スペイン国王杯4回戦。リーガ2部4位のサラゴサは、1部首位レアル・マドリードをホームに迎えた。サラゴサ市の祝日とも重な…

 スペイン国王杯4回戦。リーガ2部4位のサラゴサは、1部首位レアル・マドリードをホームに迎えた。サラゴサ市の祝日とも重なり、チケットは早々に完売。いつもは試合の趨勢が見えると終了前に帰路につく観客も多いなか、この日は試合が終わっても大多数がスタンドに残った。結果は0-4と、厳しい現実を突きつけられたが、それでも奮闘した選手たちに、温かい拍手が送られた。



スペイン国王杯レアル・マドリード戦にフル出場した香川真司(サラゴサ)

 先週末のリーグ戦に出場がなかったことから先発が予想されていた香川真司は、フル出場を果たした。3回戦で久保建英が所属する1部のマジョルカを倒すと、香川は「次はレアルかバルサとやりたい」と意気込みを口にしていたが、実際に対戦することになるとは”引き”の強さだろうか。

 香川はサラゴサ入団直後の8月、こんなことを言っていた。

「レアル、バルサとの対戦はもちろんイメージはするけど、(現実的には)考えてない。2部でやるって決めたから、試合に集中して、一回(そういう考えを)シャットアウトしてやっていきたい」

 紆余曲折の末、昨年の夏、憧れのスペインにやってきた。だが、その舞台は2部だった。それでも、あくまでサラゴサに馴染み、腰を据えて活躍したいと思った香川は、あえて大きな楽しみを望まないでいた。ドルトムントでの終盤やベシクタシュ時代の不調から自分自身を立て直す必要もあり、地に足をつけた地道な再スタートを誓った。

 それだけに、マジョルカ戦後の「レアル、バルサと対戦したい」というコメントは、この半年間で少なからず手応えを得たという証だろう。

 そしてこの日、香川の意気込みは明らかだった。チーム全体のシュート15本のうち、5本を香川が放った。23分にはペナルティエリアの手前から左足でシュート。枠内ギリギリだったが相手GKに阻まれた。30分にも右からワンツーでゴール前に切り込み、ペナルティエリア外から左足でシュート。これは相手DFにあたってCKになった。

 時間の経過とともに、サラゴサは香川のクオリティーに頼るようになった。絶妙に相手から距離をとった位置でボールを受け、パスをつなぐ。ボールが収まり、ほんの数秒でも時間を作れる唯一の選手が香川だった。

 サラゴサに来てからも、香川の苦戦は続いていた。激しいコンタクトでボールを奪っては、前線にやみくもに蹴り出す、いかにも2部らしいスタイルのなかで、香川の存在感は失われがちだった。香川に預けてもスピードが落ちる。一気に攻めたいチームの雰囲気とはどこかかみ合わないところがあった。

 だが、相手のレベルが上がれば、ロングボール一辺倒ではとても戦えない。結果的にレアル・マドリード戦では、ふだんよりボールが香川を経由することになった。

 後半、敗色が濃厚になってからは、自身の結果にフォーカスしたのかもしれない。いずれもフリーで、63分には左足、84分には右足のシュートを放ったが、惜しくも決まらなかった。一か八かのところでは、シュートを打たず、パスを選択することが多い香川だが、この日はそうではなかった。

 サラゴサのビクトル・フェルナンデス監督が称えたのは、78分にルイス・スアレスに通した1本のパスだった。後方からパスを受けた香川は、またぎフェイトを入れながら相手を翻弄し、2人が寄せてきたところで、その間を通した。スアレスのシュートはGKに阻まれたが、相手DFにとっては危機一髪のシーンだった。

「彼がルイス・スアレスに出したパスはすばらしかった。他の人には見えないパスコースが彼には見えている」

 フェルナンデス監督は香川の能力を高く評価した。

「彼はとてもよくサッカーを知っており、しかもそれは身についたものだ」

 そして、課題と期待をおり交ぜながら次のように話した。

「彼は、特にホームでは重要な選手でなくてはならない。相手がゴール前を固めてくるなかで、彼にはパスコースが見えている。彼は違いを作ることで、我々の力になってくれないといけない」

 香川のポテンシャルは認めているし、期待値も高い。だがそれを最大限発揮できているかといえば、現状はそうではないということだろう。

 スペイン2部は1、2位が1部に自動昇格、3~6位がプレーオフに回る。サラゴサは週末のリーグ戦で現在首位のカディスとアウェーで対戦する。目下のところ勝ち点差は6あるが、1試合未消化のサラゴサにとって、勝ち点3を得れば一気に首位に近づくことを意味する。1部昇格を目標とするチームには、きわめて重要な試合だ。

 この一戦で、香川はどのような立ち位置を与えられるだろうか。先発であれ、ベンチスタートであれ、継続して「チームの力になる」ことを見せる必要がある。