NBA後半戦見どころ@イースタン・カンファレンス編 オールスター終了現在、イースタン・カンファレンスではミルウォーキー・バックスが独走している。そのバックスの「絶対エース」として君臨するのが、25歳のヤニス・アデトクンボ(PF)だ。バックス…

NBA後半戦見どころ@イースタン・カンファレンス編

 オールスター終了現在、イースタン・カンファレンスではミルウォーキー・バックスが独走している。そのバックスの「絶対エース」として君臨するのが、25歳のヤニス・アデトクンボ(PF)だ。バックスを、そしてヤニスを止めるチームは現れるのか--。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。



日本人初のライジングスターズ出場を果たした八村塁

 リーグトップの1試合平均119.6得点という爆発的なオフェンス力を武器に、1月24日には東西最速で40勝(6敗)に到達。現在イースタンの首位に立つバックス(46勝8敗)は、2位のトロント・ラプターズ(40勝15敗)に6.5ゲーム差をつけて独走態勢に入っている。

 NBAの歴史上、6敗以下で40勝に到達したチームは、今季のバックスをのぞいて過去に6チームしかいない。そのなかで2015−2016シーズンのゴールデンステート・ウォリアーズ(40勝4敗)だけはファイナルで敗れたものの、残り5チームはすべて優勝を遂げている。

 データから語るならば、今季のバックスがファイナルまで進出することは約束されたと言ってもいい。

 強さの理由はやはり、オールスターのファン投票で2年連続イースタン・カンファレンス最多得票を獲得し、いまや「NBAの顔」と言ってもいいヤニス・アデトクンボの存在だ。

 今季は開幕から、イースタンの月間最優秀選手賞を連続受賞。現在平均30.0得点(リーグ2位)、13.5リバウンド(5位)、5.8アシスト(24位)と、まさに手がつけられない状態だ。しかも、これは平均出場時間30.9分(リーグ63位)での記録であり、フル稼働した時にどれほどのスタッツを残すのか、末恐ろしい。

 また、ヤニスをサポートするクリス・ミドルトン(SF)、エリック・ブレッドソー(PG)の得点力も健在。昨季はカンファレンス・ファイナルまで進出し、大舞台の経験も積み上げている。46年ぶりのNBAファイナルに向けて、バックスの視界は良好だ。

 そもそも、バックスの独走を許したのは、シーズン開幕前は「バックスと並んで2強」と目されたフィラデルフィア・76ers(イースタン5位/34勝21敗)の失速が大きい。

 オールスター出場のジョエル・エンビード(C)は故障などで39試合しか出場できていないが、ベン・シモンズ(PG)、トバイアス・ハリス(SF)、アル・ホーフォード(PF)といったスター選手を76ersは多く抱えている。現在カンファレンス5位という順位は、周囲の期待を大きく裏切った形だ。

 敗因は、アウェーでの勝率にある。

 今季の76ersはホームゲームでリーグ最高勝率25勝2敗と、バックス以上の成績(25勝3敗)を残している。しかし、アウェーでは9勝19敗と、まったくの別チーム。1月下旬のアウェー4連戦では4連敗を喫するなど、ホーフォードが「ロッカールームで続いている問題がいくつかある」と、内紛を匂わせるコメントを残しているほどだ。

 そんな76ersは2月5日、トレードでウォリアーズからアレック・バークス(SG)とグレン・ロビンソン3世(SF)を獲得し、薄かったベンチ層に厚みを持たせることに成功した。76ersはバックスとの直接対決で1勝1敗の五分。その実力は間違いないだけに、巻き返せるかどうかはロッカールームの問題を解決できるかどうかにかかっている。

 逆に、思いもかけず好成績を残しているのが2位のラプターズだ。昨季のチャンピオンチームながら、エースのカワイ・レナード(ロサンゼルス・クリッパーズ/SF)がチームを去り、今季は再建のシーズンになると思われていた。

 だが、新エースのパスカル・シアカム(PF)が平均23.5得点とチームを牽引。カイル・ラウリー(PG)など主力をケガで欠くことも多かったが、ノーマン・パウエル(SG)やOG・アヌノビー(SF)といったゴートゥーガイ(大事な場面で力を発揮する選手)が日替わりで登場し、1月16日から球団最長の15連勝を記録。優勝経験が大きな力になっているのは間違いなく、後半戦も注目が必要だ。

 3位のボストン・セルティックス(38勝16敗)は、新加入のケンバ・ウォーカー(PG)がチームにフィットしたのが大きい。また、3年目のジェイソン・テイタム(PF)や4年目のジェイレン・ブラウン(SG)といった若手も、才能を開花させつつある。

 6位のインディアナ・ペイサーズ(32勝23敗)も、これから面白い存在になりそうだ。昨年1月に右足の大腿四頭筋を断裂して以来、欠場を続けていたエースのビクター・オラディポ(SG)が1月29日に復帰。徐々に順位を上げてくる可能性は十分にある。

 そしてシーズン後半戦、最も注視する必要があるのはマイアミ・ヒート(35勝19敗)だろう。

 ヒートは現在、イースタン4位。その原動力になっているのが新加入のジミー・バトラー(SF)であることは間違いないが、ほかにも注目すべき選手がいる。オールスター初出場を果たして今季のMIP(最成長選手賞)最有力候補のバム・アデバヨ(PF)や、開幕からスターターに名を連ねて平均15.3得点を記録している新人王候補のケンドリック・ナン(SG)といった若手たちだ。

 さらに2月6日、ヒートはトレードでアンドレ・イグダーラ(SG)とジェイ・クラウダー(SF)をメンフィス・グリズリーズ(ウェスタン8位/28勝26敗)から獲得。後半戦に向けて、さらなるチーム力アップに成功している。

 イグダーラは昨夏、ウォリアーズからグリズリーズにトレードされたものの、1試合もプレーせずに優勝を狙える強豪への移籍を待っていた。つまり、3度の優勝経験を持つ36歳のベテランは、「ヒートが優勝を狙える可能性を秘めたチームである」と判断したのだろう。

 そして最後に、八村塁(PF)が所属するワシントン・ウィザーズ(20勝33敗)を取り上げたい。

 ウィザーズはオールスター終了時点で9位ながら、8位のオーランド・マジック(24勝31敗)まで3ゲーム差。リーグ最下位の守備力(1試合平均119.8失点)の改善は急務だが、プレーオフ圏内に食い込める位置につけている。

 左足アキレス腱の部分断裂によって長期離脱中のジョン・ウォール(PG)について、スコット・ブルックスHCは「100%の状態になるまでは復帰させない」とコメントしている。だが、ウォールはすでにかなりの強度の練習を再開しており、今季中に戦列復帰できる可能性もわずかながら残されている。

 仮にウィザーズがイースタン8位となれば、プレーオフ1回戦の相手は、ほぼ間違いなくバックスだ。八村はMVP候補のヤニスとマッチアップすることになるだろう。

 昨年6月、日本人初のドラフト1巡目指名を受けてから8カ月--。プレーオフ進出に向けて、勝負のシーズン後半戦が始まる。日本人ファンがまだ見たことのない景色を、八村はきっと見せてくれるはずだ。