中部電力カーリング部北澤育恵&中嶋星奈の「名コンビ」対談(前編)日本選手権連覇を目指して奮闘中の中部電力。チーム勝敗のカギを握るのは、ジュニア時代から一緒に戦ってきた”名コンビ”フォースの北澤育恵とスキップの中嶋星奈だ。ここでは、ふたりのカ…

中部電力カーリング部
北澤育恵&中嶋星奈の「名コンビ」対談(前編)

日本選手権連覇を目指して奮闘中の中部電力。チーム勝敗のカギを握るのは、ジュニア時代から一緒に戦ってきた”名コンビ”フォースの北澤育恵とスキップの中嶋星奈だ。ここでは、ふたりのカーリングへの思いを探りつつ、それぞれの知られざる素顔に迫る--。

--日本女子カーリング界でも、指折りの”名コンビ”であるおふたりですが、こうしてふたりそろって取材を受ける機会は、これまでにもあったのでしょうか。

中嶋 こうしてガッツリ、というのは初めてかもしれません。いい記事になると思いますよ。

北澤 なんで、そう思えるの? 中嶋と一緒だと、あんまり(いい話にする)自信はないです。

中嶋 ちょっと!? 変なエピソード(を話すの)はダメだから!

--まず、おふたりがカーリングを始めたきっかけから教えてください。ふたり一緒に始めたのでしょうか。

中嶋 別々です。私は中学校2年生、14歳の冬です。友だちに「やってみない?」と誘われて。それ以前に、小学6年生の時に行った(SC軽井沢クラブ主催の)親子カーリング体験会で、モロちゃん(両角友佑/現TM軽井沢、兼中部電力コーチ)とテッちゃん(清水徹郎/現コンサドーレ)に教わったことはありますけど、ちゃんと始めたのは、中学生になってからですね。

--両角コーチや清水選手からどんなことを教えてもらったか、覚えていますか。

中嶋 正直、あまり覚えていないんですよね。母がテッちゃんのことを「イケメンだったね」と言って、テンション上がっていたのは覚えています(笑)。

--初めてやったカーリングは楽しかったですか。

中嶋 楽しかったですね。とくにデリバリー。石を投げるというより、スライダーをつけて、氷の上を滑るのが楽しくて、それだけで満足していました。

--北澤選手は、いつからカーリングを始めたのでしょうか。

北澤 中学校2年生の冬から、中学校3年生の春にかけての時期です。もともとは新体操をやっていたんですけど、その先も続けるなら、(地元・長野県の)松商学園高校や伊那西高校のような、家からはちょっと遠い高校を選ばなければいけないんですよ。それで、いろいろと考えている時に、軽井沢スポーツ少年団のカーリングチームができて、その1期生として母経由で誘いがあって、(カーリングを)始めた感じです。

--それから1年もしないで、2011年の日本ジュニア選手権で6位。その後、中嶋選手が加わって、2012年大会が6位、2013年大会では準優勝という好成績を残しました。急成長できた理由はどういった点にあったと思いますか。

北澤 やっぱり指導者がよかったんですかね。モロちゃんとヤマちゃん(山口剛史/SC軽井沢クラブ)がコーチでした。

--未来のオリンピアンですからね。具体的にどんなことを教えてもらったか、覚えていますか。

北澤 う~ん……全然、記憶にないですね。アハハ(笑)。でも、その時に指示されたことを守っているうちに、基本が身についた感じなので、感謝しています。

--中嶋選手についての第一印象はいかがでしょう。何か覚えていますか。

北澤 今はこんなにうるさいですけど、最初はすごく地味だったんです。赤縁のメガネをかけて、髪の毛もしっかり縛っていて。

中嶋 イクべぇ(北澤)も、当時は猫かぶっていたんですよ。男女合わせて10人ちょっとのメンバーがいたんですけど、最初は(お互いに)全然喋っていませんから。

--どの辺りから、仲良くなったのでしょうか。

北澤 私が高校1年生で、中嶋が中学校3年生の時、青森遠征で一緒のチームになったんです。チーム全体がどちらかと言えばおとなしかったので、あまり騒ぐ雰囲気ではなかったのですが、その遠征の移動中、サービスエリアかどこかで中嶋と喋って、『なんか気が合うな』って感じたのは覚えています。まさか、こんなにウザいキャラになるとは思っていませんでしたけど(笑)。

--のちにパートナーとして、世界をともに目指す予感があった、といったエピソードなどはありますか。

中嶋 ないですね。

北澤 ないない。真剣にカーリングに向かい合ったのは、中部電力に入ってからですから。それまでも、ずっとふたりで練習していましたけど、アイスの上で遊ぶというか、ゲーム感覚で(カーリングを)やっていたような感じで。その延長線上に、大会があるような。

中嶋 土日以外は毎日、アイスで遊んでいたもんね。(周りから)よく『飽きないの?」と聞かれたりしたんですが、まったく飽きなかったですね。

--現在はいかがでしょうか。カーリングも、仕事もない日なども、一緒に過ごしていたりするのでしょうか。

中嶋 それは、さすがに別々です。

--それぞれ、オフの日は何をして過ごしているのですか。

中嶋 私は、寝ているか、外に出かけるか。外出する時は、高崎や前橋で買い物をしたり。あとは、友だちとカラオケに行ったりします。

--カラオケではどんなジャンルの曲を歌うのですか。

中嶋 幅広く歌います。下手くそだけど。椎名林檎さんの『歌舞伎町の女王』とか、好きです。

北澤 中嶋は歌い方が独特で、音に合わせて上下左右に首が動く。なんか、昔のアイドルっぽくて、めっちゃ面白いです(笑)。

中嶋 やめろぉ! 言うな!!




オフの日は家にいることがないという北澤育恵

--北澤選手は、どんなオフを過ごしているのでしょうか。

北澤 出かけるのは、好きですね。休みの日に、家にいることはほぼないです。

中嶋 いつも、どっかに行っているよね? 家にいることなくない?

北澤 ライブで名古屋や大阪に行ったり。あとは、東京ディズニーリゾートが好きなので、結構行きます。前に、中嶋と一緒に行ったこともあります。

中嶋 行ったねぇ。写真を撮りまくった時だ。

--そんな仲のいいおふたりですが、各々に対して、カーラーとして尊敬している部分を教えてください。

中嶋(自分に対して)たくさんあるでしょ?

北澤 中嶋は勝負強いですね。何か持っているタイプだと思います。思いがけないラッキーショットが出たりとか、大事な場面ですごいショットを決めたりとか。

中嶋 イクべぇは、波があるんですけど、ピンチになってもチームを救ってくれる、逆境での強さ、みたいなのがすごい。カーリングって、ジュニアから一般に移る時に結果が出ないこともあるんですけど、そういうこともなかったですね。プレッシャーを力に変えることができるのは、羨ましくもあります。

--中嶋選手は、スキップとして2シーズン目。アイスの外での仕事も増えて、たとえばメディア対応などは多くなったと思うのですが、慣れましたか。

中嶋 慣れないですね。難しい質問や長い質問をされると、答えを考えながらしゃべっているうちに、「質問なんだっけ?」という感じになって、自分でも(何を言っているのか)わけがわからなくなるんです。

--そういう時は、チームメイトの誰かが助け舟を出してくれるのではないですか。

北澤 ないです。それも含めて、この人のキャラなので(笑)。でも、もうちょっと面白いことを言えると思うんですけどね。カメラの前だと、優等生ぶるというか、当たり障りのないコメントをすることが多いですね。猫かぶっていますので、気をつけてください。

--さて、大事な日本選手権です。今大会から2022年北京五輪の選考レースが本格的に絡んできます。前回、2018年平昌五輪には惜しくも出場できませんでしたが、五輪への思いをあらためて聞かせてください。

北澤 オリンピックは、自分にとって大きな目標。その舞台を知っているモロちゃんが、昨季からコーチとして(チームに)付いてくれ、日本選手権も勝つことができたので、北京五輪への気持ちは一段と強くなりました。

--オリンピックという舞台に対してのイメージはありますか。

中嶋 世界選手権をもっと”最強”にした感じなのかなぁ? 昨年(3月)、私たちが出場した世界選手権はヨーロッパ開催(デンマーク・シルケボー)だったので、観客が少なかったけれど、あのアリーナの雰囲気に、たくさんのお客さんが入っている感じでしょうか。

--その舞台に立ったら、どういった気持ちになるのか、想像できますか。極端な話、「もうカーリングをやめてもいい」といった心境になったりするのでしょうか。

北澤 まだフワフワしたイメージしかないんですけど、そこまではいかないかな。私はずっと、自分の中で満足するまで、やり切った感があるまで、カーリングは続けようと思っています。

--昨年、日本選手権で優勝して、世界選手権で4位という結果を残しました。そこで、ある程度満足するようなことはなかったですか。

北澤 全然、満たされていないです。まだやり切ってもいないので、もっと(カーリングを)楽しみたいと思っています。

中嶋 私もそうです。まだ「上がある」と思っています。北京五輪に向かって、やり切ることができたら、次のことを考えたいなと思っています。

--カーリングの女子選手は、五輪の翌シーズンに結婚する選手が多かったりしますが、おふたりもそうした人生設計を立てていたりしますか。

中嶋 そういう憧れはあります。一応、五輪が終わったら、結婚したいと思っています。願望だけはあります。

北澤 相手がいないからね。(願望だけで)見込みはない。

中嶋 うん。妄想に近い……。


好きなタイプの男性は

「塩顔」という中嶋星奈

--どんなタイプの男性が好きですか。芸能人にたとえると誰かいますか。

中嶋 私、塩顔が好きなんですよ。宮沢氷魚さんみたいな。

北澤 星野源さんも、好きじゃん。塩顔ではないけど。

中嶋 あっ、好き。え? 星野源さんも塩系でしょ。あれ? 待って……”塩”って、どんな感じかわからなくなってきた……。

--北澤選手は、好きな芸能人はいますか。

北澤 山田孝之さんとか、面白い方が好きですね。ムロツヨシさんも好きです。

--せっかくですから、お互いに「こんな人と結婚したらいいんじゃないか」というアドバイスを送ってあげてください。

中嶋 イクべぇは、安定した会社員か、公務員。彼女のすべてを包んでくれる優しい人ですね。

北澤 う~ん……。中嶋は、スイス遠征の際に、電気ポットをコンロの上に置いて火にかけてしまうような、ヌケている人ですから……。そんな彼女にも、愛想を尽かさない器の大きい人がいいですかねぇ。

(つづく)

北澤育恵(きたざわ・いくえ)
1996年10月12日、長野県生まれ。中学校2年生の時にカーリングを始める。ジュニア時代から全日本ジュニアに名を連ね、フィニッシャーとして将来を嘱望される存在となる。2015年、中部電力に入社。2017年はセカンドを担い、2019年はフォースとして活躍し、チームの日本選手権制覇に貢献した。東京ディズニーリゾートが好きで、お気に入りのアトラクションは『トイ・ストーリー・マニア!』

中嶋星奈(なかじま・せいな)
1997年12月2日、長野県生まれ。14歳でカーリングを始める。すぐに頭角を現して、高校3年時には中部ブロック代表(チーム軽井沢)として日本選手権に出場。プレーオフ進出を果たすなど、世代を代表する選手のひとりだ。2016年に中部電力に入社し、2017年はフィフスとして、2019年はスキップとして奮闘し、チームの日本選手権優勝に貢献した。好きな言葉は、鵜沢将司トレーナーから贈られた「感じるな、考えろ」