わずか1週間という短期間で、レアル・マドリードがコパ・デル・レイ、ラ・リーガ、チャンピオンズリーグ(CL)の全タイトル…
わずか1週間という短期間で、レアル・マドリードがコパ・デル・レイ、ラ・リーガ、チャンピオンズリーグ(CL)の全タイトルを失い、マドリディスタが絶望を味わった時から約1年が経つ。
指揮官ジネディーヌ・ジダンは、今シーズン絶えず試行錯誤を繰り返し、チームは2月6日のコパ・デル・レイ敗戦まで、公式戦21試合連続無敗をキープした。昨年10月19日にアウェーで行なわれた、久保建英擁するマジョルカ戦での敗戦から、15勝6分0敗だった。

シーズン中盤を21戦負けなしで進んだレアル・マドリード。アトレティコとのダービーでは、好調のベンゼマがゴール
クラブおよびラ・リーガ史上の公式戦連続無敗記録は、ジダンが率いて達成した2016-17シーズンの40試合だ。現在チームは、ジダン自身が樹立した大記録に向かい、一歩一歩着実に進んでいる。
2020年に入り、レアル・マドリードはサウジアラビア開催のスーペルコパで、バレンシア、アトレティコ・マドリードを撃破し今季初タイトルを獲得。ラ・リーガでは、ヘタフェ、セビージャ、バジャドリード、アトレティコ・マドリード相手に4連勝して首位の座を奪還している。残念ながら、メンバーを大きく入れ替えたコパ・デル・レイでは、準々決勝でソシエダに敗れてしまった。
そして、2月26日に大一番のCLラウンド16第1戦、マンチェスター・シティ戦を迎えることになる。
ここまでの成功の要因は、守備の改善にほかならない。シーズン開幕当初は90分間集中力が持続せず、簡単に失点を許す場面が何度もあった。しかしそれもすでに過去の話。徐々に安定感を取り戻し、今季ここまでの公式戦33試合中16試合(リーガ12試合)で無失点に抑えている。
この守備面では、GKティボー・クルトワが復調し、”頼れる守護神”として大きく貢献しているのは間違いない。昨年10月1日のCLクラブ・ブルージュ戦で見せた酷いパフォーマンスを最後に、今では度重なるファインセーブでチームを救う完全復活を遂げている。
DF陣は、安定したパフォーマンスを披露するセルヒオ・ラモスとラファエル・ヴァランのCBコンビが、今季は圧倒的だ。これまで公式戦23試合を共に先発出場して一度も負けておらず、欧州5大リーグを見渡してもこの成績を上回るCBコンビは存在しない。
また、左サイドバックのポジション争いで、フェルラン・メンディがマルセロに勝利しているのは、最近の大きな変化と言える。序盤こそ移籍金4,800万ユーロ(約57億6,7000万円)の価値を示せないでいたが、マルセロの負傷欠場のチャンスをうまく生かした。最初は堅固な守備で目立ち、今では攻撃面でも光る活躍を見せている。
守備面以外で目立つことを挙げるなら、ジダンがスーペルコパで新たなシステムを使用した点だ。それは、カゼミーロ、トニ・クロース、ルカ・モドリッチ、フェデリコ・バルベルデ、イスコの、MF5選手を同時起用する4-5-1である。
MF陣では、ジダンはこれまでバルベルデを、モドリッチとの同時起用を極力避け優先的に使ってきた。バルベルデは今季の台頭が著しく、シーズン開幕時の獲得候補だったポール・ポグバ(マンチェスター・ユナイテッド)の名を忘れさせている。”ボックス・トゥ・ボックス”のプレーヤーとしてピッチ全体をカバーし、2月1日のラ・リーガのマドリードダービーではその闘争心から最も拍手を受けた選手となった。
一方、ケガとバルベルデの台頭により重要度が下がったかに見えるモドリッチも、ボールを動かす高い能力は健在で、得点に絡むシーンも増え、再びその存在感を高めている。
クロースは、チームが失敗に終わった昨シーズンの戦犯のひとりに挙げられていたが、今季は完全復活を遂げ、シーズンを通して最も安定したパフォーマンスを見せている。これは、カゼミーロとバルベルデがダブルボランチを形成したことで、より自由にプレーできるようになったからだ。今季はこれまで以上にゴールに絡むシーンが多く、完璧なフィジカルコンディションでチームの司令塔として君臨。レアル・マドリード入団以降、最もすばらしいシーズンを送っていると思われる。
カゼミーロはクロース同様、今季最も好調のひとりであり、ジダンにとって替えのきかない絶対的レギュラーである。ほぼすべての試合に出場する鉄人ぶりを発揮し、チームを中盤の底で支え、相手の攻撃を素早く摘み取っている。
中盤最後のピースになっているイスコは、シーズン序盤、出場時間がほとんど与えられていなかった。しかし、ホームで行なわれた11月末のCLのパリ・サンジェルマン戦で予想外のスタメンに大抜擢されると、そこから信頼を取り戻し、その類稀なテクニックで何度も観衆を沸かせている。
このように、好調なMF陣を同時起用するジダンの選択は正しいと思われた。しかし2月1日のラ・リーガのマドリードダービーでは、前半、この布陣が機能しなかったため、ジダンはレアル・マドリード監督としてのキャリアの中、初めてハーフタイムに2選手を交代させている。
前半両サイドの攻撃が停滞したため、クロースとイスコを下げ、後半最初からヴィニシウスとルーカス・バスケスをピッチに入れて、両翼を使う戦い方に切り替えた。もっともこの采配は見事に的中し、試合の流れを変えて勝利をつかみとった。
この監督としての判断の的確さも成功の要因ではあるものの、ジダンは試合後、「我々はスーペルコパ準決勝バレンシア戦を、あの5人の中盤で戦ってとてもよかったし、決勝戦もそうだったが、今日はうまく機能しなかった。……交代選手が試合を変えたのはたしかであり、前半で2選手を交代させたのは不快だったが、そうする必要があった」と説明し、4-5-1のシステムがまだ発展途上であることを明かしている。
守備の改善が、21戦無敗の大きな要因になった一方、その陰に隠れた不安要素として得点力不足がある。
CFではカリム・ベンゼマひとりが機能しているだけで、6000万ユーロ(約72億円)で入団したルカ・ヨヴィッチはほとんど結果を残せず、マリアーノ・ディアスは戦力外。そしてガレス・ベイルはケガ明け後、マドリードダービーでは監督判断により招集外となる不確かな状況が続き、ロドリゴもデビュー時の勢いが失われている。
だがここに希望の光を与えているのが、最近チーム練習に復帰し、CLのマンチェスター・シティ戦の大一番に照準を合わせていると言われる、エデン・アザールの存在だ。負傷前にはすでに昨シーズンまでの本来の姿を取り戻していただけに、ファンの期待は非常に大きなものとなるはずだ。
さらにヴィニシウスの復調も、ジダンにとって大きな武器となる。相変わらず決定力不足という問題を抱えているが、1対1の強さは圧倒的。ラ・リーガのアトレティコ戦では試合の流れを変える役割を果たし、ベンゼマのゴールをアシストしたメンディに華麗なスルーパスを送っている。
今現在、ジダンの手元には好調な選手が揃っており、今冬の移籍市場での即戦力の補強は行なわなかった。シーズンも佳境に入り難しい戦いが続く中、ジダンがどのようにピースを組み合わせるのか。タイトル獲得までの道のりを、我々は興味深く見守ることになるだろう。