2月1~2日に行なわれた、スキージャンプW杯札幌大会。今季はこれまで3勝してW杯総合4位につけている小林陵侑(りょうゆう/土屋ホーム)にとって、結果は悔しいものとなった。



苦しい状況の中でも、巻き返す力を見せた小林陵侑

 風の向きや強弱がころころ変わり「W杯の中ではもっとも難しいジャンプ台」と言われる大倉山だが、予選では132mを飛んでトップ通過。「予選ではだいぶスピードも出てきて、いい感じのイメージになりました」と納得の表情を見せた。

 風が予選より強くなった第1戦の1本目は、そのいいイメージどおりに、平均値より少し強い秒速1.79mの向かい風の中でヒルサイズ(137m)超えの141.5mを飛んだ。2位につけたシュテファン・クラフト(オーストリア)に、飛距離に換算すれば3m強となる6.1点差をつけてトップに立ち、札幌での初優勝を感じさせた。

 しかし、2本目は1本目と同じ5番ゲートからスタートする中で、風に泣かされる展開に。

 小林の前に飛んだ、1本目4位でW杯総合1位のカール・ガイガー(ドイツ)が0 .66mの弱い向かい風で116.5mに落ちると、2位のクラフトと3位のダビド・クバツキ(ポーランド)も、1m弱の向かい風で120m台中盤までしか飛距離を伸ばせなかった。そして陵侑も風の向きが安定せず、110mに落ちて順位を15位まで下げた。

「帰国してからリラックスできていたので、ジャンプも全体的にクリアなイメージで臨めたし、1本目も2本目もそんなに悪くないジャンプができたと思います。でも2本目は空中に出た瞬間にエアーポケットに入ったように風圧を何も感じなかったので。本当に大倉山は難しいと感じました」(小林)

 日本チームの宮平秀治ヘッドコーチも厳しい風だったと語る。

「ゲートに入った時は追い風が吹いていて、モニターでもコントロールの最低限を超える赤い表示になっていました。そのあと一瞬だけよくなってシグナルが青になったけど、出すには厳しい状況だったので5~7秒待ったのですが、改善の見込みがなかったという状況ですね。上の方は斜め横の向かい風だったけど、下は観客席からの横風で……。このジャンプ台はそういう風が吹くとよくないので110mに落ちたのかなと思います」

 そんな不運な小林とは対照的に幸運に恵まれて、2012年の伊東大貴以来、札幌大会で日本人優勝を果たしたのは佐藤幸椰(ゆきや/雪印メグミルク)だった。今季は第3戦目でW杯初優勝を果たしながらも、年が明けてからは少し苦しんでいた。

 この日の1本目は2.05mの向かい風をもらって137.5mを飛んで6位につけると、2本目も1.40mのいい向かい風をもらって138.5mを飛び、逆転で優勝をさらったのだ。

「昨日の予選は18位とよくなかったので、今日はアプローチ姿勢を組んだあとは何もしないと考えて飛びました。いつもはよくないと短い助走の中で意識するところを変えたりしていましたが、成績が安定しない原因はそれだと思ったので。

 僕が飛んだあとの選手はみんな条件が悪くて、カミル・ストッフ選手(ポーランド・W杯総合5位)の条件を見たら、絶対に飛べないなというくらいだった。小林が降りてきた時に『ごめん、俺が全部もらっちゃったわ』と言ったら、僕の順位をわかってなかったみたいで、『えっ、幸椰さん優勝ですか』と言われました」

 こう言って笑顔を見せる佐藤は、「この難しい大倉山の条件の中で優勝できたのはうれしいですが、少しフェアじゃなかった感じもするので、ちょっと残念な気持ちもあります。でも応援に来てくれたファンが喜んでくれたのはうれしい」と複雑な胸中を口にした。

 161cmと小柄ながらも、力強くインパクトを与える飛び出しで、空中に出てからは動かずに我慢し続ける技術があったからこそ、チャンスを生かして勝利できたとも言える。

 しかし2日目は風に恵まれず、1本目10位のあとの2本目は、「納得できる距離を飛びたいと狙いすぎた」と力んでしまい、順位を16位まで下げた。それとは逆に小林はしっかりと力を見せてきた。1本目は少し力の入る踏切になって128.5mの4位。2本目は彼の時からゲートが1段下げられ、向かい風0.97mとそれほどいい条件ではないながらも132mを飛んだ。そのあとのガイガーとクバツキのときは風がさらに弱まり、小林が3位になって、今季7回目の表彰台に上がった。

「今日もそんなにいい条件ではなかったですが、その中ではいいジャンプができたと思います。でも、もうちょっと足りないな、という感じがした試合でした。悔しいけど、安定した力を出せたのはよかったと思います。今の状況では総合優勝に関して、ちょっと厳しいかなと思いますが、僕は僕のできるジャンプを一本ずつやっていくしかないので……。このあとは、2戦後にフライングヒルもあるので、それを楽しみにしています」

 こう話す小林を、ナショナルチームの岡部孝信コーチは「昨日の悔しさもあっただろうから1本目は少しミスをしていたし、いい時の飛び出しとはまだ少し違っているけど、それでも3位になったのはすごいこと」と評価する。

 また、所属チームの監督でもある葛西紀明は「完全に勝てる試合を落としたのは、以前の僕と一緒ですね。一番勝ちたいと思う地元で優勝できないのは本当に悔しいから……。昨季ができすぎ、というのもあるかもしれないけれど、今季もそんなに悪くない。今は風が当たるか当たらないかだけで、(順位が)一気に変わってしまうくらいに世界のレベルが上がっている」と話す。

 そんな世界のレベルに日本が対抗できるようになったのは、昨季の小林の圧倒的な強さが原因だろう。彼の活躍に刺激を受け、佐藤幸椰が2勝できるまで力をつけてきただけでなく、22歳の佐藤慧一(雪印メグミルク)も今回の第2戦では自分のジャンプを2本そろえて自己最高の12位に入っている。

 荒れる大倉山の風に翻弄される試合ではあったが、日本チームとしては成果を感じる大会になった。