第37回 全農 日本カーリング選手権大会(2月8日~16日)が軽井沢アイスパークで行なわれる。 今大会と、新横浜スケートセンターで開催される来年の大会は、2022年北京五輪の代表選考(※)に大きく関わってくる。今大会を勝ったチームが、五輪…

 第37回 全農 日本カーリング選手権大会(2月8日~16日)が軽井沢アイスパークで行なわれる。

 今大会と、新横浜スケートセンターで開催される来年の大会は、2022年北京五輪の代表選考(※)に大きく関わってくる。今大会を勝ったチームが、五輪出場へ事実上の”王手”をかけられるという意味でも、例年以上の熱戦が期待される。
※=2022年北京五輪の日本代表は、今年と来年の日本選手権優勝チーム、2021年1月1日時点におけるワールドカーリングツアーのランキング最上位チームの、最大3チームで代表決定戦が行なわれる。ただし、今年と来年の優勝チームが同じだった場合、そのチームが無条件で五輪代表となる。

 女子は、中部電力、ロコ・ソラーレ、北海道銀行フォルティウス、富士急の「4強」が中心。なかでも、本命視されているのは、2018年平昌五輪で銅メダルを獲得したロコ・ソラーレだ。



優勝候補筆頭のロコ・ソラーレ

 ロコ・ソラーレは今季、ワールドツアー11大会に出場。グレードが高い”グランドスラム”4大会を含め、すべての大会でクオリファイ(プレーオフ進出)を果たしている。安定感という点では、「4強」の中でも群を抜いている。

 世界舞台での戦いに重点を置いて、国内のチームやアイスに対して後手に回ってしまった昨季の教訓を生かして、今季は2年ぶりに国内大会の軽井沢国際(2019年12月)にも参戦。日本選手権への準備もしっかりと進めてきた。

「ラッキーなことに、日本選手権で当たるチームすべてと対戦できて、(各チームの)プレースタイルが確認できた」

 セカンドの鈴木夕湖がそう語るとおり、軽井沢国際では、予選リーグで中部電力と、準々決勝で北海道銀行、準決勝で富士急と対戦。しかも、3戦すべてを白星で飾ったことは、大きな自信となったはずだ。

 スキップの藤澤五月も、「(日本選手権の舞台となる)軽井沢のアイスをあらためて把握できたと思う。(本番へ向けて)いい準備ができました」と笑顔を見せた。4年ぶりの女王奪還へ、仕上がりは万全だ。

 ロコ・ソラーレに対抗する一番手となるのは、北海道銀行か。ワールドツアーでは、ロコ・ソラーレに続いて、グランドスラム大会の常連になりつつある。そのうえ、カナダのオンタリオ州ノース・ベイで行なわれた10月の『マスターズ』では、カナダやスイスの強豪を次々に撃破。日本カーリング史上初の、グランドスラム大会のファイナリストとなった。

 先に触れたとおり、軽井沢国際では準々決勝でロコ・ソラーレに屈したが、エキストラエンド(延長戦)までもつれ込むクロスゲームを披露。会場のファンを大いに沸かせた。

「(ロコ・ソラーレ相手に)手応えのあるゲームができた。あとは(チーム内の)コミュニケーションなどの細かい部分を調整して、チャンスが来た時にほしいポイントを決め切るゲームをしたい。それができれば、自ずと結果はついてくると思います」

 スキップの吉村紗也香は、日本選手権に向けての抱負をそう語った。吉村は自身がスキップを担っての日本選手権優勝はまだない。悲願の戴冠を自身の好ショットで手繰り寄せたい。

「(ワールドツアーランキングの)上の2チームに挑戦するにふさわしい位置には来たと思っています」

 そう語るのは、富士急のスキップ・小穴桃里。富士急は今季、ワールドツアーでチーム史上初のツアー優勝を飾り、ここまでにツアー2勝を挙げてきた。その結果、ツアーランキングは13位と大躍進(2月10日時点。以下同)。小穴が「上の2チーム」と言うツアーランキング4位のロコ・ソラーレ、同8位の北海道銀行を追走する。

 その成績が示すとおり、地力アップは明らかだ。小穴は、今季ここまでの戦いを振り返って「いい展開のエンドを作る回数が増えた」と言い、一定の強化に自信を見せた。

 今大会では、ラウンドロビン(総当たりの予選リーグ)初戦で、北海道銀行と対戦する。彼女の言う「いい形」でスコアを先行させて白星スタートとなれば、昨年覇者の中部電力のように、一気に走る可能性もある。初戦の戦いぶりに注目したい。

 その昨年覇者の中部電力は、”ホーム”開催の今大会で連覇が期待されているが、全勝で女王となった昨年のハイパフォーマンス時に比べると、この1年はややおとなしいシーズンを過ごしてきた印象だ。

 日本代表として出場した11月のパシフィック・アジア選手権(PACC)こそ、準優勝という結果を残して、日本の世界選手権(3月/カナダ・プリンスジョージ)出場枠を獲得したが、ワールドツアーランキングは「4強」の中で最下位の32位。PACCに標準を合わせたチーム作りを最初に行なって、その分のツアースケジュールが奪われたとしても、物足りなさを感じる。

 フォースの北澤育恵の技術や決定力は、他の3チームと比べても遜色ないどころか、シチュエーションによっては、むしろアドバンテージがある。昨年の世界選手権でも高い決定力を示した北澤と、藤澤、吉村、小穴ら世界トップクラスで結果を残したフィニッシャーとのハイレベルな投げ合いを、多くのファンが期待しているだろう。

 連覇にはまず、その戦いにチームとして参戦することから始まる。リードの石郷岡葉純、セカンドの中嶋星奈のフロントエンドが、他チームと互角以上のセットアップを組み立て、北澤のストロングポイントを引き出したいところだ。

 また、JCA(日本カーリング協会)は今大会、2010年バンクーバー五輪をはじめ、2014年ソチ五輪、2018年平昌五輪でもアイスメーカーとして、世界レベルのシートを製氷したスイス系のカナダ人、ハンス・ウーリッヒ氏をチーフアイスメーカーとして招聘。どちらかと言えば、ストレート気味の特徴を持つ軽井沢のアイスだったが、世界での戦いを意識した、よく曲がるアイスへと切り替わった。そのアイスに、どこが素早く対応していくのか、それも勝負の分かれ目となりそうだ。

 はたして、ロコ・ソラーレがカーリング界の”主役”の座を奪還するのか。北海道銀行や富士急が新時代を築くのか。はたまた、中部電力が連覇を遂げて、女王として君臨し続けるのか。

 いずれにしても、頂点に立ったチームが北京五輪へ向けて、大きな一歩を踏み出すことになる。世界レベルのアイスで、質の高いゲームが見られることは間違いない。予選から決勝まで白熱の8日間の戦いを、存分に堪能したい。