2月1日、リーガ・エスパニョーラ第22節。ディエゴ・シメオネ監督が率いるアトレティコ・マドリードは、敵地でレアル・マド…
2月1日、リーガ・エスパニョーラ第22節。ディエゴ・シメオネ監督が率いるアトレティコ・マドリードは、敵地でレアル・マドリードとマドリードダービーを戦い、1-0と敗れている。

マドリードダービーでのディエゴ・シメオネ(左)、ジネディーヌ・ジダン両指揮官
前半は、シメオネのチームらしさが出た。FWアルバロ・モラタ、MFマルコス・ジョレンテ、DFフェリペ、GKヤン・オブラクと縦のラインが屈強さを見せ、レアル・マドリードの攻撃を分断。ビトーロ、アンヘル・コレアが素早いカウンターを見せ、守りながら優勢を作る戦いが功を奏していた。
しかし後半、レアル・マドリードが2枚替えでヴィニシウス・ジュニオール、ルーカス・バスケスのサイドアタッカーを投入すると、アトレティコは後手に回る。右サイドでヴィニシウスに2人が張り付いたことで、トマ・レマルが完全に背後を取られ、サイドを崩され、折り返しをカリム・ベンゼマに合わされた。モラタがケガで交代を余儀なくされた影響もあって、反撃に転じられなかった。
アトレティコは、暫定で6位に転落。首位レアル・マドリードとの差は13ポイントに開き、優勝は厳しくなった。
22試合で22ゴールと得点力不足は深刻だ。モラタは7得点と奮闘するが、ジエゴ・コスタは椎間板ヘルニアで離脱。バルサの総得点の半分にも及ばない。
そこで冬のマーケット、クラブはウルグアイ代表FWエディンソン・カバーニの獲得交渉を進めていた。カバーニ本人とは当初から合意に達し、所属するパリ・サンジェルマン(PSG)との交渉も500万ユーロ(約6億円)から1800万ユーロ(約22億円)に移籍金を引き上げ(カバーニは今シーズン限りでPSGとの契約が切れるだけに、駆け引きが必要だった)、どうにか決着しそうだった。ところが、カバーニの代理人がボーナスを要求したことで、交渉は暗礁に乗り上げた。
ただし代理人側はこれを否定。カバーニは給料ダウンも受け入れていたが、「アトレティコがPSGと交渉できていなかっただけ」と主張している。
「我々には、目標にたどり着くだけの戦力があると確信している」
敗戦後も、シメオネはそう言って弱気を見せていない。シメオネ・アトレティコはどこへ向かうのか--。
今年1月、アトレティコ・マドリードはスーペルコパ(スーパー杯)でレアル・マドリードに敗れ、タイトルを逃している。また、スペイン国王杯でも、2部B(実質3部)のクルトゥラル・レオネサに2-1で敗退。シメオネ・アトレティコの象徴だった「勝負強さ」がなくなってしまった。
シメオネは、アトレティコの伝説的指揮官と言える。いまや年俸は2000万ユーロ(約24億円)以上。監督としては世界トップレベルのサラリーで、チーム内のどの選手よりも高給取りである。
選手時代をアトレティコで過ごしたシメオネは、2011-12シーズンの途中に、監督として戻ってきた。その途端、不安定だったチームを完全に掌握。同シーズンにいきなりヨーロッパリーグで優勝した後、2012-13シーズンはスペイン国王杯優勝。2013-14シーズンはリーガ・エスパニョーラで優勝し、チャンピオンズリーグ(CL)でも準優勝している。
シメオネ・アトレティコは、徹底したリアクション戦術で相手を震え上がらせ、強豪として君臨するようになった。
「チョリスモ」
チョロとはシメオネの愛称で、チョリスモは「シメオネ主義」のように訳せるだろうか。勝利を第一にすることを本質とし、なりふり構わない敢闘精神と執拗なまで堅固に守れる組織が完成。現役時代のシメオネのプレーさながら、「目の前のボールに食いつき、その場でひとりひとりが負けない」という戦い方を、選手に”移植”することで成り立っていた。
しかしいま、「ひとつの周期が終わった」とも囁かれる。チョリスモの体現者だった2人、DFディエゴ・ゴディン(現インテル)、MFガビ(現アル・サッド)のプレーが下降線をたどり、退団。その後のパワーダウンは切実で、かつての敵を恐れさせた精強さはない。
今シーズン、シメオネは新時代を切り開くために、フランス代表FWアントワーヌ・グリーズマン(現バルセロナ)に代えてポルトガル代表FWジョアン・フェリックスを獲得して挑んでいる。しかし、ジョアン・フェリックスは守備的な戦い方の中で、ファンタジーを見せられず、窮屈そうに見える。全体的にプレーが噛み合っていないのだ。ケガ人が多いことはあるにせよ、チームのアップデートは進んでいない。
「チョロを信じている。必ず挽回する!」
アトレティコのファンはまだ大半が、チョリスモへの信仰を失っていないと言われる。
しかし、求心力は永遠ではない。
2月18日、本拠地ワンダ・メトロポリターノで、シメオネ・アトレティコは欧州王者リバプールを迎撃する。CLラウンド16。そこでひとつの審判を下されることになるだろう。