写真:神巧也(T.T彩たま)/提供:©T.LEAGUE

Tリーグの見逃せない名勝負をラリーズ編集部独自の視点で解説する【T.LEAGUE名場面解説】。今回は2/9(日)のノジマTリーグ・木下マイスター東京VST.T彩たま戦。水谷隼(木下マイスター東京)と神巧也(T.T彩たま)の試合にスポットライトを当てる。

高校、大学の先輩・後輩がぶつかりあった

水谷は東京五輪の団体代表・ミックスダブルス代表に選出され、先日のITTFドイツオープンでは台湾の若手エース・林昀儒(チャイニーズ・タイペイ)に大逆転勝利を果たし、五輪に向けての仕上がりを見せている。

神は2019年で世界ランキングを大幅に上げて、昨年のチームワールドカップでもベンチメンバーに選出されるなど着実に実力をつけている。熱く吠えるプレースタイルでTリーグでもファンを盛り上げている。

そんな両者がぶつかりあった結果、神が高校・大学の先輩でもある水谷に勝利した。この試合を神の2つのプレーに注目して振り返る。

ノジマTリーグ 木下マイスター東京vsT.T彩たま:水谷隼vs神巧也

スコア

水谷隼 2-3 ◯神巧也
9-11/11-7/11-10/5-11/8-11

1.高精度な3球目からの連打




写真:神巧也(T.T彩たま)/提供:©T.LEAGUE

神は横回転のショートサーブを水谷のフォア前に出し、浮いたストップレシーブを台上ドライブで仕掛けるパターンで序盤から得点を重ねた。3球目のパターンとしてはシンプルと言える攻撃も神のクオリティでは驚異的なものになった。

水谷のストップレシーブはそこまで高く浮いてはおらず、台上で狙っていなくては軽くフリックしてしまうようなものだった。しかし神はフォアで回り込み思い切りよく踏み込んで台上から強力なドライブを放った。

しかし並大抵の強打では水谷のカウンターや後陣からのしのぎに捕まり、逆襲されることになる。そこを打ち破ったところこそ神の大きな成長の証明となった。神は3球目強打からほとんど置きに行くようなボールは送らずに、フォアでの連打に徹した。水谷が後陣から盛り返してきても引き合いで対応し、高い得点率を見せた。

水谷のしのぎを打ち抜けるパワーとフットワークを持つ選手はそう多くはいない。その要因として考えられるのは、神の自らを鼓舞するような「吠える」スタイルだ。

弱気を見せずにフォア連打に徹するには自信を持ってプレーする必要がある。神のガッツ溢れるスタイルはそういった面でも、根性論ではなく理にかなっていると言える。

その気迫がもたらす高精度な3球目からの連打が、4ゲーム目の神のゲームポイントにような水谷がリスクを負ったレシーブをしなければいけない状況を作りだしたと言える。

2.サーブの立ち位置の変更




写真:水谷隼(木下マイスター東京)/提供:©T.LEAGUE

神はこまめにサーブの立ち位置を変更してゲームを進めていった。水谷に質の高いストップレシーブをさせずに自らの3球目強打に繋げるために、マイナーチェンジともいえる小さな差をサーブで作りだした。基本は順横回転のショートサーブを出し、立ち位置を変えることで水谷に対する入射角を変えて台から出るレシーブを狙い打った。

4ゲーム目以降はロングサーブの割合を増やし、サービスエースも取った。水谷にとっては狙いをすまして同じラケット角度を出すだけでは得点にならないため、神経を使うレシーブが必要となった。もちろん4球目で強力なカウンターやブロックにやられる展開もあったがそこで弱気にならずに、攻撃的な戦術を徹底することが大金星を引き寄せたと言える。

まとめ




写真:神巧也(T.T彩たま)/提供:©T.LEAGUE

試合を振り返ってみると、両者のプレーは対照的だった。相手に合わせる対応力を武器とする水谷。自分の強みを前面に押し出す神。

神の戦術は試合を通して大きく変わってはいない。しかし自分の強みであるフォアハンドの攻撃に持っていくための、サーブの立ち位置や回転というマイナーチェンジとも言える変更をこまめに行い試合展開を主体的に進めた。その展開を後押ししたのは、神のガッツあふれるプレーであり、TT彩たまの「爆援」サポーターであろう。

デュースなし、5ゲーム目の6-6スタートという特殊ルールも含めてTリーグの舞台を味方につけた神の勝利となった。ファイナルに向けて順位争いから目が離せない男子Tリーグ。ファイナルでの両者の再戦があればどういった熱量の試合になるかに注目したい。

文:家