その昔、日本のアトランタ五輪世代は、もしA代表と戦えば、勝ってしまうのではないかと囁かれるほどタレントが揃っていた。続…

 その昔、日本のアトランタ五輪世代は、もしA代表と戦えば、勝ってしまうのではないかと囁かれるほどタレントが揃っていた。続くシドニー五輪は、A代表に限りなく近いメンバーで臨んでいる。

 日本サッカーが当時、右肩上がりで成長していたことを示すわかりやすい事例になるが、当時の勢いを、現在のU-23に感じるかと言えば、残念ながらノーだ。18歳の久保建英に頼らざるを得ない現実がある。A代表しかり。期待の若手が目白押しというわけではない。

 日本サッカー界において、久保は別格の、まさしく”金の卵”として通っている。レアル・マドリードからレンタル移籍したマジョルカでのプレーに注目が集まる理由だが、欧州サッカー全体を眺めると、久保は特別な選手には映らない。有望な若手が育っていないことに、逆に焦りを感じてしまうほどだ。



ジェイドン・サンチョ(ドルトムント)はイングランド史上最高のドリブラーになれるか

 とりわけ今季、欧州のあちこちで、将来性豊かな新星が目に留まるのだ。久保の保有権を持つレアル・マドリードに目をやれば、スタメン級にヴィニシウス・ジュニオールやロドリゴ・ゴエス(いずれもブラジル出身の19歳)がいる。久保がかつて所属したバルセロナにもスペイン人のアンス・ファティ(17歳)がいる。両クラブとともにスペインで3強を形成するアトレティコ・マドリードでは、ジョアン・フェリックス(20歳)が、攻撃の軸として風格のあるプレーを見せている。

 ジョアン・フェリックスは現在、ケガで戦列を離れている。チャンピオンズリーグ(CL)のラウンド16、リバプール戦(第1戦2月18日、第2戦3月11日)に間に合えば、この一戦は面白くなるはずだ。は出場してくるはずだ。このポルトガルの新星を、連覇を狙うリバプールがどう封じるか。番狂わせが起きるか否かの分かれ目はそこにあると見る。

 CLラウンド16でアトレティコ対リバプールと同じ日に対戦するドルトムント対パリ・サンジェルマン(PSG)戦の見どころも同様だ。ひとりの新星が番狂わせのカギを握っているといっても過言ではない。

“格下”と目されるドルトムントで、7番を背負うジェイドン・サンチョ(19歳)がそれにあたる。トリニダード・トバゴ出身の両親を持つイングランド生まれのアタッカー。近年、新星が次々に現れるイングランドサッカー界だが、この選手は別格だ。その最大の魅力はキレキレのドリブル。主に4-2-3-1の3の右サイドから仕掛けるその快活なアクションに、なにより華がある。

 見ていて面白い選手だ。ゴリ押しではない。細かいタッチで相手との角度をずらし、逆を取るように縦方向にスパッと抜く。リオネル・メッシやモハメド・サラーを右利きにして大型化(身長180cm)した選手。わかりやすく言えばそうなるが、アクションは両者よりもダイナミックだ。

 ディエゴ・マラドーナ的と言いたいところだが、マラドーナも左利きだ。右利きのドリブラーとなると、バロンドールにも輝いたルイス・フィーゴを想起するが、フィーゴより切れ味に連続性がある。アタッカーとしての総合力では勝っているように見える。

 サンチョは歴代の名手たちと比較しても、そのイメージの枠に収まらない新鮮さがある。イングランドサッカー史上、最高のドリブラーに成長する可能性がある、希少な価値を秘めた選手だ。

 イングランド代表出場歴は4試合。スタメンは1試合のみだ。きたるユーロ2020に出場する可能性は、先述したジョアン・フェリックスの方が高いと見る。だが、サンチョがドルトムントでいまの調子を維持し、PSG戦などCLで活躍したなら、イングランドのガレス・サウスゲート監督も選ばざるを得ないのではないか。

 代表選手としての実績には乏しいが、ユーロ2020に出場させたい新星はまだいる。アレクサンデル・イサク(20歳/レアル・ソシエダ)とデヤン・クルゼフスキー(19歳/パルマ)。ともにスウェーデン人アタッカーだ。

 イサクは、昨季シーズン半ばに移籍したオランダのヴィレムⅡで、16試合で13ゴールという驚異的な数字を残した190cmの長身ストライカーだ。両親はエリトリアの出身。移民の両親を持つ、オランダリーグ経由の長身ストライカーという横顔は、アヤックスでブレイクした後、ユベントス入りしたスウェーデン代表の大スター、ズラタン・イブラヒモビッチと似ている。

 プレーも同様。スケール感に加え、懐の深い細やかで粘っこい球さばきを活かしたポストプレーを得意にする点も、イブラヒモビッチを重ね合わせたくなる。

 シーズン初めこそ控えに甘んじたが、徐々に出場機会を増やし、いまではスペインリーグを語る上で、欠かせないストライカーになっている。

 ユーロ2004に出場したイブラヒモビッチは、グループリーグのイタリア戦で同点ゴールを叩き込んだことで名を挙げた。ユベントスはただちに、イタリアをグループリーグ落ちに導いたイブラヒモビッチに接触。大会が終わらぬうちに契約を結んだ。ユーロを飛躍の場にしたイブラヒモビッチと、イサクは同じ道をたどることができるか。

 クルゼフスキーも両親は移民だ。こちらの出身はマケドニア。ボスニア・ヘルツェゴビナの血を引くイブラヒモビッチとは、旧ユーゴスラビア諸国出身という点で一致する。似ている点はまだある。クルゼフスキーがすでにユベントスと契約を交わしていることだ。今季は、現所属のパルマにレンタル選手として残るが、来季からはユベントスの一員としてプレーする。

 こちらは左利きだ。旧ユーゴ(モンテネグロ)出身のデヤン・サビチェビッチを彷彿とさせる繊細な技巧に、相手をなぎ倒すように前進する直進性、豪快さを加えた、まさに柔と剛が高次元でバランスよくミックスされたアタッカーなのだ。シュート力、パンチ力もある。サンチョを右利きにし、ひと回り大型化(身長186cm)させたような選手。久保に不足している要素を満載した選手と言ってもいい。

 ポジションは主に4-3-3の右ウイングだが、視野が広くパスも出せるので、プレーの影響力は広範囲に及ぶ。サイドに位置していながらチームの中心的な役割を担っている。

 しかしスウェーデン代表歴はわずかに1。19歳ということもあるが、7試合ある20歳のイサクより、ユーロ2020のメンバーに選出されるかどうかは微妙な立場にある。出場すればブレイク間違いなしといいたくなる選手なので、その前に契約を締結したユベントスの判断は賢かったという見方もできる。

 イサクとクルゼフスキー。20歳と19歳の若手コンビがユーロ2020で、スウェーデン代表の前線を張ることができるか。実現すれば、グループリーグで対戦するスペイン代表には、歓迎したくない相手になるはずだ。スウェーデン代表の今後の動向は気になるところだ。