四大陸選手権で連覇を果たした紀平梨花のフリーの演技 全日本女王の紀平梨花が、男女を通じて日本初となる四大陸選手権2連覇を飾った。フリー演技の直後、笑顔で首を縦に「うん!」と頷く仕草を見せて、納得の表情を見せた。 ショートプログラム(SP)1…
四大陸選手権で連覇を果たした紀平梨花のフリーの演技
全日本女王の紀平梨花が、男女を通じて日本初となる四大陸選手権2連覇を飾った。フリー演技の直後、笑顔で首を縦に「うん!」と頷く仕草を見せて、納得の表情を見せた。
ショートプログラム(SP)1位の紀平は、フリーで4回転サルコウを回避。トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)も1本が1回転になる失敗をしながら、151.16点をマークし、合計232.34点で他を圧倒した。日本勢はこの種目で5年連続優勝となった。
SP5位の樋口新葉は、フリー5位の134.51点で、合計207.46点の総合4位、SP位の坂本花織はフリー8位の129.72点で、合計202.79点の総合5位だった。15歳の韓国のエース、ユ・ヨンが、SP3位から、フリー2位の149.68点、合計223.23点と、いずれも自己ベストを更新して総合2位となり、2009年大会のキム・ヨナ以来、韓国勢として11年ぶりにメダルを獲得した。
紀平はSPで2位のブレイディ・テネル(アメリカ)に約5点差をつけたことで、フリーでは4回転サルコウの挑戦を予定していた。だが、フリーの冒頭に跳んだのは3回転サルコウだった。
「今日(8日)、起きたときの疲労がすごかった。(試合前の)公式練習でアクセルとかほかのジャンプがゆがんでいることが多かったので、そっちを修正しないといけなかったから、4回転サルコウを練習している場合じゃないなというか、ほかのミスは許されないのに、サルコウをやることでもっとほかのジャンプの調子が変になったら嫌だった。だから、練習が終わったときに4回転を跳ばないと決めました。
4回転を跳ばなくて正解だったなと思いますし、4回転サルコウは、練習でやらない時点で絶対にやってはいけないと思ったので、入れたかったけど、自分で跳ぶ自信がない限りは入れたくない。絶対に跳べるって思った時にしか入れたくないので……」
そんな思いで4回転を跳ばなかった。ただ、それによって余裕を持った滑りができるかと思いきや、続くトリプルアクセルでは回転が抜けて1回転半のミスとなった。
しかし、日本のエースは簡単には崩れない。4本目のジャンプで2度目のトリプルアクセルをしっかり連続ジャンプにして成功させた。1.1倍のボーナス点となるプログラム後半では、予定していた3回転ルッツを跳ばす、3回転フリップ+3回転トーループ+2回転トーループの3連続と、練習を積んできた得意の3回転フリップ+3回転トーループの2連続を跳んでみせた。見事なリカバリー力を発揮して、得点を積み重ねて勝利を引き寄せた。
「ひとつめの(トリプル)アクセルがシングルになってしまって、すごく焦りがあったけど、後半のリカバリーで大幅に(ジャンプ)構成を変更して、それがうまくいったのが収穫だったなと思います」
挑戦よりも勝ちにこだわった紀平。負けず嫌いで完璧主義の一面も持つ17歳にとって、勝負に勝つことがいちばんの自信になるのだろう。勝つチャンスがあるなら、絶対にそれを逃さないメンタルの強さがある。外野が何を期待しようが、自分がやるべきことに突き進めるタフさを兼ね備えている。
「昨年も優勝することができて、今回も2度目の優勝を狙っての優勝ができ、SP、フリーともに課題と収穫がすごくあった大会になったので、よかったと思います。シニアの試合は、4回転を入れて大きく崩れることがあってはいけない試合ばかりだったので、慎重になるし、できる時しかやらないようにしないといけない。勝つことがいちばんの目的なので、どの試合でも勝つということは大切にしながらやっている。冷静に判断しているかなと思います」
ただひとり150点台に乗せて四大陸選手権連覇を飾った紀平だが、内容的には物足りなさも感じさせた。難易度の高いジャンプ構成でくる強敵ロシア勢に肉薄してメダル争いを繰り広げるには何が必要か。武器のトリプルアクセルや3回転ルッツをそれぞれ2本組み込むことに加えて、GOE(出来ばえ)加点が付くような4回転サルコウを跳ばなければ、160点台をマークする彼女たちと肩を並べることはできないだろう。
「(日本に)帰ってすぐにまた練習をして、試合もどんどん続くので、トリプルアクセルの安定感とか、あとは(自分に合うように)スケート靴を作り始めて(調整して)、合う靴を世界選手権にいい状態で持っていけるようにしたい。4回転の練習やスピンとステップの強化など、たくさんやることがあるので、いつもどおり、練習の休みはあまりないと思います」
世界選手権まで残り約1カ月。どこまで4回転サルコウの精度を上げてこられるかが、勝負のカギを握る。