2月上旬、東京五輪サッカーの南米予選、2020CONMEBOLプレオリンピックがコロンビアの3つの都市で行なわれた。スピード、テクニック、創造力の三拍子がそろった”まさに南米”というサッカーが見られ、多くの若き…
2月上旬、東京五輪サッカーの南米予選、2020CONMEBOLプレオリンピックがコロンビアの3つの都市で行なわれた。スピード、テクニック、創造力の三拍子がそろった”まさに南米”というサッカーが見られ、多くの若き才能がすばらしいパフォーマンスを繰り広げていた。
なかでも決勝ラウンド最終戦のブラジル対アルゼンチンは、今後の世界のサッカーに大きな意味をもたらす試合となった。なぜなら、これからスターダムにのし上がると思われる選手が数多くいたからだ。この新世代の選手たちの波を知らないのは、もったいなさすぎる。彼らはあと数カ月後には、みなさんの国で多くのゴールを生み出すはずだ。
アルゼンチンを破り、東京五輪出場権を手に入れたU‐23ブラジル代表 photo by Reuters/AFLO
南米10カ国のU‐23代表は、東京五輪のたった2つの席をめぐって熾烈な戦いを繰り広げた。グループラウンドからブラジルとアルゼンチンが突出しており、ウルグアイ、コロンビアとともに決勝ラウンドに勝ち上がった。ブラジルはグループラウンドで唯一全勝したチームで、アルゼンチンは最も優れたパフォーマンスを見せたチームだった。
4チームが総当たりする決勝ラウンドは、それまでの試合とは別物といっていいほどハイレベルの戦いとなった。
ここでドラマが起こった。それまで全勝だったブラジルが、コロンビア、そしてウルグアイと戦い、ともに引き分けてしまった。一方、アルゼンチンは最初の2試合に勝利し、この時点でいち早く出場枠のひとつを獲得した。
ブラジルが最後の一枠を確実に得るには、3戦目の勝利が必要だった。だが、相手は最も手強いアルゼンチン。誰の目にも不可能であるかのように見えた。
しかし、ブラジルはミッションインポッシブルを成し遂げた。アルゼンチンを相手に3-0で勝利し、東京行きを成し遂げたのである。結局、ブラジルは大会で唯一無敗のチームとなり、大会得点王もブラジルのマテウス・ダ・クーニャだった。
いったい東京でどんなアルゼンチンとブラジルの試合が見られるのか。私がブラジル人だから、もしくは南米の記者だからそう大げさに言っているのではない。本当に、これほど輝いたタレントが勢ぞろいした時代は、ここ何年もなかった。
まずはアルゼンチン。今回のU‐23代表は、未来のアルゼンチン代表監督と言われているフェルナンド・バティスタが率いていた。アルゼンチンの新世代を代表する指導者で、強力で、優れた戦術を持つチームを作り上げた。
チームの3人の主力は、五輪でプレーするにふさわしい選手だろう。
まず、ネウエン・ペレス。CBでキャプテンも務める。空中戦に強く、ゴールも決め、すでにヨーロッパの強豪から注目されている。現在はポルトガルのファマリカンでプレーするが、五輪後には彼を保有するアトレティコ・マドリードに帰るはずだ。
続いてアレクシス・マック・アリスター。イングランドのブライトンに所属するスピードあるMFで、アタッカーを助け、自身も強力なシュートを放つ。熱い血を持った闘士で、90分間戦い続け、決してあきらめることはない。
そして、バレンティン・カステジャノス。所属するニューヨーク・シティで、38試合で12ゴールを決めた実績を買われてメンバー入りし、危険なCFとなった。
彼らのほかにもジュリアン・アルバレス(リバープレート)、フェデリコ・ザラーチョ(ラシン)など興味深い選手がいた。
アルゼンチンが五輪で優勝したのは2004年のアテネ大会。決勝でパラグアイを破って金メダルを手に入れた。この試合で決勝ゴールを決めたのはカルロス・テベス。そのほかに当時のチームにはロベルト・アジャラ、ルチョ・ゴンサレス、ハビエル・マスチェラーノらがいた。彼らにも負けるとも劣らないメンバーで、アルゼンチンは16年ぶりの金メダルを手に入れたいと思っている。
バティスタは、東京にはより強いチームを連れていきたいと考えているようだ。予選を戦ったチームにはいなかったが、エル・トーロ(雄牛)の異名を持つインテルのラウタロ・マルティネスはまだ22歳だし、アヤックスでプレーするリサンドロ・マルティネス(22歳)も、世界の注目を集めている若手だ。リバープレートにいたエゼキエル・パラシオス(21歳)も今やレバークーゼンのレギュラー。またトッテナム・ホットスパーのフアン・フォイス(22歳)も呼ばれるに違いない。
もちろんこれらの選手を使うためには、アルゼンチンサッカー協会はそれぞれの所属チームと交渉する必要がある。FIFAのルールでは、五輪に選手を差し出すようクラブチームを強制する力はない。だがアルゼンチン協会は、3人のオーバーエイジを含めて、各チームと交渉すると公言している。
つまり、リオネル・メッシはバルセロナが承諾したら、ニコラス・オタメンディとセルヒオ・アグエロならマンチェスター・シティがOKを出したら、彼らの姿を日本で見ることも可能になる。もし各クラブチームが許可すれば、アルゼンチンは無敵のスーパーチームを作り上げることもできるのだ。
続いてブラジル。監督のアンドレ・ジャルディンはまだ若く、U‐20代表監督も兼任し、フル代表でチッチ監督の右腕として働くこともある。選手時代はグレミオでプレーし、ロナウジーニョのチームメイトでもあった。
今回、ジャルディンが率いるチームは、ほとんど無名の選手から構成されていた。それでも彼らはアルゼンチンを3-0で破る力があった。
中盤のブルーノ・ギマランイスはグレミオで育ち、現在はリヨンでプレーする。守備的MFでゲームメイクがうまく、今大会の最優秀選手に選ばれた。FWではダ・クーニャ。ヘルタ・ベルリンでプレーする彼は5ゴールを決め、大会得点王となった。
しかし、誰もが注目していたのはレイニエルだろう。まだ18歳だがレアル・マドリードが獲得。おそらくレイニエルはブラジルサッカーの未来を背負う選手に成長するはずだ。プレーのビジョン、スピード、そして何より繊細なボールタッチ。大会ではハンドにも拍手が沸き起こっていた。
そしてブラジルには、彼ら以外にも名前を知られた23歳以下が多くいる。これは興奮せずにはいられない。
ガブリエル・ジェズス(22歳)はブラジル代表の主力であり、マンチェスター・シティのスター選手。リシャルリソン(22歳)もブラジル代表の主力で、エバートンのゴールゲッターだ。エデル・ミリトン(22歳)はポルトからレアル・マドリードに移籍し、セルヒオ・ラモスとディフェンスのコンビを組む。
ガブリエウ・マルティネッリ(18歳)はアーセナルの主力で、トップスコアラーのひとり。レアル・マドリードのロドリゴ・ゴエス(19歳)はすでに世界レベルのスターである。ヴィニシウス・ジュニオール(19歳)もレアル・マドリードでジネディーヌ・ジダンの攻撃を助けている。ルーカス・パケタ(22歳)はミラン所属ですでにフル代表にも召集された。ダヴィド・ネレス(22歳)はアヤックスの若きスター。ベティスのエメルソン(21歳)はすでにスペインリーグのベストSBのひとりと言われている。
オーバーエイジ3人の候補の筆頭として思いつくのは、やはりネイマール(パリ・サンジェルマン)だろう。彼自身も東京五輪でプレーしたがっている。2016年にブラジルが初めて金メダルを獲得した時のエース。やはり五輪といえばネイマールなのだ。そのほかの候補としてはカゼミーロ(レアル・マドリード)、アリソン(リバプール)、アルトゥール(バルセロナ)、ガビゴール(フラメンゴ)の名前が挙がっている。