ラグビーワールドカップ(W杯)による盛り上がりを日本ラグビーの発展にどうつなげるのか。社会人のトップリーグ(TL)を発展解消して2021年秋に開幕する新たなリーグのカタチが見えてきた。日本ラグビー協会は1月28日、新リーグの参入要件を発表…

 ラグビーワールドカップ(W杯)による盛り上がりを日本ラグビーの発展にどうつなげるのか。社会人のトップリーグ(TL)を発展解消して2021年秋に開幕する新たなリーグのカタチが見えてきた。日本ラグビー協会は1月28日、新リーグの参入要件を発表した。



左から、太田治氏(トップリーグチェアマン) 、谷口真由美氏(日本ラグビー協会理事) 、岩渕健輔氏(日本ラグビー協会専務理事) 、清宮克幸氏(日本ラグビー協会副会長)

 ポイントは、①参加団体は事業機能を持つこと、つまり「稼げる組織」として自立すること、②企業チーム以外にも門戸を開くこと、③チーム数は1部、2部とも、8~12チームで構成すること、④地域密着を目指し、チーム名に地域名を入れること、⑤本拠の地域を決めてホームゲームを開催できるスタジアムを確保し、1試合あたり15000人の観客動員を目指すこと、である。

 そもそも、なぜ、現行のトップリーグのままではダメなのか。日本ラグビー協会の岩渕健輔専務理事は、30年以内にラグビーW杯を日本に再招致する方針を踏まえ、「ラグビーそのものが日本の中で意味あるものになっていくように、30年後もファンに愛されて、発展する、また代表が強くあり続けるため」と説明し、次のように続けた。

「(日本代表の)競技力を高めるためには、国内リーグのレベルをより高め、競技力を高めるリーグに変えていく必要があります。また日本ラグビーが持っている大きなコンテンツのひとつとして、準備室、法人を立ち上げて、ラグビー協会ではできないようなスピード感を持って進めていく必要があると思っています。今のトップリーグがさらに発展しないと、この先、日本ラグビーの発展は難しいということから今回の決断に至りました」

 新リーグのマーケティング準備室長を兼任する日本協会の清宮克幸副会長は、「なぜ(副会長を)受けたのかというと、(日本ラグビーの)危機感からです」と言った。

「このままでは日本のラグビーが、ラグビーの未来が…。自分のチカラが何かしらのカタチで発揮できるんじゃないかというのが、僕の動機なので。まだリーグのカタチも最終的な部分も決まってないので、いくらぐらいのスポンサーが付くとか、放映権が付くとか見えないですね。ただ、こういうカタチになると、こうなるというのは僕の中にしっかりあります」

 プロスポーツの主な収入源といえば、入場料、放送権料、スポンサー料である。清宮副会長は「しっかりとしたカタチをつくり、日本のラグビーの未来を創れる原資を彼に渡そう」と言って、笑いながら、右手で隣の岩渕専務理事の肩をたたいた。

 ラグビーのプロリーグ構想が昨年7月に明らかになってから議論が進められてきたが、TLの参加企業からプロ化そのものや議論の進め方に反発もあって、劇的な改革はトーンダウンされた。そこで日本協会は昨年11月に「新プロリーグ設立準備委員会」を設置して、検討を進めてきた。

 結果、サッカーのJリーグやバスケットボールのBリーグのようなプロリーグとは違うカタチとなりそうだ。新リーグの法人準備室長を務める日本協会の谷口真由美理事は、選手の契約形態について問われると、「あらゆる可能性を模索したい」として明言を避けつつ、「選手のステータスはチームと詰めていく」と説明した。つまり、プロ契約、社員契約選手混在の現状と同じということだろう。

 ちなみに、1993年に発足したJリーグの参加要件では、「18人以上のプロ選手との契約」と定められていた。

 また①チームの運営機能としては、「事業機能を持つこと」とし、必ずしも分社化を求めないことになった。会社の事業部のくくりでもいいということだ。現行のトップリーグ16チーム、トップチャレンジ8チームの計24チームの撤退を避けたいためで、谷口理事は「ラグビーならではの多様性というか、ゆるさというか、そういうのでいいんじゃないかという結論に至りました」と説明した。

 ②では、例えば、今年でスーパーラグビーから撤退するサンウルブズが何らかの形で参入することも可能になる。③の1部リーグのチーム数は、試合の価値を高めるため、現行のトップリーグから大幅に減ることになりそうだ。なお1、2部の昇格、降格制度を導入する方針。④のチーム名では、地域名を入れる必要があるが、企業名を加えることも認めている。

 ⑤の観客動員でいえば、昨季のTL1試合平均が約5000人。W杯効果で今季は昨季の倍以上のペースで推移している。集客目標を15000人に定め、同規模のスタジアムを2023年シーズンまでに確保できるよう努力するとした。義務ではなく、努力目標とすることで参加団体の意思を重視する。

 日本協会としては、3月末までに参加意思を確認し、審査を経て、2021年秋スタートの新リーグの参加チーム、フォーマットを詰めていくことになる。

◆新リーグ参入要件・骨子

【1.運営機能】
・各参加団体は事業機能を持つこと。
・事業機能とは、チーム運営・収益事業すべての責任者となる事業責任者の設置、収支の透明化、主催興行(収益事業)体制の整備をいう。事業計画の策定をすること。
・対象となる参加団体はトップリーグ、トップチャレンジリーグの所属に限らず、新リーグは企業チーム以外にも門戸を開く。

【2.チーム名称】
・チーム名に地域名を取り入れること。
・企業名をチーム名に入れることについては任意とする。

【3.ホームエリア】
・2021年シーズンからホームエリアを決定すること。

【4.スタジアム】
・2021年シーズンにホームゲームを開催できるスタジアムを確保すること。
・ホームエリア内にある複数のスタジアムをホームスタジアムとすることを認める。
・1部リーグは、1試合当たり15000人の観客動員を目指す。
・リーグ目標である1試合当たり15000人の観客動員に鑑み、2023年シーズンまでに15000人収容のスタジアムを確保できるよう、日本ラグビー協会、リーグ運営法人、チーム3者で努力する。
・2021年、2022年シーズンにおいてホームエリア内での試合開催が困難である場合、国内の優先使用できるラグビー場など、別会場での開催を認める方向でリーグ運営法人と調整を行う。
・各参加団体がスタジアムを確保するために、リーグ運営法人・協会があらゆる側面で支援する。

【5.事業運営】
・チーム事務局、財務担当、競技・イベント運営担当、広報担当、営業・マーケティング担当者をそれぞれ設置すること。