Brian Shi(アメリカ)は、一生の思い出と共に「ATP250 ニューヨーク」の会場を去った。19歳のShiは、まだ世界ランキングに載っていないが、大学のワイルドカードイベントで本戦出場権…

Brian Shi(アメリカ)は、一生の思い出と共に「ATP250 ニューヨーク」の会場を去った。19歳のShiは、まだ世界ランキングに載っていないが、大学のワイルドカードイベントで本戦出場権を勝ち取った。初戦で世界59位のキャメロン・ノリー(イギリス)と接戦を繰り広げたが、最終的にはノリーが7-5、6-3のストレートで勝利した。

ロングアイランドの会場で見ていた観客の中には、Shiがハーバード大学の2年生だと知っている人もいたかもしれない。だが彼が翌朝9時からのマクロ経済の授業に出席するために、その夜にマサチューセッツまで200マイル(約322km)以上も帰らなければならないことは知らなかっただろう。「ある意味楽しいよ」とShiは微笑んで言った。

しかし、初めてのATP大会出場ほど楽しくはなかったようだ。「コートに出て、チームメイトや両親を見たら、緊張は全て消え失せたよ。素晴らしい雰囲気だった。勝つことはできなかったけれど、信じられないような経験だった。確実に、学びとなる経験だった。学校に戻って、次の機会に備えてもっと厳しいトレーニングをするのに、今までよりずっと高いモチベーションで臨めるよ」

Shiは世界ランキングには入っていないが、他の出場選手たちをよく知らなかったわけではない。ニューヨーク生まれの彼は、会場から車でたった15分のジェリコ地区で育ち、大会に参加している選手は全員テレビで見たことがあった。

「僕の名前がこれだけの大物選手たちの名前と対戦表に並んでいるのを見るだけで、非現実的だったよ」とShi。しかし、自己最高41位にいたこともあるノリーに対して3-0とリードした時、彼は場違いどころではなかった。コートチェンジの時には何を考えていたのだろうか?

「正直なところ、あまり何も考えていなかったんだ。僕はいつも試合に入る時にはできる限り頭を空っぽにするように心がけているんだけど、この試合もいつもと何も変わらなかったよ。心の奥では『うわあ、キャメロン・ノリー相手に1ブレークアップだ、やばい』みたいな考えもあったけどね」

おもしろいことに、Shiの大学のテニスチームは、元世界ランキング4位でハーバード大学の選手であったジェームズ・ブレイク(アメリカ)と数週間前にFaceTimeで会話していた。この状況で、ブレイクの助言が生きた。

「彼がくれた助言の中で一番良かったのは、ここ何年かでたくさんのいいテニス選手たちから聞いたものと同じなんだけれど、いいプレーができていて試合がすごく良く進んでいる時に気分を高揚させ過ぎないということ。そして、うまくプレーできていない時にも落ち込みすぎず、平静を保つよう努めること。そうすることで、うまくいっていない時でもモチベーションを保って、やる気をなくさずにいられるんだ」

Shiは勝利を掴むことはできなかったが、24歳で左利きのノリーに対して2度ブレークを果たし、接戦に持ち込んだ。そして、ネット越しにノリーと試合終了の握手をしてからわずか12時間後には、別の州にある大学の教室に座っていた。彼の人生における教育的な面も、彼の役に立っている。

「一番大きいのは、学生選手であることから生まれる規律だね。ハーバード大学に限らずどの大学でも同じだけど、テニスをプレーすることと学校の勉強、それに社会生活のバランスを取る必要がある。やるべきことが山ほどあるんだ」

Shiがうまくそのバランスをとっていることは間違いない。そして、忘れられない一夜を終えた今、これまで以上にテニスへの意欲が増している。「やらなければいけないことは確実にある。これからどんなことが起きるのか、すごくワクワクしているよ」

※写真は2016年ハーバード大学のキャンパス風景

(Photo by Cameron Spencer/Getty Images)

翻訳ニュース/ATPTour.com