ノバク・ジョコビッチ(セルビア)はなぜ観客から愛されないのか。「全豪オープン」決勝での観客の態度について、世界中のメディアが反応した。ジョコビッチは、過去7回の優勝者として「全豪オープン」決勝…

ノバク・ジョコビッチ(セルビア)はなぜ観客から愛されないのか。「全豪オープン」決勝での観客の態度について、世界中のメディアが反応した。

ジョコビッチは、過去7回の優勝者として「全豪オープン」決勝戦に臨み、ドミニク・ティーム(オーストリア)と対戦した。だが会場のメルボルン・パークで、観客から圧倒的な応援を得ることはできなかった。ジョコビッチの試合では珍しい光景ではないが、観客たちはジョコビッチの敗北を望んでいるかのようだった。豪Yahoo! Sportが伝えている。

ジョコビッチは紛れもなく「全豪オープン」史上最も偉大なチャンピオンなのだが、ファンが応援していたのはメジャー優勝17回を誇る王者ではなく、ティームだった。さらに状況が悪化したのは、ラリー中に声を上げたファンにジョコビッチが怒りを爆発させ、「黙れ!」と叫んだ時だ。審判に観客をコントロールするよう抗議しているジョコビッチに対しては、ブーイングまで起きた。

ある人は、ただ単にオーストラリア人は判官贔屓なだけだというが、ロジャー・フェデラー(スイス)やラファエル・ナダル(スペイン)がジョコビッチと同じように扱われたことはない。しかし、観客のジョコビッチに対する態度を、「不名誉」で「恥ずかしい」と感じている人もいる。

世界のメディアの分析は

米ニューヨークタイムズ紙のBen Rothenberg氏は、ジョコビッチを取り巻くアイロニーについて触れた。ジョコビッチがいつも必要以上にファンサービスをしてファンへの愛を示しているのに対し、ファンから同じだけ返されることは稀だと強調した。

Rothenberg氏は、去年シンシナティでジョコビッチがサインしていた時の写真数枚をリツイートし、「ジョコビッチは大きな試合で観客から応援されないこともあるが、ファンサービスに関しては彼は確実にNo.1プレーヤーだ」と書いた。

「いくつもの大会でジョコビッチやその他の選手を観察した経験から、彼ほどファンとポジティブな交流ができるよう務めるトップ選手は他にいない。ファンの数は少なくても、彼は常に素晴らしい時間を与えている」

英The Independent紙のAlex Pattle氏は、ジョコビッチについて「男子テニス界から本当に必要とされながらあまり愛されないプレーヤー」と評した記事を発表した。Pattle氏は、ジョコビッチはフェデラーやナダルのように万人から愛されることはないだろう、と指摘した。

「もしかしたら、ジョコビッチはティームに次世代プレーヤー初のメジャー大会制覇をさせてあげるべきだったのかもしれない。そうすれば、世界中の大勢のテニスファンの中での彼の立ち位置を改善できたかもしれない。ジョコビッチが他のどこの観客よりも愛してやまないのに、明らかに圧倒的にティーム派だったメルボルン・パークの観客たちでさえも、彼に対する評価を変えたかもしれない。だがもしティームのネットの向こう側に立っていた選手がフェデラーだったら、一体ファンはどちらを応援しただろうかと考えざるを得ない」

印The Indian Express紙のDipankar Lahiri氏は、ファンがプレーヤーを応援する心理にジョコビッチが当てはまらないと言う。

「フェデラーは、“スイス時計のような正確さ”を持った“アーティスト”。ナダルは、“闘牛の強さ”を持った“戦士”だ。この2つの両極を競い合わせれば、語り継ぐべきスポーツの戦いが生まれる。ジョコビッチの登場と、彼がその後すごいスピードで数々の優勝を遂げていった姿はこの物語にそぐわない。戦争によって荒廃したプールでテニスをして育ったセルビア人というのは、“アーティスト対戦士”というストーリーと相容れないのだ」

UAEのウェブメディアThe NationalのJon Turner氏は、オーストラリアのファンはジョコビッチがあまりに強いので、うんざりしているのでは、と考えている。

「過去10年のうち7回トロフィーを獲得しているジョコビッチの“全豪オープン”での圧倒的強さは、控えめに言って退屈になってきているのでは。彼の上手さは華やかなものではないのでテニスファンが夢中になりにくく、易々と優勝してしまうので“全豪オープン”の男子シングルスから興味をそいでしまう。グランドスラム17回優勝のチャンピオンは、ただ強すぎるのだ」

(テニスデイリー編集部)

※写真は「全豪オープン」でのジョコビッチ

(Photo by Fred Lee/Getty Images)