラスアルファが加味されるとはいえ、いい勝負になりそうな気配は濃厚だった。

 この現実を両チームはどう捉えたか。CLの決勝トーナメントは、弱者にプラスの要素が働きやすい傾向がある。格上との一発勝負には、「負けてもともと」の気楽さが追い風として働きやすい。負けられない立場に置かれた強者は少なからず慎重にプレーする。

 昨季の準優勝チームとしてのプライドも災いしたのか、スパーズは実際、受けて立ってしまった。58分、左SBベン・デイビス(ウェールズ代表)がライプツィヒのMFコンラート・ライマー(オーストリア代表)を倒してPKを献上。これをティモ・ヴェルナー決められて決勝点とされた。

 とはいえ、もう一度戦えばどちらが勝ちそうかという視点でこの試合を振り返れば、スパーズとなる。ライプツィヒに勢いはあったが、攻撃が真ん中に固まる傾向が強く、攻撃の質は高いとは言えなかった。ホームでの第2戦は目の前に勝利がちらつくなかで行なわれる。地元サポーターを前に無欲を貫くことはできるのか。色気を出して5バックで守りを固め、逃げ切りを図ろうとすれば、高い確率でやられると見る。

 4-1。アタランタ対バレンシアは思わぬ大差がついた。アタランタはグループリーグを2勝1分3敗という16チーム中最も悪い成績で通過した。典型的な弱者である。ベスト16入りはもちろん、CL出場もクラブとして初の体験だ。このホームでの第1戦は、まさにお祭りだった。しかも相手のバレンシアは、スペインリーグで現在7位に沈んでいる狙い目のチームだ。

 その勢いがストレートに反映された試合だった。アタランタは立ち上がりからアルゼンチン代表歴が4試合あるFWアレハンドロ・ゴメスを軸に、チャンスとみるや一気呵成に攻め立てた。前半を2-0で折り返すと、後半も17分までに2点を奪い4-0とリードした。

 ここでようやくバレンシアは目を覚ました。後半21分、交代出場のデニス・チェリチェフ(ロシア代表)が左足シュートを決めて4-1とする。その後もチャンスは幾度となく作った。もう2点ぐらい入ってもおかしくなかったが、そのままタイムアップの笛を聞くことになった。

 この流れで第2戦を迎えれば、試合がもつれる可能性はまだ3、4割ほどある。アタランタは色気を出さず、無欲で臨むことができるか。地力で若干上回る相手に対し、守ってしまうのか。アウェーでも勇気を持って打って出ていけるか。見どころは先述のスパーズ対ライプツィヒと同じだ。

 その前日、火曜日に行なわれた2試合も、下馬評の低いチームが勝利する、まさに決勝トーナメントにありがちなパターンだった。

 ドルトムントとパリ・サンジェルマン(PSG)の力関係は、何年か前ならばほぼ互角だった。だが、PSGが豊富な資金力を背景に世界的な選手を抱えるビッグクラブに成長したのに対し、ドルトムントはいささか小粒になった。PSGが順当勝ちするのではないか。それが戦前の予想だった。

 しかし、結果は2-1でドルトムントの勝利に終わった。PSGは欧州を代表する金満クラブながら、CLではいまだ決勝進出を果たしていない。2度進出したことがある準決勝も、”リベリアの怪人”ジョージ・ウェアを擁した1990年代の話だ。金満クラブとなってからはベスト8止まり。その敗戦の多くが、下馬評で上回りながら番狂わせを許すパターンだ。

 この試合も例外ではなかった。選手の名前が戦力に反映されていない、勢いのない脆弱なサッカーをした。ドルトムントは逆に勢いを感じさせるよいサッカーをした。2ゴールを挙げた19歳のCFアーリング・ブラウト・ハーランド(ノルウェー代表)とドリブルが切れる右ウイングのジェイドン・サンチョ(イングランド代表)。この若い2人が牽引する攻撃こそがこのチーム最大の魅力だ。

 ハーランドはこの1月、ドルトムントに加入したばかりで、CLのグループリーグを南野拓実とともにザルツブルクの一員として戦っている。同じく冬の移籍でリバプールへ移籍したものの、出番に恵まれない南野とは対照的に、ドルトムントで即スタメンを確保。PSGを相手にさっそく2ゴールをマークした。身長194cmといえば、空中戦、ポストプレーを得意にするCFを連想するが、この選手は足が利く。流れながらプレーできるところに新しさを感じる。

 サンチョは、ポジションこそ微妙に違うが、ドリブルを得意とするアタッカーという点でPSGのキリアン・エムパべと共通する。つい比較して見ることになったが、技術の多彩さ、視野の広さ、勘のよさという点で勝っていた。そしてなによりハーランド同様、新鮮で、プレーに驚きがある。これは、ドルトムントにあってPSGにない味、そのものでもある。

 この「味」をドルトムントが第2戦でも発揮できれば、試合はもつれる。ほぼ無欲でありそうなところも、PSGには厄介な点だ。

 上記の3試合以上に意外だったのは、アトレティコ対リバプールだ。アトレティコがその10日前に戦った国内リーグ対グラナダ戦(試合は1-0でアトレティコの勝利)を見る限り、とてもリバプールに勝てそうな雰囲気はなかった。最低の調子にあったチームが、わずかの期間にここまで回復するとは、想像すらしなかった。アトレティコというチームが潜在的に備えるしぶとさ、勝負強さをあらためて痛感させられることになった。

 リバプール側にも問題はあった。昨季とメンバーがほとんど代わっていない弊害を見た気がした。見慣れていることもあるが、驚きがないのだ。すべてが想像の範囲内に収まっている印象だ。同じメンバーで戦うことのメリットより、デメリットが上回っているように見えた試合となる。

 アトレティコでは今季加入した選手が存在感を発揮した。左サイドバックのレナン・ロディとCBのフェリペ(いずれもブラジル代表)だ。特に縦への推進力のあるロディは効いていた。対峙する相手のエース、モハメド・サラーは、その影響を受けたのか、さして活躍することもなく後半27分、途中交代に追い込まれた。

 第2戦のカギは、2連覇の壁に直面することになるリバプールの精神状態だ。これまで発揮してきたチャレンジャー精神を、ディフェンディングチャンピオンとなったいまなお発揮できるか。リバプールらしさが勝るか、アトレティコらしさが勝るか、見ものである。