男女が同じフィールドで戦う数少ない競技『ボートレース』。新たなヒロインとして注目されているのが、24歳の大山千広さん。元ボートレーサーの母・博美さんの背中を追いかけ、高校卒業後にその道を目指し、2015年にデビュー。19年には、G1レディ…
男女が同じフィールドで戦う数少ない競技『ボートレース』。新たなヒロインとして注目されているのが、24歳の大山千広さん。元ボートレーサーの母・博美さんの背中を追いかけ、高校卒業後にその道を目指し、2015年にデビュー。19年には、G1レディースチャンピオン初出場初優勝を果たすなど、獲得賞金5600万円を突破し、23歳の若さで賞金女王を獲得。そんな彼女に、ボートレースのこと、自身のキャリア、将来について話を聞いた。
取材・文/太田弘樹 撮影/市川亮
「私は、ボートレーサーになりたい」
大山千広さんが、そう漠然と考え始めたのは10歳の時。母である博美さんがボートレーサーとして活躍していたことがきっかけだった。
「普通のお母さんとは違う仕事をしている。その母がとても自慢でしたし、それと同時に憧れの存在でもありました。そんな姿を見て、小さいながらに“ああなりたい”と思うようになりましたね。1番身近にあって、小さいときに他の仕事を知らなかった。だからこそ、この道に突き進むことができたんでしょうね」
ボートレーサーになるためには“何が必要なのか”と考えた大山さんは、体は動かしておいたほうがいいはずと考え、中学校・高校と陸上部に所属。中学校では短距離走を、そして高校になると七種競技で活躍する選手となった。
高校を卒業後に、ボートレーサー養成所に入所。しかし、自身が考えていたよりも訓練は厳しく挫折しそうになるが、母から“一緒に走りましょう”という手紙をもらい、それを励みに1年間の訓練を終え、養成所を卒業。2015年116期生として、ボートレーサーの扉を開いた。 「正直にいうと“仕事”になっているという感覚は、今でもありません。養成所の時は本当に辛かったんですけど、実際にボートに乗れるようになってからは本当に楽しくって! 勝った時はもちろんですが、それ以上に出来なかった事が出来るようになった時とか、自分が今成長したなと思える瞬間はとても刺激になっていますし、充実した日々を過ごせています。仕事として考えると、本当に良い職業に就いたと思います」
17年ボートレース福岡のG3オールレディースで初優勝を飾ると、18年に最優秀新人賞を獲得。その中でも一番印象に残っているのが、18年に開催された『G3オールレディース・第30回瀬戸の女王決定戦』。理由を聞くと、
「母が引退し、この試合を欠場することになりました。そうしたら、たまたま私が代わりに出場することに。親子だからとか全然関係なく追加されました。そして、その試合で優勝することができたんです。母にも良い記念になったと感じましたし、こういうタイミングで優勝できた事が凄く嬉しかったですね」 大山さんにとって2019年は飛躍の年となった。
19年5月には、ファン投票順位4位(1万3294票)を獲得し、第46回ボートレースオールスターに初出場。この試合は、SG(スペシャルグレード)いわれ、ボートレース界で最高グレードのレース。加えて、同年8月には、ボートレース蒲郡で行われたG1第33回レディースチャンピオンで初出場初優勝。23歳6カ月での優勝は史上最年少となった。
獲得賞金は5600万円を超え、賞金女王を獲得。ボートレース界をけん引していく存在として大きな注目を浴びている。
「正直に言うと、学生時代って何かに熱中するということが無かったんです。得意な事もなくて、少し冷めていた感じでした。それがボートに出会ったことで、人生で初めて“熱中”できています!
オフの時にも競技のことを自然に考えていますし、それが苦しいと思ったことはありません。今は上だけを目指している段階で、上手くなることに集中しています」(前編終わり)
(プロフィール) 大山千広(おおやま・ちひろ) 1996年2月生まれ、福岡県出身。ボートレーサーである母・博美さんに憧れて、小学校4年生の時にボートレーサーになる夢を持つ。高校を卒業後養成所に入り、2015年デビュー。18年最優秀新人賞を獲得。19年8月には、G1レディースチャンピオン初出場初優勝を果たすなど、獲得賞金5600万円を突破。23歳の若さで賞金女王を獲得。輝かしい成績を挙げている。
※データは2020年2月20日時点