新天地ツインズのキャンプに合流、指揮官は前田に全幅の信頼を寄せる  2月13日(日本時間13日)、ツインズのバッテリー組キャンプインから1日遅れて前田健太が始動した。  ドジャース時代と変わることなく、一礼をしてフィールドに足を踏み入れ左翼…

新天地ツインズのキャンプに合流、指揮官は前田に全幅の信頼を寄せる

 2月13日(日本時間13日)、ツインズのバッテリー組キャンプインから1日遅れて前田健太が始動した。

 ドジャース時代と変わることなく、一礼をしてフィールドに足を踏み入れ左翼方向へ歩を進めると、三塁線のフェンス際に設けられたブルペンで躍動していたジェイク・オドリッジの投球に足を止めた。体を解し、キャッチボールと遠投を終えた前田にそのオドリッジが歩み寄り、二人は通訳を介してしばし談笑。昨季自己最多の15勝を挙げた右腕とのやりとりに前田は時折、笑みを浮かべながら聞き入った。

 終始リラックスした空気の中で初日を終えた前田の姿に、就任2年目のバルデリ監督が伝えていたのは「気持ちを楽にしてやってくれ」だった。他の選手の動きやメニューの流れを知ってもらうことがこの日のポイントだったと言う。昨季までのドジャース在籍4年間で通算47勝35敗、防御率3.87の成績を残した前田に全幅の信頼を寄せるバルデリ監督は、前田の起用法を問われこう紡いだ。

「すばらしい打者を打線に揃えているいくつものナ・リーグのチーム相手に彼は投げてきた。先発投手というのは対峙する打者によってそれぞれ異なった攻め方で打ち取る能力を持っている。だから(リーグが変っても)ちょっとでも慣れさえすれば、その違いは投手にとって表面的なものでしかないだろう」

 就任1年目で101勝を挙げ、9年ぶりのア・リーグ中地区制覇を導いたバルデリ監督が前田の先発起用に証左の言葉を残した瞬間だった。

言葉に籠めた心奥の思い、リリーフでの好投で「『できるんだ』と思われてしまった」

 練習に先立ち、前田は報道陣の取材に応じ、その中で胸の中にしまっておいた思いを解き放つように言った。

「いいことも悪いこともあったかなと思いますし、単純にいい成績を残し過ぎてリリーフとしての評価が高くなったのは僕にとってプラスではない。『できるんだ』というふうに思われてしまった。勿論、マウンドに上がったら打たれたくないというのが一番なのでそれは仕方ないことですけど。ポストシーズンでリリーフで結果を残しても先発として評価されて、ここに来られた。そうやって見てくれた人もいたんだということは嬉しいです」

 ドジャース時代は2年連続でワールドシリーズに駒を進めたが、夢舞台での先発登板はいずれもないままで終わっている。チームの勝利へまさに大車輪の活躍であったが、その裏で不甲斐ない思いも生まれていた。

 昨季、ツインズ打線は大暴れした。史上初のシーズン300本塁打を記録。背番号「18」を前田に譲った正捕手リッチ・ガーバーも31本塁打を放ち、打てる捕手の存在は頼もしいはず。そして、ウェス・ジョンソン投手コーチの存在は心強い。同コーチはアーカンサス大学投手コーチから昨年にツインズ入り。大リーグ150年の歴史で大学から一気に大リーグの投手コーチに上り詰める初のケースとなったが、速球のスピードをアップさせるなど独自のトレーニング法を採り入れた指導はプロの世界でも答えを出すのに時間はかからなかった。

 先のオドリッジは昨季、直球とスライダーの三振率を前年より大幅に引き上げることに成功している。ガーバー捕手は「ウェスは肩の筋肉を強くするトレーニングを独自に確立している。また、変化球の精度を上げそれをどう配球するかを理解しやすく説明してくれる。一人一人に寄り添うようにして意志疎通を図るのが彼のやり方だからさ」と話す。

 14日(日本時間15日)、ジョンソン投手コーチが見守るブルペンで前田は初投球を行う予定だ。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)