紀平梨花が男女を通じて初の大会2連覇を飾った四大陸選手権。今季シニアデビューした15歳のユ・ヨン(韓国)が、トリプルアクセルをショートプログラム(SP)とフリーで1本ずつ跳んで2位となり、キム・ヨナ以来、11年ぶりに韓国にメダルをもた…
紀平梨花が男女を通じて初の大会2連覇を飾った四大陸選手権。今季シニアデビューした15歳のユ・ヨン(韓国)が、トリプルアクセルをショートプログラム(SP)とフリーで1本ずつ跳んで2位となり、キム・ヨナ以来、11年ぶりに韓国にメダルをもたらした。また3位には、トリプルアクセルを跳ばず、ステップやスピンのGOE(出来ばえ)加点や演技構成点で勝負するブレイディ・テネル(アメリカ)が入った。
日本勢では樋口新葉が4位、坂本花織は5位となった。優勝候補の筆頭こそ紀平だったが、表彰台争いは日韓米の三つ巴の戦いとなり、結果が予想できない競り合いが久しぶりに見られた。
トリプルアクセルを試合で初めて跳んだ樋口新葉
体重調整のトレーニングを取り入れて体を絞って臨んだ全日本選手権で復活の2位となった樋口は、習得中のトリプルアクセルを試合で跳ぶという目標に果敢に挑んだ。初めての挑戦は転倒という失敗に終わったが、しっかりと回り切っての転倒だったことで初認定を受け、自信につなげた。
「(フリーの)6分間練習で初めてトリプルアクセルを跳べたので、『降りた~』って興奮した感じで練習が終わって。本番前にコールされる時に『跳べるかな』とすごく緊張したんですけど、しっかり回り切れて転(こ)けたので、本当に次につながるなと思います。6分間練習で(トリプル)アクセルを跳べたことが一番の自信になりましたし、やっと試合で挑戦できたので、ちゃんと次は跳べるようにしたいです」
四大陸選手権の樋口は、SPで72.95点、フリーで134.51点、そして合計207.46点と、いずれも自己ベストを更新。立ちはだかっていた壁をひとつ乗り越えたことで、大きな自信も手に入れたに違いない。今後、トリプルアクセルの完成度を今後高めていけば、さらなる飛躍が期待できるはずだ。
スピード感あふれるスケートが持ち味でキレのあるジャンプを跳ぶ樋口が、ジュニア時代のような勢いのある滑りをどこまで見せることができるか。2年ぶり3度目の出場となる世界選手権では、2018年ミラノ大会で銀メダルに輝いたのに続き、表彰台を狙いたいところだ。
前全日本女王の坂本花織は、不振が続いた今季、懸命にもがきながらも厳しい練習に取り組み、必死に食らいついて四大陸選手権の出場切符を辛うじて手に入れた。本番でも、何とか踏みとどまろうと耐える演技に終始することになった。昨季まではここ一番でのノーミス演技が光っていたが、今回はSP、フリーともにミスが目立ち、得点を伸ばすことはできなかった。結局、SP4位からフリーでは8位に沈み、合計202.79点の総合5位だった。
そんななかでも、フリー冒頭のジャンプで4回転トーループに思い切って挑んだ。結果は転倒に終わったが、来季への足がかりにしようという意欲を見せた意味は大きい。
「4回転トーループは、6分間練習で結構いいのが何回か跳べたので、いい感じにできるかなと思ったけど、難しかった。それ以外をしっかりまとめなきゃいけなかったのに、3つも失敗したので、それが悔しいです。4回転トーループを跳ぶことについては、跳んでも跳ばなくても『最後は自分で決めなさい』と先生(中野園子コーチ)に言われ、『自分を信じてやりなさい』とも言われました。う~ん、信じ切れなかった部分があったかなと思っています。
今回、挑戦できたことで、来季は『前のシーズンはこんな感じだった』という気持ちにつながると思うので、それはいい経験だったかなと思います」
ダイナミックなジャンプとパワフルなスケーティングが特徴の坂本が4回転トーループを習得すれば、振付師ブノワ・リショー氏とタッグを組んで作る坂本らしい個性豊かなプログラムがいっそうリンクに映えることになるだろう。
高校卒業、大学入学という、人生のなかでも大きな変化があったこの1年は、「競技生活に集中しきれなかった」と振り返るなど、なかなか難しいシーズンだったようだ。だが、ポテンシャルの高さと伸びしろはいまも失われていない。
「今シーズンはひたすら苦しかったシーズンでした。でも、その苦しさを1年間全部味わったので、来シーズンはこの悔しさをしっかり次の結果につながるように努力し続けたいなと思います」
来季の奮起を楽しみに待ちたい。